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■0236「スカートの翼ひろげて」

 「スカートの翼ひろげて」(デビッド・リーランド監督)は、輝きを失わない。第2次世界大戦下のイギリスでは、男たちが農地を離れて戦場に駆り出されたため、さまざまな階層の女性たちが男性の代わりに農家で働くことになり「ランド・アーミー」と呼ばれた。偶然一緒になった3人の女性、ステラ、アグ、プルーは、農場の 一人息子ジョーに特別な感情を抱くようになる。苛酷の状況の下での人々の出会いと別れ。いくらでも観客を泣かせる感動的ドラマに仕立てることができるテーマだが、デビッド・リーランド監督は紋切り型のクライマックスを避けて、一人ひとりの感情のデリケートな変化を静かに描いていく。その姿勢を高く評価したい。
 聡明なステラ役のキャサリン・マコーマック、世間知らずなアグ役のレイチェル・ワイズ、奔放なプルー役のアンナ・フリエル。それぞれに個性的で魅力的。ジョーをめぐって互いにいがみ合うのではなく、分かち合うしなやかさが素敵だ。中でも婚約者とジョーへの愛に揺れたキャサリン・マコーマックの、激しい情念を押さえ込んだ寡黙な演技が印象的。もっとも慎重なはずの彼女が、もっとも大胆な選択を行ったのには驚いた。

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■0235「ブレイブハート」

 「ブレイブハート」(1995年、メル・ギブソン監督)は見ごたえあった。第68回アカデミー賞で、作品、監督、撮影、音楽(ドラマ部門)、メイクアップ、音響効果の6部門を受賞。13世紀末、スコットランドの独立と開放を目指して戦った実在の英雄ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた歴史スペクタクル大作。美しい自然、自由を求める人間の尊厳、力強いストーリー。久しぶりに感動した。豪速球だ。しかも端正につくられている。数千人のエキストラと200頭の馬による戦闘シーンは、とりわけ見事だった。

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■0234「ファザーレス」

 「ファザーレス」(茂野良弥 監督)は、日本映画学校ドキュメンタリーゼミによる卒業製作として、茂野良弥と村石雅也が企画、ニューヨーク大学国際学生映画祭をきっかけに海外映画祭から続々と招待を受け、1998年マンハイム・ハイデルベルグ国際映画祭ドキュメンタリー部門グランプリ&国際批評家連盟賞受賞などに輝いている。
 村石氏は、家族を捨てた実の父親と被差別部落出身の義理の父親に本音をぶつけ、対決する。母親にも心情を吐露する。ドキュメンタリーを製作するという動機によって。自分の切実な問題に向き合っていく「ゆきゆきて神軍」(原一男監督)とは、別の意味で記録映画の作成が現実に関与していくスリリングな展開だった。
 焦点は、義理の父親の歴史から浮かび上がる部落差別の問題だろう。差別をきっかけに小学1年から一人で生活してきたというすごい過去を持つ義父が、村石氏に衝撃を与える。傷の深さにたじろき、同じ傷を持つ者として急速に接近する。バイセクシャルの問題は、告白としての意味は重いが、あまり深められてない。母親の言葉によって「淋しさ」のせいにされたようで、納得いかなかった。甘過ぎる結末などストーリーには欠点もあり、撮影技術にも未熟さが目立つ。しかしそれを補って余りある人間と人間の真摯な出会いが描かれている。そのリアリティに感動する。

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