2008.06.19

■太宰治没後60年 桜桃忌に500人

 作家・太宰治(1909〜48)をしのぶ「桜桃忌」が6月19日、東京都三鷹市の禅林寺であった。2008年は同市の玉川上水に身を投げてから60年。例年の5〜6倍にあたる約500人が墓前で手を合わせた。

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2008.06.06

■作家・氷室冴子、死去

 作家の氷室冴子(ひむろ・さえこ<本名・碓井小恵子=うすい・さえこ>)が6日、肺がんのため死去した。51歳。葬儀は10日午前9時半、東京都新宿区早稲田町77の龍善寺。喪主は姉の木根利恵子(きね・りえこ)さん。
 岩見沢市出身。大学在学中の1977年、「さようならアルルカン」で小説ジュニア青春小説新人賞の佳作に入選してデビュー。平安時代が舞台の「なんて素敵にジャパネスク」シリーズが大ヒットし、80年代から90年代にかけて田中雅美さんらと集英社コバルト文庫で「コバルト四天王」と呼ばれ、少女小説を代表する一人として活躍した。他に「ざ・ちぇんじ!」「クララ白書」など。

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2008.05.02

■小林多喜二「蟹工船」が再脚光

 プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903~1933)の「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている。
 過酷な労働の現場を描く昭和初期の名作が、「ワーキングプア」が社会問題となる平成の若者を中心に読まれている。
 「蟹工船」は世界大恐慌のきっかけとなったニューヨーク株式市場の大暴落「暗黒の木曜日」が起きた1929年に発表された小説。オホーツク海でカニをとり、缶詰に加工する船を舞台に、非人間的な労働を強いられる人々の暗たんたる生活と闘争をリアルに描いている。

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2008.03.19

■SF小説の巨匠アーサー・C・クラーク、死去

 英国生まれのSF小説界の巨匠アーサー・C・クラーク氏が19日、スリランカの病院で死去した。90歳だった。関係者がAFP通信に明らかにした。

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2008.02.19

■作家アラン・ロブグリエ、死去

 フランスの前衛的な小説手法「ヌーボーロマン」の旗手として知られた作家アラン・ロブグリエが18日、心臓病のため入院していた仏北西部カーンの病院で死去した。85歳だった。 映画監督としても活動した。

 仏西部ブレスト出身。従来の小説の枠を打破し、ストーリーの一貫性に乏しかったり、心理描写を欠いていたりするヌーボーロマンの理論を確立した。サミュエル・ベケット、クロード・シモンらとともに50~60年代、実験的な小説を発表。代表作に「嫉妬(しっと)」「消しゴム」などがある。アラン・レネ監督「去年マリエンバートで」では脚本を手がけ、1961年のベネチア映画祭で金獅子賞を受けた。

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2008.02.16

■米推理作家のP・ホイットニー、死去

 AP通信によると、2月8日、米推理作家のフィリス・ホイットニーさんがバージニア州ネルソン郡の病院で死去した。104歳だった。死因は不明。
 61年にエドガー・アラン・ポー賞、90年にアガサ・クリスティを記念したアガサ賞を受賞するなど、75冊の推理小説などを発表した。1903年横浜で生まれ、15歳で米本土に戻るまでフィリピンや中国で暮らし、12歳から小説を書き始めた。

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2008.02.15

■作家・高野裕美子さん、50歳で死去

 作家の高野裕美子さん(たかの・ゆみこ<本名・長井裕美子=ながい・ゆみこ>作家)が10日、くも膜下出血のため50歳で死去した。葬儀は15日午後1時半、北海道函館市東川町12の12の本願寺函館別院。喪主は父高野洋蔵(たかの・ようぞう)さん。
 海外冒険小説の翻訳家を経て作家に。著書「マリン・スノー」「あの日の桜吹雪よりも」など。

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2008.01.16

■芥川賞に川上未映子さん、直木賞に桜庭一樹さん

 第138回(2007年度下半期)芥川賞、直木賞の選考会が、1月16日午後5時より東京・築地の料亭「新喜楽」で開催され、受賞者が決定した。芥川賞は川上未映子さんの「乳と卵」が、直木賞は桜庭一樹さんの「私の男」が受賞作に決定。贈呈式は2月22日に東京・丸の内の東京会館で行われる。

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2007.11.11

■米作家ノーマン・メイラー、死去

 「裸者と死者」などで知られる米作家ノーマン・メイラーが10日、腎不全のためニューヨーク市内の病院で死去した。84歳だった。
 太平洋戦争の従軍体験を基に25歳の時に執筆した最初の小説「裸者と死者」で名声を得た。同作品はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストの1位に輝いた。
 ピュリツァー賞を2度受賞、全米図書賞も受賞するなど、約60年間にわたり米文壇の重鎮だった。最後の著書となった「ザ・キャッスル・イン・ザ・フォレスト」は、数カ月前に出版された。

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2007.09.03

■乙女のカリスマ・嶽本野ばら容疑者、大麻所持で現行犯逮捕

 映画「下妻物語」(2004年)の原作者として知られる作家の嶽本(たけもと)野ばら(本名・嶽本稔明)容疑者(39)が、大麻取締法違反(所持)の現行犯で、警視庁新宿署に逮捕されていたことがわかった。
 同署によると、嶽本容疑者は今月2日午後5時10分ごろ、新宿区歌舞伎町2の路上で、同署員の職務質問を受けた際、ズボンの右ポケットに乾燥大麻0・22グラムを隠していたのが見つかった。「海外で大麻を覚えた。自分で吸うために持っていた」と供述しており、同署で入手先を追及している。
 嶽本容疑者は大阪芸大を中退後、雑貨店の店長などを経て、2000年に「ミシン」で小説家としてデビュー。「下妻物語」をはじめ、少女文化を描いた作品を次々に発表し、「乙女のカリスマ」として10代の少女を中心に人気を集めている。

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2007.08.27

■作家・西村寿行、死去

 幅広い分野の作品を執筆し、ベストセラー作家として活躍した西村寿行(にしむら・じゅこう<本名・としゆき>)さんが23日、肝不全のため死去した。76歳だった。
 1969年に動物小説「犬鷲」が、第35回オール読物新人賞佳作となりデビュー。初期の作品は、医療業界や公害問題などをテーマにした「安楽死」など社会派ミステリーが目立ったが、「君よ憤怒の河を渉(わた)れ」で冒険小説に新境地を開いた。激しい暴力シーンや性描写を織り交ぜた「黄金の犬」「化石の荒野」などベストセラーを連発。ハードロマンの旗手といわれた。映画、テレビドラマの原作となった作品も多い。

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2007.08.18

■太宰治「人間失格」、「デスノート」のライトを表紙に

 太宰治の「人間失格」の表紙を、漫画「DEATH NOTE(デスノート)」で知られる漫画家・小畑健のイラストにした集英社文庫の新装版が、6月末の発行以来、約1か月半で7万5000部と、古典的文学作品としては異例の売れ行きとなっている。
 「人間失格」は、太宰が自殺する1948年(昭和23年)に発表された自伝的小説。生きることの苦悩を見つめた小説には若い世代のファンが多く、52年初版の新潮文庫は602万5000部と夏目漱石「こころ」と並ぶ大ベストセラー。90年初版の集英社文庫でも40万部を超えている。
 従来の表紙は抽象画だったが、編集部は、「いかにも名作」という路線からの脱却を目指して小畑さんに表紙絵を依頼。新装版は、「デスノート」の主人公・月(ライト)を思わせる学生服姿の男の子が不敵な顔で座るデザインとなった。

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2007.07.21

■ハリポタ完結編が発売

 「ハリー・ポッター」シリーズの完結編「ハリー・ポッターと死の秘宝」(第7巻)が21日午前零時1分(日本時間同日午前8時1分)、世界中の書店で一斉に発売された。ロンドンやニューヨークの書店では魔法使いに化けた子供たちが列をつくり、完結編を買い求めた。シリーズで4億冊以上の売り上げが見込まれている。

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2007.06.21

■作家の小田実、末期がん

 市民運動で知られる作家の小田実(75歳)が、重い胃がんの治療で東京都内の病院に入院している。5月7日に入院。手術はせず化学療法を受けるという。3月にオランダ・ハーグで開かれたフィリピン情勢をめぐる「恒久民族民衆法廷」に参加する前から体調を崩し、4月にトルコ旅行から帰国して検査を受け病気がわかった。入院前に親しい知人約200人に手紙を送って病状を報告、「デモ行進に出ることも、集会でしゃべることももうありませんが、できるかぎり、書きつづけて行きたい」と執筆に専念している。
 枕元にはお見舞いにもらった寺社のお札がたくさん。「フランスの『ルルドの水』もある。現代科学の治療を受けているから古代から現代までの全人類の文明がここにきている。奇跡が起きても、どれが治してくれたのかわからない(笑い)。3000年前と今が、やはりマングローブの根のようにからみあっている。からみあった人間同士が戦争しないためにも、9条は必要なんだ」

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2007.05.18

■直木賞作家・藤原伊織、死去!

 「テロリストのパラソル」で知られる作家、藤原伊織(ふじわら・いおり<本名・利一=としかず>)が17日、食道がんのため死去した。59歳だった。
 電通に勤務するかたわら「ダックスフントのワープ」で85年にすばる文学賞を受賞。元全共闘の男を主人公にしたミステリー「テロリストのパラソル」で95年に江戸川乱歩賞と翌年に直木賞を受賞して大ヒット。団塊世代のハードボイルド作家として人気を得た。05年に小説誌「オール読物」のエッセーで食道がんであることを公表し、闘病しながら、執筆活動を続けていた。他の作品に「ひまわりの祝祭」「シリウスの道」など。

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2007.05.16

■J・K・ローリング、ハリー・ポッターの8巻執筆?

 7月に発売される「ハリー・ポッターと死の秘宝」(仮題)はシリーズ最終巻と言われているが、8巻目が執筆されるかもしれない。著者のJ・K・ローリングは以前から7巻目で終わりと言ってきたが、もう1冊書く可能性もあるようだ。「チャリティのために8巻目を書くかもしれないわ。魔法の世界の百科事典的なものになるかも」とローリングは言っている。

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2007.05.11

■直木賞作家・三好京三さん、死去

 作家で日本ペンクラブ会員の三好京三(みよし・きょうぞう、本名・佐々木久雄)さんが、11日午前5時16分、心筋梗塞(こうそく)のため岩手県奥州市の病院で死去した。76歳だった。通夜は14日午後6時から同市前沢区向田2の4のセレモールさかい、葬儀は15日午後2時から同市前沢区山下72の霊桃寺で行う。喪主は妻京子さん。自宅は同市前沢区新町裏48の1。
 同県の村立衣川小大森分校で14年間、ともに教師の妻京子さんと住み込みで教壇に立った間の子育てについて書いた小説「子育てごっこ」で77年、第76回直木賞を受賞。東北地方に根ざした作品が多い。主な著書に「分校日記」、歴史時代小説の「生きよ義経」、「遠野夢詩人」など。

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2007.05.07

■作家・池宮彰一郎さん死去

 映画やテレビの脚本から小説に転じ、「四十七人の刺客」などで知られる作家の池宮彰一郎(いけみや・しょういちろう、本名池上金男=いけがみ・かねお)さんが6日午後8時26分、肺がんのため東京都杉並区上高井戸2の10の18の自宅で死去した。83歳だった。東京都出身。
 戦後、「十三人の刺客」など時代・歴史ものを中心に映画の脚本で活躍。テレビにも進出し、「水戸黄門」や「必殺仕掛人」などを手掛けた。その後、69歳で小説を書き始め、第1作の「四十七人の刺客」は新田次郎賞を受賞。豊富な資料を駆使して従来の時代劇の定説を覆す作品を次々と発表した。その一方で、「遁(に)げろ家康」「島津奔(はし)る」の2作が、司馬遼太郎さんの作品との類似を指摘され、絶版・回収されたこともあった。

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2007.05.01

■芥川賞選考委員に小川、川上両氏

 日本文学振興会は、芥川賞選考委員に小川洋子氏と川上弘美氏、直木賞選考委員に浅田次郎氏がそれぞれ決まったと発表した。芥川賞選考委員は、高樹のぶ子、山田詠美両氏とともに9人中4人が女性作家となった。7月の第137回選考会から参加する。
 小川氏は1962年岡山県生まれ。「妊娠カレンダー」で芥川賞、「博士の愛した数式」で本屋大賞。川上氏は58年東京都生まれ。「蛇を踏む」で芥川賞、「センセイの鞄(かばん)」で谷崎潤一郎賞。浅田氏は51年東京都生まれ。「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞など。 

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2007.04.12

■米小説家カート・ボネガット氏、死去

 カート・ボネガット氏(米小説家)は、ニューヨーク・マンハッタンで11日死去した。84歳。死因は不明だが、数週間前に倒れ、頭部を負傷していた。1922年、米インディアナ州インディアナポリス生まれ。50年代にSF作家としてデビュー。代表作として「猫のゆりかご」「スローターハウス5」「タイタンの妖女」などが邦訳されている。

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2007.03.22

■作家・城山三郎氏、死去

 経済小説や伝記、戦争小説など幅広く活躍した作家の城山三郎氏(しろやま・さぶろう)氏が22日午前6時50分、間質性肺炎のため神奈川県茅ケ崎市の病院で死去した。79歳だった。名古屋市出身。自宅住所は非公表。葬儀は親族のみで行い、後日、お別れ会を開く。喪主は長男有一(ゆういち)氏。 実在のモデルを主人公にしたノンフィクション風の小説を数多く執筆。1959年「総会屋錦城」で直木賞、「落日燃ゆ」で吉川英治文学賞などを受賞。

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2007.02.18

■音声付き「チパシリ夢十夜」1.幻氷

「yume10_1.mp3」をダウンロード

 汽車が駅に着くと、月は街を照らし始めた。駅の扉を開けると、乾いた寒気が群がり、熱い記憶を奪っていく。駅前の見慣れぬ古本屋で足を止めた。私は、古本屋の空気が好きで、見つけるとつい足を向けてしまう。氷紋が入り口のガラスを覆っている。車のライトに照らされ、氷紋は雲母のように舞う。

 開けようとした戸は、半分まで開いたまま動かない。すき間から身体をすべらせ、静かに閉めたつもりだったが、戸は大きな音を立てた。空気が緊張し、奥に座っていた女性が、顔を上げた。白いセーターがまぶしい。並べてある本は、どれも汚れ、歪んでいたが、書名を読むうちに身体が熱くなった。今まで探していた本が並んでいた。一人の人が集めたものに違いない。有機的な宇宙が息づいている。どれもごく少部数しか印刷されず、今では散逸している本だ。

 「この本はいくらですか。今持ち合わせがないので、予約できないでしょうか」。カタリと音がして、女性が立ち上がった。「その本はお売りできません」「是非とも買いたいのです」。彼女は、じっとこちらを見つめた後、しばらくして「どうぞ」と奥の椅子を示した。私はためらいながら、その椅子に座った。薄いベニヤの床が少し沈んだ。

 彼女は、初対面の私に古本屋開店までの経過を話してくれた。友人が急死し蔵書が残ったこと。親が本を持て余し彼女が譲り受けたこと。「3日前なんです、開店したのは。あなたがほしいと言った本は、彼が特に大切にしていた本でした」。彼女は視線を外に向けた。私は彼女の手首の傷を見つけ、言葉を飲み込んだ。

 突然彼女は立ち上がり、薄暗い部屋の奥に歩き始めた。急に足元から冷気が伝わってきた。さっきまで柔らかかった床は、凍っている。私も彼女を追って奥に進んだ。彼女はどこまでも歩き続ける。何分経っただろう。私は流氷の上を歩いていた。流氷原はどこまでも広がっている。私は悪寒に襲われ、氷の上に座り込んだ。忘れていた疲れが全身から湧き出した。歯ががちがちと鳴る。悪寒が治まると、今度は睡魔が全身を包んだ。耐えきれずに横になると、氷は柔らかく暖かかった。

 「あなたも眠ってしまう」。彼女の声が響いた。眼を開けると、流氷原に幻氷が次々と重なり、天上まで続いている。彼女は幻氷の上から悲しげに見つめていた。白いセーターが、氷紋に変わっている。眼が合うと、彼女の顔は氷が張ったように無表情になった。そして、身をひるがえすと階段を一段ずつ上り始めた。幻氷はかすかに揺れながら彼女の歩調に合わせて七色に変化した。

 閃光が私を包んだ。痛んだ眼を開けた時には、青白い流氷が、牛のように軋んでいた。

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2007.02.08

■『ハリポタ』原作の最終章、ついに完成

 『ハリー・ポッター』シリーズの原作者、J・K・ローリングさんが、シリーズ7作目で最終章となる「ハリー・ポッター・アンド・デスリー・ホロウズ」(原題)の執筆を、1月11日に終了したと発表した。発売日は7月21日となるよう。ローリングさんは、自宅のあるスコットランド、エディンバラ市のバルモラル・ホテルで執筆を終えたそう。通常、このホテルでは執筆活動のために部屋を使われることを好まないようだが、今回は特別のようで、ホテル側は「彼女が制作に当ホテルを選んでくれて、光栄に思う」とコメントしている。

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【チパシリ夢十夜】4.芝桜

 サロマベツ湖の漂砂のように、私は歩いた。芝桜の甘い香りがただよい始める。芝桜が満開。香りにむせ返りそうだ。一面の芝桜。芝桜以外の植物は自由に生きていくことはできない。軽やかな羽虫までが、香りに包まれて動けない。

 あまりの匂いに負けて、私は桜の上に座り込んだ。花びらに触れた手が、見る間に桜色に変わる。足腰もすっかり花びらに染め上げられた。桜の海に胸まで沈んでいる。下半身は、水に浮いているように心地よい。桜色がゆっくりと首を上がってくる。くすぐったい。ピンクの波は、一気に髪まで染めた。私は魂までも染められて、うっとりした。

 桜の園には、たくさんの人が横たわっている。しかし桜に溶け込み、見分けがつき にくい。一番近くにいる人が、かすかにうめいた。中年の男性らしい。広い額に濃い口髭、丸く小さな眼鏡をかけている。親指を内側にした大きな手で、口を覆っている。親指をしゃぶっているのかもしれない。眼鏡の奥の眼は暗く沈んでいるが、耳は明るい何かを待っている。言葉をかけようとしたが、声がでない。芝桜が内臓に染み通り、感覚をマヒさせているのだろう。

 神経や血管は皮膚を破り、芝桜の根と親しげに絡み合う。多彩な金属を含んだ芝桜の体液が、身体をかけめぐる。金属はなめらかな声で歴史を話す。桜の根が、私の心臓に達した。根は優しく毛細管と重なり合う。

 鉱物も植物も動物も、融け合って、ぺっとりとした健やかな物質になる。うれしさに桜色の心が震えた。意識が薄れていく。身体の中で、別の鼓動が始まる。突然、砂をつぶすようなざらついた音がする。

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【チパシリ夢十夜】3.春霧

 陽が傾くと、霧が濃さを増す。山も川も街も、すべてが霧に包まれていく。苦い霧だが、芯にかすかな甘さを含んでいる。私は、春の霧に溶け始める。

 霧の奥に、釈迦が横たわっている。鹿や熊や狐が集まってくる。私は釈迦のそばに近づいた。動物たちは、悲しい眼をしている。やがて釈迦は、微笑みながら息をひきとった。集まった動物たちは、内臓と肉を食べ始めた。どの動物も、おだやかな表情をしている。食べる音だけが響く。血の匂いはしない。

 釈迦の周りをゆっくりと霧が流れていく。私も近づいて肉を食べた。驚くほど柔らかい。まったりとした味が舌に残る。動物たちになめられた釈迦は、きれいな骨になった。霧が深くなってきた。醗酵乳の匂いが立ちこめる。釈迦の骨は、粒子になって浮遊し始める。私は、骨が霧に溶けるまで、じっと待ち続けた。恐ろしく長い年月が流れた。

 霧の渦が私を厚く包み込もうとしている。私は後ずさった。足元の砂が、キュキュと鳴った。自分の内臓が鳴っているようだ。キュッ、キュッ、キュッ。キュッ、キュッ、キュッ。

 「鳴っている」。いつのまにか私の後ろに、桜の細長を着た少女がうずくまっていた。彼女の周囲の砂は、骨を砕いたように白い。ただ足元の砂だけが着物に染まったのか桜色に見える。少女は、砂を握り締めようとしていた。そのたびに、砂は キュキュと鳴った。

 彼女は、幾度も同じ動作を繰り返している。私は彼女の細い手に触れた。その瞬間、私の身は数億の粒子になって舞い上がった。醗酵乳の匂いがした。

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2007.02.07

【チパシリ夢十夜】2.虚星

 我に返ると、丸い氷柱に腰掛けていた。懐かしい記憶を反すうしていたようだが、思い出せない。かすかに悪寒が残っている。夜になっていた。雪は膝近くまで積もっている。雪明りの中に動物の死骸が浮かび上がる。鹿と熊。雪に半分埋った死骸は、腐敗した様子もなく、夜光貝のように安らかに光っている。

 雪はいつまで降り続けるのだろう。肌に触れても溶けない雪片に気付き、ハッとした。白い胞子だ。シリエトク岳の雪は、いつの間にか菌類の胞子に変わっている。私は山頂に向かった。堆積した胞子は次第に深くなる。踏みしめた足跡は、波に洗われたように消える。名付けようのない不安とともに、足のしびれが増す。もう少し。山頂は近い。前に進むことだけを考えた。一歩、また一歩。もう、足の感覚はない。幻肢痛のような、虚ろな痛みがある。

 山頂から声がする。必死に前に進んだ。「早く、ここへ」。私は声に励まされて、やっと山頂に着いた。山頂の氷鏡にはまばゆい星々が写っている。星を見上げる私の横に女性が立った。

 何処かで会ったことがあるのだろう。氷紋のセーターを見ていると、懐かしい気持ちになる。彼女は空を指差してつぶやいた。「貴方の友だちが、還ってしまう」。私は彼女の指の先に眼を移した。

 ハリーだ。懐かしい。「ハリー!」。私は大声で叫んだ。彼女も「ハレー」と呼びかけた。私はポケットから六角形の鏡を取り出し、空に向けた。鏡の底から十二匹の蛍が飛び立ち、昇っていく。

 ハリーは昔と変わらない。漆黒の身を、青いマントで包み込んでいる。しかし、とてもやせて、苦しそうだ。私は泣いた。涙は深い泉から止めどもなく湧き上がってくる。彼女も泣いている。

 二人の涙が枯れた時、空が白み始めた。山々が虚ろに光り出す。金星が、疲れた顔をこちらに向けた。

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2007.02.06

【チパシリ夢十夜】1.幻氷

「chipa1120.mp4」をダウンロード

 汽車が駅に着くと、月は街を照らし始めた。駅の扉を開けると、乾いた寒気が群がり、熱い記憶を奪っていく。駅前の見慣れぬ古本屋で足を止めた。私は、古本屋の空気が好きで、見つけるとつい足を向けてしまう。氷紋が入り口のガラスを覆っている。車のライトに照らされ、氷紋は雲母のように舞う。

 開けようとした戸は、半分まで開いたまま動かない。すき間から身体をすべらせ、静かに閉めたつもりだったが、戸は大きな音を立てた。空気が緊張し、奥に座っていた女性が、顔を上げた。白いセーターがまぶしい。並べてある本は、どれも汚れ、歪んでいたが、書名を読むうちに身体が熱くなった。今まで探していた本が並んでいた。一人の人が集めたものに違いない。有機的な宇宙が息づいている。どれもごく少部数しか印刷されず、今では散逸している本だ。

 「この本はいくらですか。今持ち合わせがないので、予約できないでしょうか」。カタリと音がして、女性が立ち上がった。「その本はお売りできません」「是非とも買いたいのです」。彼女は、じっとこちらを見つめた後、しばらくして「どうぞ」と奥の椅子を示した。私はためらいながら、その椅子に座った。薄いベニヤの床が少し沈んだ。

 彼女は、初対面の私に古本屋開店までの経過を話してくれた。友人が急死し蔵書が残ったこと。親が本を持て余し彼女が譲り受けたこと。「3日前なんです、開店したのは。あなたがほしいと言った本は、彼が特に大切にしていた本でした」。彼女は視線を外に向けた。「でも、売るつもりだったのでしょう」。私は彼女の手首の傷を見つけ、言葉を飲み込んだ。

 「奥へ」。突然彼女は立ち上がり、薄暗い部屋の奥に歩き始めた。急に足元から冷気が伝わってきた。さっきまで柔らかかった床は、凍っている。私も彼女を追って奥に進んだ。彼女はどこまでも歩き続ける。何分経っただろう。私は流氷の上を歩いていた。流氷原はどこまでも広がっている。私は悪寒に襲われ、氷の上に座り込んだ。忘れていた疲れが全身から湧き出した。歯ががちがちと鳴る。悪寒が治まると、今度は睡魔が全身を包んだ。耐えきれずに横になると、氷は柔らかく暖かかった。

 「あなたも眠ってしまう」。彼女の声が響いた。眼を開けると、流氷原に幻氷が次々と重なり、天上まで続いている。彼女は幻氷の上から悲しげに見つめていた。白いセーターが、氷紋に変わっている。眼が合うと、彼女の顔は氷が張ったように無表情になった。そして、身をひるがえすと階段を一段ずつ上り始めた。幻氷はかすかに揺れながら彼女の歩調に合わせて七色に変化した。

 閃光が私を包んだ。痛んだ眼を開けた時には、青白い流氷が、牛のように軋んでいた。

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2007.02.02

■「ハリー・ポッター」完結編、7月21日発売

 「ハリー・ポッター」シリーズの出版元である英ブルームズベリー社は1日、同シリーズ完結編・第7作「ハリー・ポッターとデスリー・ハローズ(『死の聖人』の意)」が、7月21日に発売されると発表した。
 著者のJ・K・ローリングは昨年、完結編で主要登場人物のうち2人が死亡すると予告しており、主人公のハリーの運命にファンの関心が集まっている。今年は、同シリーズ第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」が出版されてから10周年にあたる。

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2007.01.31

■作家シドニー・シェルダン氏、死去

 「ゲームの達人」、「真夜中は別の顔」などのサスペンス小説が日本でもベストセラーになった米国の作家、シドニー・シェルダン氏が30日、肺炎による合併症のため、カリフォルニア州南部の病院で死去した。89歳だった。
 1917年シカゴ生まれ。第二次大戦に従軍し、戦後はニューヨークのブロードウェーで演劇の脚本家として頭角を現した。ハリウッド映画やテレビの世界でも活躍し、アカデミー賞脚本賞も受賞。50歳を過ぎて小説家に転身し、わかりやすい文体とスリル満点の展開で親しまれた。

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2007.01.15

■爽快な濃縮猟奇「独白するユニバーサル横メルカトル」

 「このミステリーがすごい!」2006年の国内編第1位。平山夢明著「独白するユニバーサル横メルカトル」を、ゆっくりと味わった。猟奇のテーマパークのような濃厚な短編8作品だが、読後感が爽快なのはどういう訳だろう。救いようのない痛々しいストーリーテリングの、見事な技に感心したからだろうか。
 「独白するユニバーサル横メルカトル」のアイデアが抜きん出ているが、「Ω(オメガ)の聖餐」「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」の居心地の悪い雰囲気が忘れられない。すべての作品が、居心地悪いのだが。

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2006.12.22

■ハリポタ完結編、題名に「死の聖人」

 冒険小説「ハリー・ポッター」シリーズの完結編・第7作のタイトルが「ハリー・ポッターとデスリー・ハローズ(『死の聖人』の意)」となることが21日、明らかになった。
  著者のJ・K・ローリングさんは完結編で、登場人物2人が死亡する可能性を示唆しており、主人公のハリーがそれに含まれるかに関心が集まっている。
 書名に「死」の意味が含まれたことで、一層ファンの注目を集めそうだ。現在執筆中のローリングさんは、ホームページ上で、「私は現在、十数年かそれ以上前に決めていた場面を書いている」と語っている。

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2006.12.04

■12月9日は漱石忌

小説家・夏目漱石の1916年の忌日。

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2006.11.26

■作家・乙一、26日に押井守監督の娘と結婚式

 作家生活10周年を迎えた乙一(28)は、26日に結婚式を挙げる。関係者によると、日本アニメ界の巨匠・押井守監督(55)の愛娘(まなむすめ)でライターのAさんと挙式するという。

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2006.11.20

■11月25日は憂国忌

 小説家・三島由紀夫の忌日。1970年、三島由紀夫が、自ら主催する「楯の会」のメンバー4人と共に東京・市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部で総監を人質にとって本館前に自衛官1000人を集合させ、自衛隊の決起を訴える演説を10分間行った。その後総監室で楯の会会員の森田必勝とともに割腹自殺した。
 監督・主演した映画『憂国』に因み、毎年「憂国忌」が営まれている。

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2006.11.18

■「チパシリ夢十夜」、10年ぶりにリライトへ

★「chipasiri10dreams.mp4」をダウンロード
Chipa10dreams

 網走に住んでいたときに着想し、ホームページ開設時に、書き上げた掌編小説「チパシリ夢十夜」を公開して、10年が経過した。夏目漱石の「夢十夜」には、遠く及ばない、つたない作品だが、これまでに十数人の方から、あたたかなメールをいただいた。4季の変化と歴史を織り込んだオホーツク・ファンタジー。この辺で、一度リライトしてみようと思う。また、ライフワークである映画化に向けて、予告編の製作も始めたい。
★「チパシリ夢十夜」

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2006.11.14

■米SF作家ジャック・ウィリアムスン氏、98歳 で死去

 AP通信などによると、米SF作家ジャック・ウィリアムスン氏が10日、米ニューメキシコ州の自宅で死去した。98歳。死因は明らかでない。
 1908年、米アリゾナ州生まれ。20歳で「メタル・マン」を著して以来、核ロケットによる月探査や反物質など斬新なテーマで活躍、「米SFの父」と呼ばれた。日本でも翻訳出版された「宇宙軍団」「ヒューマノイド」などで知られる。
 晩年も執筆を続け、最近「ザ・ストーンヘンジ・ゲート」が出版された。

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2006.11.02

■「ソフィーの選択」米作家・スタイロン氏死去

 米メディアによると、米作家・スタイロン氏が1日、米マサチューセッツ州の病院で肺炎のため死去した。81歳。
 1925年、バージニア州生まれ。米南部の家族の崩壊を描いた「闇の中に横たわりて」(51年)で注目された。黒人奴隷の反乱を題材にした「ナット・ターナーの告白」(67年)でピュリツァー賞を受賞。ナチスのアウシュビッツ収容所の生き残りである女性の悲劇を描いた「ソフィーの選択」(79年)が世界的ベストセラーになり、メリル・ストリープ主演で映画化された。

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2006.10.26

■作家の小島信夫、死去

 「抱擁家族」などの小説で知られた作家の小島信夫(こじま・のぶお)さんが26日午前4時前、肺炎のため東京都内の病院で死去した。91歳だった。葬儀は近親者のみで行い、後日、お別れの会を開く。喪主は長女井筒かの子さん。自宅は東京都国分寺市光町1の6の11。

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2006.09.11