2010.01.24

■「Dr.パルナサスの鏡」テリー・ギリアム監督の壮大な見世物小屋

Parnassus
 「Dr.パルナサスの鏡」は、テリー・ギリアム監督の壮大な見世物小屋。そのいかがわしさを残した幻想の世界に、わくわくした。
 ヒース・レジャーの遺作となってしまったが、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウとの奇跡の共演が実現した。撮影中にトニーを演じるヒース・レジャーが急逝し、一時完成が危ぶまれたが、彼と親交のあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が、それぞれ別世界に移動したトニーを演じることが決まり、撮影が再開された。ヒース・レジャーの出演しているシーンはそのまま使用している。3人は、出演料全額をヒースの遺児である娘マチルダに寄贈した。
 男優たちの活躍が目立つ中で、パルナサスの娘役リリー・コールの存在も忘れてはいけない。美しいドール顔は、ファンタジーの世界にぴったり。ただ奇麗なだけでなく、かすかな毒の香りがする。
 全体に、ギリアム監督が描きたかっためくるめく世界を見せるために、ストーリーが仕立てられた感じで、この点では「アバター」と似ている。しかし、独特のキッチュな感触は、ギリアム監督の世界だ。

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2010.01.17

■「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」マイケル・ムーア監督の限界

Capitalism20100117
 映画は、住宅ローンが払えなくなって家を強制退去させられる人々を映し出す。そして、アメリカの歪んだ社会の実態が次々に暴露される。有名な大企業が従業員に無断で生命保険をかけ、受取人になっている、乗客の安全を預かっている飛行機パイロットの賃金が極端に低くバイトをしないと生活できない、という衝撃の事実が明らかになる。
 マイケル・ムーア監督は、資本主義そのものを批判し、アメリカ建国の精神やキリスト教の教え、そして民主主義を対置する。この辺の飛躍は、ちょっと素朴すぎ、乱暴すぎると思う。アメリカの観客に分かりやすく、説明しようとしているのだろうが、かえって説得力を欠いている。
 市民に金を返せと袋を持ってウォール街に押し掛けるマイケル・ムーアのパフォーマンスも、どこか白々しい。さまざまな社会問題をユーモアを交えながら分かりやすく解き明かし批判するマイケル・ムーアの映画は、その分かりやすさ故に、娯楽作品として消費されているのではないか。だとしたら、社会を変えていく力を、失わせているのかもしれない。マイケル・ムーアが「行動を」と、呼びかけているとしても。

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■映画「ロボゲイシャ」血は出ないが涙は出る

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 血みどろスプラッター 「片腕マシンガール」の井口昇監督新作。配給は角川映画。制作サイドは井口監督に「日本でも海外でもウケやすい映画を。ただし一般館で上映したいので、あまり血は出さないで」と注文したらしい。そのため、激しいバトルでも血は出ない。ビルが壊れるシーンで血しぶきが上がったのは、監督のささやかな抵抗だろう。
 今回は 「片腕マシンガール」と違い、奇抜な芸者ロボットが登場して最初からあっと驚かせる。影野製鉄に拉致され、殺人芸者マシーンに改造される姉妹の物語だが、拉致された家族を取り戻そうとする拉致被害者の会の活動なども盛り込んでいる。姉妹の複雑な愛憎劇、拉致被害者の会の切実さなど、なかなか泣かせる場面もある。
 次々と奇抜なアイデアを披露して飽きさせないが、 「片腕マシンガール」の衝撃には及ばない。井口監督の作品は、自由な表現が持ち味。規制など気にせず、ゆうばり国際映画祭などで楽しむ世界だ。井口監督の角川映画。ちょっと、涙が出た。

監督・脚本=井口昇
特殊造形監督=西村喜廣
主題歌=ART-SCHOOL『LOST CONTROL』(アルバム『14SOULS』収録)
VFX監督=鹿角剛司
撮影=長野泰隆
配給=角川映画

木口亜矢=春日ヨシエ
長谷部瞳=春日キクエ
斎藤工=影野ヒカル
志垣太郎=影野拳山
生田悦子=キヌ
松尾スズキ=豪徳寺鉄馬
竹中直人=金井老人
くまきりあさ美
中原翔子
杉浦亜紗美
Robogeisya2010

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2010.01.16

■「カティンの森」両親に捧げた渾身の作品

Katyn2010
 アンジェイ・ワイダ監督が、両親に捧げた渾身の作品。1940年春、カティンの森でソビエトの捕虜となっていたポーランド将校15000人が、ソビエト軍に虐殺された。ソビエトはドイツの仕業と宣伝。ソビエトの衛星国となったポーランドでは、長く真実を語ることができなかった。ワイダ監督は1950年代に事件の真相を知ったが、当時は映画化は実現しなかった。
しかし、50年の月日が流れ、ついに作品を完成させることができた。
 どの場面も、ゆるぎない緊張感がある。監督の並々ならぬ思いが、感じられる。さまざまな人たちの生き様を描きながら、物語はドキュメンタリーのように、虐殺の場面にたどり着く。そして、惨殺される将校一人一人の姿を正面から映し出す。遺体に土がかぶせられ、闇に葬られようとする瞬間まで。いったんドイツがポーランドを支配し、ソビエト批判のために明らかにされたカティンの森虐殺事件は、大国に翻弄され続けたポーランドの歴史を象徴していた。戦争、ソビエト支配。そして冷戦の終わり。いま、この作品を見ることの意味を、あらためて噛み締めた。そして、映画の持つ力についても。

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■「アバター」映像は素晴らしいが、ストーリーは今ひとつ

Avatar2010
 3D劇場映画として、初めて「アバター」を観た。ジェームズ・キャメロン監督の12年ぶりの新作。確かに、あの立体感、目の前に火の粉などが迫ってくる感覚は新鮮なものだった。しかし、それが、映画の世界にのめり込む助けになったかと言えば、そうではなかった。初めての体験で、驚きの方が勝ったからかもしれないが。3Dだぞ、という自己主張が強すぎて、かえって集中できなかった。もっと、自然に作品の世界に導く表現にすべきだろう。否定はしないが、映画をより楽しむために3D化が絶対に必要かといえば、それは違うと思う。ただ、3D映画は、まだまだ過渡期。映像に鮮やかな色彩があり、劇場全体がスクリーン化すれば、また違った次元の体験ができるだろう。現時点で映画の3D化の是非を判断するのではなく、映像表現の新しい可能性が始まったという観点で評価したいと思う。
 さて、肝心の作品の出来は、映像は素晴らしいが、ストーリーは今ひとつだ。まったくCGだと感じられない水準の映像は、文句の付けようがない。これまでで最高のリアルなCG映像だろう。しかし、ストーリーに深みはない。惑星パンドラの先住民ナヴィは、ネイティブ・アメリカンの比喩だと、すぐに誰もが気がつくだろう。あのケビン・コスナー製作・監督・主演の「ダンス・ウイズ・ウルブス」に似ている。ネイティブ・アメリカン・スー族の側から白人の醜さを描くことに成功した記念碑的な作品だ。しかしながら、「ダンス・ウイズ・ウルブス」も、異質な他者としてのスー族を描く点では物足りない。「アバター」も、ナヴィが英語を話すことで、コミュニケーションのための壁は、最初から低くなっている。重層的な人間ドラマを盛り込んだ「タイタニック」に比べると、人間ドラマの点で「アバター」はかなり見劣りする。

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2009.12.31

■俵屋年彦 2009年・映画独断ベスト10

私が、2009年に劇場で観た作品の中から選びました。ご了承ください。

【洋画】
★1位「パイレーツ・ロック」
 私が、この作品を選ばなくて、誰が選ぶのかという気持ち。
リチャード・カーティス監督・脚本作品。イギリスに民放ラジオが存在していなかった1966年。ラジオでは、ポピュラーミュージックの放送時間が制限されていた。そのため、領海外に停泊した船から、合法的にロックを24時間流し続ける「海賊ラジオ局」が存在し、熱狂的な支持を集めていた。その船で暮らす魅力的なDJらを描いていく。政府は、「国の風紀を乱す」ラジオ局をなんとか取り締まろうとする。実話をもとにした、痛快な作品。楽しくて反骨精神に満ちている。まさに、ロックンロールでクールな群像劇。軽妙な船長役のビル・ナイはじめ、フィリップ・シーモア・ホフマンら、「やんちゃな中年DJ」たちが、最高にかっこいい。

★2位「セントアンナの奇跡」
 白人の戦争に駆り出された黒人兵士たちの姿を描いているだけではない。セントアンナの大虐殺で戦争の悲惨さを表現しているだけではない。イタリアの民間人をと黒人兵士たちの交流をきめ細やかに描いていく。登場した主だった人たちが、ほとんど死んでしまうが、その交流は時間を超えて生き続ける。ラストシーンのなんと美しいことか。
 スパイク・リー監督初の戦争映画だが、リー監督にしか撮れない戦争映画でもある。善悪にとらわれず、さまざまな立場の人たちを、多面的に描いているのも特徴。差別を乗り越えた多面性の共存を尊重するスパイク・リー監督の奇跡的な傑作だ。

★3位「スラムドッグ$ミリオネア」
 なんという映画的な幸福感。立ち上がって、拍手したくなった。スラム街で育った少年が「クイズ$ミリオネア」に出演し見事に賞金を獲得する。筋書きだけをみると、いかにもハリウッド的なサクセスストーリーだが、カオス状態のインド・ムンバイで製作されたイギリス映画だ。2009年アメリカ・アカデミー賞で監督賞、作品賞を受賞し、21年ぶりにハリウッド製作以外の受賞となった。しかも、低予算で当初は劇場公開さえ危ぶまれた作品が、脚光を浴びた。まさに、絵に描いたようなサクセスストーリー。不況のハリウッド資本が活力のあるインドを持ち上げたという評価もあるが、映画の圧倒的な魅力を否定することは出来ない。ダニー・ボイル監督は、インドの過酷な現実をリアルに描きつつ、ボリウッド(インド映画)の高揚感を生かしながら、観終わると幸せに包まれる娯楽作にまとめあげた。

★4位「母なる証明」
 ポン・ジュノ監督の新作。女子高生殺人事件が起こり、事件の容疑者となった息子と、息子の無実を信じて真犯人を探す母の姿を追ったサスペンス。母親役キム・ヘジャ、息子役ウォンビンの熱演だけでなく、練り込まれたストーリーと鋭利な映像が、ずしりとした手応えを与えてくれる。監督の映画的な悪意と映画の快楽が詰まった作品だ。

★5位「チェンジリング」
 クリント・イーストウッド監督、アンジェリーナ・ジョリー主演。クリント・イーストウッド監督では、おそらく「グラントリノ」の方が、高い評価を得ているかもしれないが、私はこちらを選ぶ。
 1920年代のロサンゼルスで実際に起きた事件を映画化したものだが、そのあまりにも映画的な展開に驚かされる。本当に実話なのかと疑ってしまうほどだ。この作品がすごいのは、単に警察の腐敗を浮き彫りにするというだけではなく、事件の深々とした謎へと連れて行く点だ。圧倒的な手応えが残る。

★次点「幸せはシャンソニア劇場から」フランス映画の至福
   「コーラス」の製作者ジャック・ペランとクリストフ・バラティエ監督が再タッグを組んだ意欲作。1930年代の世界恐慌や世界大戦という歴史を巧みに生かしながら、さまざまな立場の人々を生き生きと描いている。音楽もすばらしい。懐かしい雰囲気を持ったフランス映画。「幸せはシャンソニア劇場から」は、映画らしい映画の面白さが詰まった作品だ。私は、新しい表現を模索する実験的な作品も好きだが、こういった往年の名作の味わいを持った作品に出会うと、別の幸せを感じる。といっても、古くさい作品ではない。第2次世界大戦前が舞台だが、失業者と引きこもりが活躍する現代的な構図を持った作品だ。

★特別賞「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」に感謝!!
  このドキュメンタリー作品は、別格。マイケル・ジャクソンのスリリングなステージとあたたかな人柄を示す映像に感謝。2009年6月に急死したマイケル・ジャクソンが、死の数日前まで行われていたコンサート・リハーサルの様子を記録したドキュメンタリー。ことしは、 ニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーのビルの間に設置した細い綱の上をゲリラ的に渡った「マン・オン・ワイヤー」など、優れたドキュメンタリー作品に多く出会えた。構想30年、ジェームズ・マーシュ監督の情熱が生み出した傑作だ。


【邦画】
 ※ことしは、あまり邦画を観ることができなかった。あくまでも、私が劇場で見た作品のベスト。

★1位「サマーウォーズ」
私は、アニメは、1作品だけにしぼると決めていましたが、ことしは難しかった。傑作アニメが、たくさん、公開された。
★「サマーウォーズ」
 田舎の大家族・親戚縁者が「仮想世界OZ」の危機に対して結束して闘う。そして、インターネットでつながった世界中の人たちとも力を合わせて世界を救う。美しい自然の季節感を背景に、一人一人の個性を際立たせながら、群像ドラマをきめ細やかに描き、リアルと仮想世界の人たちが協力して危機を乗り越える物語。手に汗握る闘いの後の、爽快感あふれるラストシーンも見事だった。細田守監督の「サマーウォーズ」は、多くの人に愛され続けることだろう。

以下も捨てがたいアニメ。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」
 エヴァ・ストーリーが、ここまで破壊されるとは。「序」からは、想像もつかなかった。今回の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、ストーリーがTVとは大幅に変わっている。戦闘シーンの迫力も、半端じゃない。使徒の動きも独創的。エヴァが使徒を食うのは見慣れていたが、エヴァが使徒に食われるシーンは衝撃的だった。そして、全体的に熱量が高い。シンジのアスカや綾波レイへの熱い思いが、ほとばしり、奇跡を起こす。私が「天元突破グレンラガン」のファンだからというだけでなく、エヴァにグレンラガンが乗り移ったのでは、と感じた。

劇場版「天元突破グレンラガン」螺巌篇
 紅蓮編程度の盛り上がりを期待してはいたが、構成自体を手直しし、さらに素晴らしい盛り上がりを見せてくれた。スタッフの愛情が、びしびしと伝わってきた。仲間で力を合わせて勝ち抜くというコンセプトが生かされ、ハイテンションに次ぐハイテンション。最初と最後をニアの日記や手紙で包み込むことで、穏やかに幕を下ろす。

「劇場版 空の境界/第七章 殺人考察(後)」
 原作の小説通り、全7章を7部構成で順次劇場公開するというスタイルを取った「劇場版 空の境界」。2年にわたり高いクオリティが注目され、ついに「第七章 殺人考察(後)」で完結した。7章合計の上映時間は8時間半。アニメ史の金字塔と言えるだろう。

★2位「K-20 怪人二十面相・伝」痛快なアクション大作
 江戸川乱歩の怪人二十面相をテーマにした北村想(きたむら・そう)のちょっと屈折した小説の実写化。ただし、設定はかなり変えられている。第2次世界大戦が「回避」され、戦前の制度がそのまま残った1949年の東京が舞台。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のスタッフが、中心となって制作に携わり、見事なCGで架空の都市風景をみせてくれる。
 冒頭の独創的な建築物に満ちた俯瞰シーン、ハイセンスなオープニングタイトルのアニメを見て、ハリウッド作品を超える予感がした。その予想は的中した。アクション中心でストーリーがおざなりのハリウッド作品と違い、物語がしっかりしている。どんでん返しにつぐ、どんでん返し。手に汗握る展開。観終わって、嬉しい気分にさせる痛快なアクション大作だ。

★3位「少年メリケンサック」映画自体がパンクだ
 宮藤官九郎(くどう・かんくろう)監督が、「真夜中の弥次さん喜多さん」以来、4年ぶりに完成させた第2作。2作目にして、早くも映画の文法を壊しにかかっている。突っ込みどころ満載のお笑いパンク映画を生み出した。映画自体が、デタラメでへたくそなのが、いかにもパンクだ。
 しかし、面白い。むさ苦しいおっさんたちと、可愛い宮崎あおいの対比がいい。宮崎あおいは、田口トモロヲのうまさに負けないおバカぶりを炸裂させていた。ただものではない。
 「ニューヨークマラソン」だと思っていた歌詞が、実はとんでもない歌詞であったという「空耳アワー」的なオチも、ばかばかしくていい。

★4位「BALLAD 名もなき恋のうた」アッパレ!アニメ実写化の意気込み
 山崎貴(やまざき・たかし)監督が、アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」を原案に、実写化した。野原しんのすけは登場しないが、ストーリーはかなり忠実に再現している携帯電話などの現代機器を巧みにいかしていた点は、評価できる。エンドロールも、とても良くできているのでお見逃しなく。こういう悲しくて楽しいエンドロールをつくれる点でも、山崎監督はすごい。
 この作品の公開後、「クレヨンしんちゃん」作者の臼井儀人(うすい・よしと)氏の転落事故死が報じられた。作者の死で「クレヨンしんちゃん」が注目されたことは悲しい。

★5位「なくもんか」
 宮藤官九郎(くどう かんくろう)の脚本。水田伸生(みずた のぶお)監督作品。テンポよく、小ネタを繰り出して飽きさせない。 東京下町。ハムカツで人気の「デリカの山ちゃん」の2代目店主・祐太(ゆうた)は、親に捨てられ、弟と生き別れている。貧乏と生き別れの兄弟をテーマにするのは、とてもずるいが、まあ許そう。それにしても、究極のお人よしの主人公の屈折した心情をコミカルに表現できるのは、阿部サダヲしかいないだろう。その意味では、まさに阿部サダヲの映画なのだが、脇役も面白い。

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2009.12.30

■「よなよなペンギン」子ども向けだが驚がくのアニメ

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 日本とフランスの合作アニメ。製作費15億円を折半しただけでなく、配給でも世界市場を視野に入れた協力体制を組んだ作品。CGアニメの製作は日本、仏、タイで分担した。
 りんたろう監督は、「幻魔大戦」「X」「メトロポリス」など破壊美を得意としているが、今回はほんわかとした子ども向けのCGで、独自の世界を築いた。CGは細部まで、徹底的に作り込んでいる。
 「よなよなペンギン」は、夜の街をペンギンコートを着て歩き回る少女ココの愛称。ココはゴブリンの少年チャリーと出会い、空飛ぶペンギンソファに乗ってゴブリン村に行く。まず、ペンギンストアの、カラフルなおもちゃたちに圧倒される。しかし、最初は主人公ココが魅力的に見えないし、ストーリーもつかみ所がないまま進んで行く。ただ、闇の帝王ブッカ・ブーの家来ザミーが登場したころから、物語が一気に輝きを増す。そして、七福神が闇の帝王と闘うという驚がくの展開。りんたろう監督お得意のスリリングな映像を堪能できる。「友だちを大切に」というストレートな呼びかけも好感が持てる。個人的には、金属的質感の天国のシーンをもっと観たかった。
 映画パンフについても、指摘しておきたい。パンフ全体が、ふりがなをふった子ども向けの文章なのだが「よなよなペンギンができるまで」という題で、アニメが完成するまでの流れを解説していたのが印象的。未来のアニメーターに向けられた、大人たちからの熱いメッセージを感じた。

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2009.12.29

■「ASSAULT GIRLS」押井守監督のお遊び

Ag2009
 「ASSAULT GIRLS」(アサルト・ガールズ)は、「アヴァロン」以来約8年ぶりの押井守監督による実写長編。長編と言っても70分。CGの水準も、一昔前の感触だ。荒涼とした仮想現実で巨大モンスターの群れを追い、ハンティングし続ける男性1人、女性3人の物語。男性は、押井守作品ではおなじみの藤木義勝(ふじき・よしかつ)。あいかわらず、ださくて垢抜けしない。そして、女性3人は、黒木メイサ、菊地凛子、佐伯日菜子と、超豪華。3人とも、生活臭のしない美人だが、2女の母とは思えない佐伯日菜子の変わらぬ美しさにファンとして感涙した。
 ただし、作品自体は、押井守監督のお遊び。劇場公開するほどのものではない。あまりにも単純明快なので、ついつい深読みしたくなるが、裏はない。楽しんで作っているだけだ。巨匠になっても相変わらず好き勝手に遊んでいる押井監督の「アマチュア」ぶりに感動はするが。
Assault09

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■「東のエデン 劇場版I The King of Eden」

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 2009年4月-6月に放送されたTVアニメの完結編となる劇場版2部作の第1部「東のエデン 劇場版I The King of Eden」。監督・原作・脚本は神山健治。近未来の日本を舞台にした、スリリングなドラマだ。
 2011年2月19日、日本を襲った60発のミサイル攻撃を阻止した滝沢朗は、その半年後、再び自ら記憶を消して姿を隠す。彼を見守ってきた森美咲は、滝沢が残した話「ノブレス携帯」にあった情報から、滝沢がいると思われるニューヨークに向かう。
 劇場版だが、TVシリーズを見ていない人が理解することは困難。はじめからTVシリーズを見ていることが前提になっている。しかし、違いもある。TVでは、機械的な対応をしていたジュイスが、ときに感情をあらわにするシーンがあって驚く。最後の「○○な救世主たらんことを」という決めゼリフが意外な表現で、笑える。
 ストーリーは、テンポよく進み、期待を膨らませて、ふいに終わる。すべては2010年3月公開予定の「東のエデン 劇場版II Paradise Lost」に引き継がれる。監督は「ファンの方に納得のいくかたちで、かつ驚いてもらえるラストにしたい」と話していた。期待しよう。

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2009.12.23

■「2012」トンデモ災害映画の金字塔

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 エメリッヒ監督の「2012」。今はやりの地球温暖化の影響ではなく、太陽活動の急速な変化による地球の大規模な地殻変動で大地震、大噴火が起こり、大陸が海に沈む。「アルマゲドン」「ザ・コア」「ディープ・インパクト」「デイ・アフター・トゥモロー」などの災害映画をはるかにしのぐ、目を見張るようなCG映像の連続、まさに災害映画の金字塔だ。
 ただし、ストーリーのトンデモ度も、すこぶる高い。CG映像のド迫力を評価するか、おざなりな物語のあまりのバカバカしさを酷評するかで、評価がまっぷたつに分かれる作品だ。映画ファンにとっても、災害のような作品と言える。いやいや、「2012」は、単なる予兆に過ぎない、来年からは2012年ものが、矢継ぎ早に登場してくるはず。ノストラダムス以来の破局ブームがやってくる。やれやれ。

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