2009年に34歳の若さで他界したSF作家・伊藤計劃。「Project Itoh」は、彼の残した3つのSF小説を、3カ月連続で劇場アニメ映画化するというプロジェクトです。1年前にプロジェクトが発表され、公開を心待ちにしてきました。「屍者の帝国」は、その第1弾です。
小説の「屍者の帝国」は、伊藤計劃の第3長編として計画されていましたが、冒頭の草稿30枚をのこしてガンでなくなります。親交の深かった円城塔が遺族の承諾を得て書き継いで完成させました。フランケンシュタインによる屍体蘇生術が普及した19世紀の世界を舞台とするスチームパンクSFです。歴史改変小説でもあります。屍者が世界の産業・文明を支えています。
劇場版アニメ「屍者の帝国」は、牧原亮太郎が監督。ウィットスタジオの制作です。
アニメは、原作の基本設定を踏まえながら、物語は大きく改編しています。ただ、原作と同じように、ロンドンだけでなく、アフガニスタン、ロシア、日本などを舞台にしています。壮大です。「シャーロック・ホームズ」のワトソン、「カラマーゾフの兄弟」のアレクセイ、「未来のイヴ」のハダリーらが登場します。
主人公ワトソンと親友フライデーの関係が全面に出ています。円城塔と伊藤計劃の関係を織り込んでいます。
始まりは、冒険活劇のようにスリリングで引き込まれます。クリエーターたちの熱意が込められたハイクオリティな映像に感動します。後半、詰め込み感が感じられるものの、ハダリーの魅力で乗り切っています。
11月公開予定の第2作「虐殺器官」は、制作会社のマングローブが突然倒産し、制作体制の見直しのため公開が延期されました。第3作「ハーモニー」の公開が、11月13日に繰り上げられます。
マングローブは、アニメ史に名前をきざむ数々の傑作アニメを生み出してきました。しかし作品を制作しても赤字続きだったようです。9月末まで「ギャングスタ」というテレビアニメも制作していました。
アニメ「虐殺器官」のプロモーションビデオを観ましたが、力の入った水準の高い作品に感じられました。無事に劇場公開されることを祈ります。
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