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2015.09.28

■「アンフェア the end」「天空の蜂」「雪の轍(わだち)」「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」

■「アンフェア the end」
「アンフェア」は、主人公・雪平夏見役の篠原涼子の魅力に支えられています。佐藤嗣麻子(さとう・しまこ)監督は、脚本も手掛けています。権力の中枢に立ち向かう骨太の展開は魅力的です。篠原涼子の凛とした美しさを、丁寧に切り取って行きます。前作は「the answer」と銘打ちながら、終わりませんでしたが、今回は本当の完結編です。

今回も、誰が敵で、誰が味方か分からない展開。どんでん返しの連続です。ストーリー的には、突っ込みどころ満載ですが、パワーで押し切った感じです。「the answer」よりも、監督の独特の映像美は少ないですが、情報社会の現状を巧みに取り入れた構成は見事です。

■「天空の蜂」
東野圭吾の1995年の書き下ろし長編小説を、堤幸彦監督が映画化しました。
工場試験飛行場から軍用の巨大ヘリコプター「ビッグB」がテロリストによって奪われます。爆薬物を搭載し、遠隔操縦で福井県の高速増殖炉「新陽」の上空で旋回します。「稼動中や建設中の原発を全て停止しないと巨大ヘリを新陽に墜落させる」という脅迫状が日本政府に届きます。「ビッグB」の機内には、子供が乗り込んだままで、子供の救出活動と犯人捜査が行われます。

手に汗握る展開ですが、俳優たちは、なかなかの熱演を見せます。なかでも、奪われたヘリコプターの開発責任者・湯原を演じた江口洋介と湯原と同じ会社の原子力技術者・三島を演じた本木雅弘の演技は、迫力がありました。犯行に協力した赤嶺淳子役の仲間由紀恵のうまさも光りました。

原発推進派と反対派の対立という単純な図式ではなく、双方の入り組んだ思いが重層的に描かれていて、厚みのある展開でした。そして、犯人をだます政府の姑息さ、もの言わぬ国民のずるさを批判することも忘れていません。観終わって、ずしりとした感触が残りました。

堤監督は「3.11以降の現状を見ると、きっと世の中に必要な作品だと思った」と制作の理由を話していました。ラストシーンに、原作にはない3.11を持ってきた意図は明白です。

■「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」
シリーズの5作目。クリストファー・マッカリーが監督と脚本を手掛けています。プッチーニのオペラ「トゥーランドット」を下敷きにした、なかなか手の込んだ脚本です。

トム・クルーズは主人公イーサン・ハントを演じ、プロデューサーも兼ねています。今回も、軍用飛行機のドア外部に張りつき侵入するという、スタントなしの危険なシーンに挑んでいます。こんなハイリスクな行為は、プロデューサーを兼ねているからこそできることです。

さて、もう忘れてしまったかもしれませんが、もともとの「ミッション・インポッシブル」は、頭脳集団ができるだけ人を傷つけることなく任務を遂行する点が魅力でした。派手なアクションシーンはありませんでした。ブライアン・デパルマ監督の劇場版「ミッション・インポッシブル」は、超人的なアクロバット・シーンが登場し、基本的な魅力が変わりました。「2」「3」も、全編がアクションの連続でした。ただ、「3」はチームプレイが生かされていました。マギー・Qのゴージャスさも印象に残っています。

2011年公開の「ミッション•インポッシブル ゴーストプロトコル」は、ブラッド・バード監督初の実写映画でした。オープニングタイトルの出来は最高でした。スケール感があり、ストーリーが流れるようにつながっていて、心地よい高揚感がありました。

そして、本作「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」。今回は、謎の多国籍スパイ組織「シンジケート」が相手です。相変わらず荒唐無稽で、突っ込みどころ満載ですが、1級の娯楽作です。ヒロインの謎の女性イルザをスウェーデン人女優レベッカ・ファーガソンは演じています。トレーニングのかいがあって、アクションのキレは素晴らしかったです。

■「雪の轍(わだち)」
2014年の第67回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しました。
トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督による、カッパドキアを舞台に繰り広げられる重層的な人間ドラマです。
ジェイラン監督の作品が日本の劇場で上映されるのは、本作品が初めてです。
「オセロ」というホテルのオーナーで元舞台役者のアイドゥンは、若い妻ニハルと、離婚して戻ってきた妹ネジラと暮らしています。それぞれの関係は、ぎくしゃくしています。雪に覆われたホテルの中で、それぞれの屈折した思いが爆発し、終わりのない憂鬱な会話が続きます。家賃を滞納するイスラムの聖職者一家とのいざこざも続いています。

カッパドキアという舞台は、人間ドラマの格好の場所です。
カッパドキアは、キノコ状の岩による不思議な景観、膨大なキリスト教壁画、地下都市と多彩な魅力を持つ、トルコ最大の観光地であり、世界遺産に指定されています。イスラム教とキリスト教の複雑な歴史が刻まれています。この作品でも、相互の価値観の違い、その断層が描かれています。

イングマール・ベルイマン監督の作品を連想させます。歴史を背負った重苦しい人間ドラマの典型です。それにしても、196分は長過ぎました。

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