■「ジュピター」
アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー監督によるオリジナルのSF大作です。
超高度な文明を誇り、宇宙を支配する巨大王朝の2人の兄と1人の妹。3人はシカゴで家政婦として働くヒロインのジュピターを狙っています。貧しい娘が、実は!というおきまりの展開です。ケインの反重力ブーツでのアクションシーンの見事さは認めますが、壮大な宇宙での戦いは安直さが目立ちます。役所たらい回しのシーンの場違い感もすごいです。
地球を支配するバレム役のエディ・レッドメインは、「博士と彼女のセオリー」のホーキング役とは別の演技力を感じました。一方、主人公ジュピター役のミラ・クニスには、今ひとつときめきませんでした。
「マトリックス」も、斬新な映像はともかく、物語としては疑問が残りましたが、「ジュピター」は古くさい設定のB級SFを大金をかけて制作した感が濃厚です。アイデアは多彩ですが、ばらばらです。懐かしきスペースオペラを、最新の映像で見せようとしたのでしょう。「この底の浅さは、わざとだよなあ」と、納得しようと試みましたが「とほほ」感はぬぐえませんでした。ブルース・ウィリス主演の「フィフス・エレメント」を見終わった後の感覚に似ています。
前作「クラウド・アトラス」は、過去、現在、未来、500年の時を自由に横断する3時間を超える壮大な大作でした。主な俳優たちが、皆たくさんの役をこなしていた点が驚きでした。複数の役を演じているだけではありません。特殊メイクによって、年齢、人種、性別さえ超えて演じているのです。
時代が交錯するので最初は少し戸惑いますが、場面転換が巧みで、やがて苦にならなくなります。分かりやすい映画的な感動を与えるタイプの作品ではありませんが、すごい作品を体験したという感慨に浸ることができました。あらゆる映画的なジャンルを横断する不思議な作品に仕上がっていました。
今回の「ジュピター」は、お金をつぎ込んだ、お遊び感が濃厚です。「新映像革命」と宣伝されていますが、それほどでもないです。現在の映像革命は、じつは別な形で進んでいると思います。
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