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2015.03.28

■「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」


いろいろな意味で、打ちのめされました。
「イミテーション」はシミュレーションと言い換えた方が分かりやすいかもしれません。第2次世界大戦で、ドイツ軍の暗号機エニグマによる暗号を解読し、連合国軍に勝利をもたらしたイギリスの天才数学者アラン・チューリングの人生を描いています。実話に基づく映画というのが信じられないほど、ドラマチックな展開です。第87回アカデミー賞では脚色賞を受賞しました。

人間存在の裏側や歴史の裏側にも踏み込む重層的な物語になっています。人間存在や歴史の暗号解読でもあります。この作品自体が、暗号なのです。監督は、ノルウェーのモルテン・ティルドゥム。

チューリングを、カンバーバッチが熱演。チューリングを支える女性ジョーン・クラークを、キーラ・ナイトレイが演じています。ジョーン・クラークの存在は、非常に大きいです。イギリスの暗号解読チームの中でチューリングが孤立し、チームが空中分解しそうになったとき、ジョーン・クラークが橋渡し役になり、チームの結束が高まり、暗号解読につながります。

イギリスは、チューリングらによる暗号解読を半世紀にわたって軍事機密として秘密にし続けます。コンピューターというと、アメリカのフォン・ノイマンらが大砲の弾道計算のために開発したというのが通説になっていますが、チューリングらの暗号解読機械は現在のコンピューターの基礎を築いたものでした。

チューリングは終戦後、現在のコンピューターにつながる論理装置を研究し続けます。脳と心の関係を機械で実現しようとします。人工知能という言葉がなかった時代に、人工知能を目指していました。18歳で亡くなった初恋の学友クリストファーの魂をよみがえらせようとしていたと言われています。人工生命の研究も行っていました。

チューリングは同性愛者で、当時のイギリスの法律で罪に問われます。彼は青酸カリを塗ったリンゴをかじり、自殺します。アップルのマークは、ここからとられたという噂もあります。

脚本家のグレアム・ムーアは、映画化にあたり無報酬で脚本を書く契約をします。チューリングの生涯を映画化することが人生の目標というほど、チューリングの人生に感動していたと言います。

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■「寄生獣 セイの格率」「デスパレード」

「寄生獣 セイの格率」は、原作の良さを生かし、終盤にきて安定し最終回は、ほぼ、原作通りに終わりました。複数の寄生獣を統合していた後藤と一体化した経験で、思考形態を人間よりも拡張したミギーは「別の方角に歩く」と新一に別れを告げます。ここで示されている「人間と違う思考」というアイデアは、とても重要です。緊迫感のある素晴らしいストーリー展開とともに、この作品を傑作にしました。

ただ、BGMの無神経な安直さは、最後まで気になりました。アクションシーンも、もっと工夫すれば迫力が違ったはずです。そんな中で、いつも感心していたのはミギー役の声優・平野綾のうまさです。職人的なと表現したくなるうまさでした。

「寄生獣 セイの格率」と同じマッドハウスが制作している「デスパレード」は、アート志向やマニアックな作品が特徴だったマッドハウスらしさが感じられた作品です。生と死をめぐるユニークな物語でした。最終回も、余韻と含蓄のある終わり方でした。こういう捻りの利いた、大人の味のするアニメが健在なのは、嬉しい限りです。

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2015.03.27

■アニメ「SHIROBAKO」

「SHIROBAKO」は、2クール、半年続いたオリジナルアニメです。アニメの制作会社を舞台にしています。「SHIROBAKO」とは、制作会社が納品する白い箱に入ったビデオテープです。完成したアニメを意味します。

アニメーション同好会の五人の女の子たちが、いっしょに商業アニメーションを作ろうと「誓い」を立てるところから物語は始まります。主人公は、アニメーション制作会社「武蔵野アニメーション」に就職した宮森あおいですが、アニメに関わる多くの人たちが登場する群像劇です。

1クールはアニメ「えくそだすっ!」が無事完成したところで終わります。これが最終回でもおかしくないほどの感動的な回でした。2クール目は、アニメ「第三飛行少女隊」の制作開始からスタートします。アニメ制作40年の歴史的な変化が、さりげなく盛り込まれます。毎回胃の痛くなるような綱渡りの制作現場。現場の厳しさが伝わってきますが、構造的な問題に思えます。作画崩壊の意味も理解できます。
アニメ「第三飛行少女隊」には、結果的にアニメ同好会の五人が参加しました。アニメ完成の打ち上げの和やかな雰囲気の中で、作品は前向きに終わります。制作現場のがんばり、ひたむきなアニメへの思いには感動します。ただ、リアルなアニメ業界のひどい労働環境を思うと、複雑な気持ちになります。

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■「博士と彼女のセオリー」


有名なスティーヴン・ホーキング博士の半生を描いています。ジェームズ・マーシュ監督です。
この監督は、パリのノートルダム大聖堂やニューヨークのワールド・トレード・センターなどものすごく高いところで綱渡りする大道芸人フィリップ・プティを追ったドキュメンタリー映画「マン・オン・ワイヤー」で2009年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。
時間の謎に挑む若き物理学者ホーキングに、突然「残り少ない人生の時間」の問題が突きつけられます。しかも熱烈な恋愛中に。柔らかな映像と音楽で甘いラブストーリーに見せながら、視線は男女関係の難しさ、人間の弱さにも届いています。ホーキングのユーモアが、少し哀しげに響きます。存命中の天才を描いていますが、美化することなく、どこか冷めた眼差しが感じられます。
イギリス生まれのホーキングは、現在73歳。21歳で身体のあらゆる筋肉が動かなくなる難病の筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせい・そくさく・こうかしょう)を発症し、余命2年の宣告されますが、途中で進行が急に弱まり、発症から50年以上たっても健在です。
映画では、ことさらホーキングの男性機能が強調されたり、「脳はコンピューターのようなもの。部品が壊れれば動作しなくなる。壊れたコンピューターには天国も来世もない」「宇宙創造の理論において、もはや神の居場所はない」と発言している無神論のホーキングと、神の問題が取り上げられています。そのわりには、研究成果や研究の苦労については、あまり触れられません。
ホーキング役のエディ・レッドメインは、入念に準備した上で熱演をみせ、第87回アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。妻ジェーン役のフェリシティ・ジョーンズも、チャーミングで好感が持てます。

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2015.03.26

■「暁のヨナ」は、後味の良いアニメでした

「暁のヨナ」は、後味の良いアニメでした。草凪みずほのコミックのアニメ化です。
制作は、しにせの「studioぴえろ」。『ニルスのふしぎな旅』『うる星やつら』で有名です。監督は、米田和弘(よねた・かずひろ)。今は「ひろ」は、ゆみへんにかたかなの「む」ですが、以前は博士の「博」でした。演出の仕事は長いですが、本格的な監督作品は初めてではないかと思います。情感豊かな音楽は「十二国記」「彩雲国物語」の梁邦彦が担当しています。

現実と接点のない架空の世界を舞台にしています。
温室育ちだったヨナ姫が、突然過酷な状況に突き落とされながらも、必死に努力して成長していきます。不思議な力を持つ4人の戦士と出会い、旅をしながら少しずつ現実世界を知っていきます。物語としては、定番的なストーリーなのですが、シリアスさとギャグの混ざり具合が巧みで、飽きません。

登場人物の造形も変化に富んでいます。それぞれの心の機微が的確に表現されています。なかでも、海賊の女船長ギガンは、しびれるほど魅力的でした。
慌ただしい展開のアニメが多い中で、この作品は大河ドラマのようにゆったとしています。その流れが心地良いです。最終回も、大きな作品らしく未来に開かれたものでした。ある意味で、これからすべてが始まる、そんな最終回でした。

なんといっても、主人公ヨナ姫役の声優、斎藤千和のうまさが、作品を高い水準に引き上げています。命を吹き込んでいます。この作品は、アニメ化される前に、4回もドラマCDが制作されています。アニメの声優は、ドラマCDの時と同じなので、とても安定感がありました。

斎藤千和は、もともと器用でうまい声優ですが、ヨナ役は少し引きながら柔軟に演じていて、その見事さに毎回感動していました。原作が大好きだということも、大きいですね。

BD/DVDの販売数次第だと思いますが、これほど2期が待ち遠しいアニメは久しぶりです。オリジナルアニメDVD、いわゆるOAD版は企画が進んでいます。

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■「アメリカン・スナイパー」

クリント・イーストウッド監督の新作です。
アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズに所属、160人を射殺したとしてアメリカ軍で最強のスナイパーと呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を映画化しました。けっして英雄的な物語ではありません。イラク戦争で多くの戦果を挙げながらも、クリス・カイルは次第に心を病んでいきます。そして、とても悲劇的な死を遂げます。

映像的には、砂嵐の中での戦闘シーンが、ぞくぞくするほどリアルに描かれていました。そして、クリス・カイルを演じるブラッドリー・クーパーの緊張感ある演技は、見応えがあります。無駄なBGMがないのも、行き詰まる思いを高めます。

それだけに、戦闘中に妊娠している妻と電話しているシーンには、違和感がありました。ハリウッド映画では、かなり切迫した場面で家族と電話する場面が目立ちますが、どうもなじめません。

クリント・イーストウッド監督は、イラク戦争自体の是非は問いません。なぜ戦うことになったのかという根本は不問にしています。それでも、戦争の理不尽さ、残酷さには、しっかりと目を向けています。保守派なりの誠実さは感じられます。緊張の連続で、観ていて胃が痛くなりますが、観終わると心が痛くなる作品です。

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2015.03.10

■画集「朝の訪問者」(俵屋年彦) [Kindle版]を発刊

画集「朝の訪問者」(俵屋年彦) [Kindle版]を発刊しました。壮大で繊細な、出会いと交流のドラマを、毎朝公開の連作プチアートで続けています。作品を通じて、たくさんの交流が生まれました。感謝します。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00UH97WYG

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