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2014.12.31

【2014年映画独断ベスト10】

私が今年劇場で観た作品の中から選んでいるので、もっとたくさん素晴らしい作品があると思います。ご了承ください。
■邦画
★5位「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」
矢口史靖監督。三浦しをんの小説の映画化です。この小説は、宮崎駿監督が「映画にしたくなった作品」として有名です。まさに青春林業映画。何となく生きていた主人公が、林業という世界に出会い成長していく物語です。矢口監督らしいギャグに笑わされているうちに、雄大な自然と林業の魅力に引き込まれていきます。100年後に向けて日々の作業をしていく「林業」という仕事の特殊性や崇高性に打たれます。伐採シーンの迫力は、これまで見てきた映画の中でもピカイチです。最後のオチもよくできていました。

★4位「舞妓はレディ」
周防正行監督。見事にまとまったミュージカルでした。しかし最初は、違和感いっぱいで、どうなっちゃうのかと、ハラハラしました。ギャグっぽい出だしからして、かなり奇抜です。お茶屋に「舞妓になりたい」と飛び込んで来た春子が、突然歌いだす場面では、何が起こるのかとドキドキしました。しかし、次第に盛り上がり、最後はコミカルでゴージャスなステージで幕を閉じます。最高のハッピーエンドです。主人公・春子を演じた上白石萌音は、最初は地味な印象ですが、映画の中で確実に成長し、魅力的になっていきます。あか抜けない女の子がかわいい舞妓になっていく物語にぴったりでした。ラストのはつらつとした踊りは絶品です。

★3位「小さいおうち」
山田洋次監督の82作目の作品。小津作品へのオマージュを捧げながら、すべてのカットが手堅く自然に流れていきます。映画が、心地よく身体にしみ込んでくる感じです。
一人暮らしのタキが孤独死し、残された遺品の中から大学ノートに綴った自叙伝が見つかる場面から始まります。タキは、昭和初期、東京郊外に建つモダンな赤い屋根の家で、お手伝いさんとして働いていました。戦争へと日本が傾いていく中で、タキは妻の時子と夫の会社の後輩の青年との恋愛を知って苦しみます。山田洋次監督が性の問題、同性愛の問題にまで踏み込んでいく姿に驚かされます。
泥沼の戦争へとなだれ込んでいく日本。日常生活の変化と、それに伴う意識の変化をきめ細かく描くことで、恐ろしいリアリティを生み出しています。

★2位「クレヨンしんちゃん 逆襲のロボとうちゃん」
「野原しんのすけの父親・ひろしがロボットにされてしまう」という奇想天外な事件から、ストーリーは始まります。父と子とロボットをめぐる映画はたくさんありますが、父親が突然ロボットにされる映画は珍しいです。
高橋渉がシリーズの初監督をつとめています。何と言っても中島かずきの脚本が出色です。中島かずきの紡ぎだす物語は、泣かせどころを心得た展開です。驚かせて、熱くさせ、泣かせるという技はピカイチです。今回も、その技が遺憾なく発揮されています。中島かずきと「クレヨンしんちゃん」は、驚くほど相性が良かったです

★1位「私の男」
作品を象徴するような流氷がきしむ場面、荒れ狂う波の場面が印象的です。桜庭一樹の直木賞受賞小説を熊切和嘉が監督しました。奥尻島を襲った北海道南西沖地震の惨状がリアルに描き出されます。家族を亡くした主人公の花は、親戚の腐野淳悟と紋別で一緒に暮らし始めます。心に深い傷を持つ二人は、禁断の関係を持ちます。時代にあったフィルム、デジタルの使い分けが効果的です。腐野を演じた浅野忠信は、文芸作品に向いている俳優だと思います。花を演じた二階堂ふみの演技は圧倒的です。まだ十代ですが、独自の存在感と巧みな演技が高く評価されてきました。これまでにも増して熱演しています。さらに、子供時代の幼い花を演じた2004年生まれの山田望叶の演技力には、舌を巻きました。彼女の演技力はちょっと信じられないレベルです。久々に激しい情念の映画を見ました。

「楽園追放」「寄生獣」特別枠です。

■洋画
★5位「ホドロフスキーのデューン」
フランク・パビッチ監督のドキュメンタリー作品。
制作されずに闇に葬られたホドロフスキー監督の「デューン」が、その後の映画史を書き換えるような存在であったことが明らかにされる本作の面白さは、格別です。呆然としつつ、深く感動しました。
このドキュメンタリーの制作を通じて、音信不通だった「DUNE」のプロデューサー、ミシェル・セイドゥーとホドロフスキー監督が再会を果たします。そしてホドロフスキーにとって23年ぶりの新作となる「リアリティのダンス」が製作され、公開されました。その事実も感動的でした。

★4位「アデル、ブルーは熱い色」
フランスの人気コミックを原作に、女子高生の成長と女性同士の恋を生々しく描写しています。2013年・第66回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作です。主演女優ふたりにも、パルムドールが授与されるという史上初めての快挙を成し遂げた作品です。アデルとエマが出会い、見つめ合い、愛し合うシーンがあまりにも美しい。幸せに満ちた映像。映画を観ることの至福に包まれます。

★3位「リヴァイアサン」
アメリカのマサチューセッツ州ニューベッドフォード港から海に出た、巨大底びき網漁船アテーナ号の作業を、GoProという耐久性のある防水機能付きの超小型カメラ11台を、船のあらゆるところに固定し撮影しました。
水揚げされ解体される魚たち、水面に飛び込んで魚を採る鳥たちの群れ、荒れ狂う海、巨大なクレーンモーターなどが、圧倒的な迫力で映像化されています。人間の視点ではない映像に、言葉を失います。これまでのドキュメンタリーは、人間の視点からのドキュメンタリーであったことに、あらためて気づかされます。

★2位「ニンフォマニアック」
強い性的欲求を抱えた女性の半生を、2部作4時間で描いています。若いジョーをステイシー・マーティンが、中年期をシャルロット・ゲンズブールが演じています。トリアー監督の作品は、憂鬱な展開が多いのですが、「ニンフォマニアック」は、知的なコメディのように、ウイットに富み、含蓄があり、驚くほど面白いです。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」をはじめ、トリアー監督は見事なストーリーテラーです。最後に、驚くべきどんでん返しがあります。トリアー監督は、精緻に創り上げた作品を最後に粉々に砕きました。第1部のコメディも、第2部のシリアスさも、全て計算づくだったのです。私の心も砕かれました。

★1位「6才のボクが、大人になるまで。」
6歳の少年の成長とその家族の変化を、同じ俳優が主人公や家族を演じ、12年にわたって撮影し完成しました。奇跡のような作品です。繊細で、要約することのできない時間が流れています。かけがえのない歴史的な傑作だと思います。

2014年のお正月に観た傑作「ゼロ・グラビティ」は、2013年公開なので今回は特別枠です。
夕張映画祭で観て大ヒットした「アナと雪の女王」も今回は特別枠です。
キューバ映画祭の日本初上映「セルヒオの手記−ユートピアからの亡命」も素晴らしかったです。
「グランド・ブダペスト・ホテル」「新しき世界「ハンナ・アーレント」「ダラス・バイヤーズクラブ」「ゴジラ」なども印象に残りました。

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■電子書籍「プチアート絵画5」を無料配布しています

電子書籍「プチアート絵画5」を無料配布しています。毎日公開している作品をまとめたものです。
さまざまなアプリを組み合わせ、表紙を含め、すべてiPhoneで制作しています。
作品は、Twitter、Facebookで公開しています。感想などを書いていただき、作品を通じた交流が生まれています。ありがたいことです。殺伐としがちなソーシャルメディアですが、ささやかな「アート」でのつながりでソーシャルメディアを少しでも創造的に、豊かにできたらと考えています。
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2014.12.27

■「ゴーンガール」


デビッド・フィンチャー監督の新作です。5回目の結婚記念日に、ニックの妻エイミーが姿を消します。ニックは警察の捜査やメディア報道に追いつめられ、妻殺害の疑いを掛けられます。理想の夫婦と見られていた夫婦の秘密が明らかになっていきます。ニックをベン・アフレックが、エイミーをロザムンド・パイクが演じています。

聡明に見えて幼児性と凶暴性が見え隠れするエイミーをロザムンド・パイクが怪演級に熱演しています。しかし、本当に異様なのはエイミーの母親です。エイミーが壊れているのは母親の影響なのです。

フィンチャー監督によるミステリー仕立てのブラック・コメディです。理想的な夫婦、理想的な結婚を笑い飛ばしています。それにしても、エイミーの矛盾だらけの嘘を、マスコミだけでなく警察も信じてしまう後半の展開は、あまりにも不自然です。もしこれがアメリカの現実なら、それこそブラック・コメディです。

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2014.12.24

 ■「ストックホルムでワルツを」


ペール・フライ監督。スウェーデン映画。スウェーデンの国民的なジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの半生を映画化しました。人口約950万人のスウェーデンで50万人以上を動員したヒット作。同国のアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞で11部門にノミネートされ、監督賞、主演女優賞など4部門を受賞しています。

シングルマザーで電話交換手の仕事をしながら歌手を夢見たモニカ・ゼタールンドのサクセスストーリーですが、美化することなく、モニカの身勝手な性格を冷たく突き放して描いています。しかし挫折にめげずに、とても一途に努力する姿は感動的であり、歌手のエッダ・マグナソンが演じているので、歌がとても魅力的で引き込まれます。

1961年に、世界で初めてスウェーデン語でジャズを歌った代表作「歩いて帰ろう」や、ビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」などの名曲が作品を彩ります。そして、北欧デザインの美術も、さりげなく作品を飾ります。複雑な人間関係を、重くならずに、さらりとまとめあげる監督の手腕もなかなかです。

昨年と今年、スウェーデン映画祭が日本で開かれています。北欧映画祭でなく、スウェーデン映画祭です。それだけ、勢いがあるのだと思います。スウェーデン映画といえばイングマール・ベルイマン監督が有名ですが、『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督も好きです。

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2014.12.18

■「6才のボクが、大人になるまで。」

■「6才のボクが、大人になるまで。」

リチャード・リンクレイター監督・脚本による群像劇。6歳の少年メイソンの成長とその家族の変化を、同じ俳優が主人公や家族を演じ、2002年の夏から2013年の10月まで、12年にわたって撮り続けて完成しました。主人公メイソンはエラー・コルトレーン、メイソンの母はパトリシア・アークエット、メイソンの父はイーサン・ホーク、姉サマンサは監督の娘ローレライ・リンクレーターが演じています。

毎年、夏に行われた撮影では、1年間に起きた出来事をみんなで話し合い、物語に反映させていきました。12年間。奇跡のような出来事です。「ビフォア・シリーズ」でイーサン・ホークとジュリー・デルピーの恋仲を18年かけて3作の映画で表現したリンクレイター監督にしかなし得ない偉業です。第64回ベルリン国際映画祭で、監督賞にあたる銀熊賞を受賞しています。

カリフォルニア州の法律では、7年以上にわたる仕事の契約を結ぶのは違法となるので、契約書にサインすることができませんでした。リンクレイター監督は、イーサン・ホークに撮影期間中に自分が死んだなら、自分の代わりに作品を仕上げるように頼んだそうです。

テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、姉サマンサと一緒に、大学で学ぶという母とともにヒューストンに転居し、新しい生活を始めます。アラスカから戻って来た父と再会し、母の再婚、義父の暴力、そして初恋を経験していきます。メイソンはアート写真家としての道を歩き始めます。

まるで最初から意図したかのように、アメリカの歴史的変化が、しっかり盛り込まれています。そして、おむすび型のiMacから始まってiPhoneまで、まるでアップルのCMのように次々に登場し、時代の変化をさりげなく示します。様々な道具が、くっきりと時代を表しています。

165分という上映時間ですが、大きな事件があるわけでもないのに、巧みな会話とテンポの良い展開で飽きません。一人一人の内面を繊細に描いています。かけがえのない、要約することのできない時間が流れています。この映画そのものが、かけがえのない歴史的な傑作です。

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■「楽園追放」


「楽園追放」は、「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」の水島精二監督と、「魔法少女まどか☆マギカ」の脚本家・虚淵玄が初めてタッグを組んだ、オリジナルの劇場用長編SFアニメです。大半の人類が地上世界を離れ「ディーヴァ」と呼ばれる電脳空間で暮らす西暦2400年が舞台です。

突然、フロンティアセッターと名乗る者が、地上世界からディーヴァに対してハッキングを仕かけてきます。ディーヴァの捜査官アンジェラ・バルザックは、生身の身体=マテリアル・ボディとなって地上世界に降り、地上調査員のディンゴとともに、フロンティア・セッターを探します。アンジェラを釘宮理恵、ディンゴを三木眞一郎、フロンティア・セッターを神谷浩史が担当しています。三人ともうまいです。

映像は、なかなかのレベルです。3DCGの良さを生かしながら、柔らかな表現も盛り込み、新たな可能性を感じさせます。演出には「交響詩篇エウレカセブン」の京田知己が参加し、切れのあるめくるめくようなアクションシーンを見せてくれます。

物語の構造は単純ですが、センスの良い映像と声優のうまさで、作品を堪能できます。それにしても、これほど人工知能を楽観的に楽しく描いた作品はないのではないかと思います。虚淵玄の脚本は、一見明るく見えますが、本質的には深刻なテーマを提示しています。私には「インターステラー」よりも、リアルな手応えが残りました。

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2014.12.16

■劇場版「寄生獣」


 劇場版「寄生獣」は、山崎貴(やまざき・たかし)監督がコミック「寄生獣」を実写映画化した2部作の前編です。現在放送中のアニメ版よりも、映像にキレがあります。原作はインターネットが普及する前の作品ですが、舞台をインターネットのある現代に置き換えたほか、いくつか大きな改変をしています。

謎の寄生生物「パラサイト」が空からではなく、海から来たという変更は、この作品のテーマから考えてより自然な設定だと思いました。泉新一が母子家庭で母親に育てられたという基本設定の変更によって、名場面がより感動的になりました。良いアイデアです。

スプラッター的な場面は、実写版だけによりリアルでグロテスクです。むしろ、食というテーマを際立たせるために、意図的にグロく描いている感じもします。ミギーの声を阿部定夫が担当することで、会話がコメディタッチになりました。普段は子供のおもちゃみたいにぷにゅとした質感のミギーが、戦闘シーンで突然鋭い刃物に変化する場面はメリハリがあります。

最後に完結編の予告編が流れます。劇場公開は2015年4月25日。実写版「Gantz」のように後編がCG少なめにならないことを祈りたいです。

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■プチアートは、数分で制作できる絵画のことです

プチアートは、数分で制作できる絵画のことです。iPhoneの複数のアプリを使って制作し、一日3回、創作したプチアートをTwitter、Facebookに公開しています。
Twitterでつぶやくように、Lineでスタンプを貼るように、気軽につくった作品を公開しています。これからは、日常生活の中にアート制作が溶け込み、ちょっとしたアートによる交流が自然に進んでいくと考えています。写真をおしゃれにコラージュして交換、交流するのと同じ感覚です。
さまざまな感想をいただけて嬉しいです。
ここにプチアートをまとめています。感想を書いていただけると嬉しいです。
https://www.facebook.com/petitart2014

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2014.12.15

■「インターステラー」

クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」。恒星間航行という意味です。人類滅亡が迫る中、それを回避するために宇宙に向かう人たちと家族の姿が描かれます。絶賛する意見が多いようですが、私は感動しませんでした。映画的な高揚感を覚えませんでした。

ノーラン監督は「幼い頃、ロンドンのレスター・スクエアにある映画館の大きいスクリーンで、父と一緒に『2001年宇宙の旅』を見た。とても印象に残っている経験だ。本作では、同じようなスケールの作品をお届したいという野望があった」と話しています。ストーリーのスケールは同じかもしれませんが、映画としてのスケール感は遙かに見劣りします。マン博士と宇宙船とのやりとりやクーパーがブラックホールに落ちていく場面などに、『2001年宇宙の旅』へのオマージュを込めていましたが。

ノーラン監督は、出来るだけCGを使わない主義で知られています。今回もSFであるにもかかわらず本当に模型を作り70ミリフィルムで撮影しています。ブラックホールに入る場面は、現時点での科学的なリアルさを持っているのかもしれませんが、映像的な驚きは少ないです。それは、訪れた惑星の風景も同じです。1950年代、60年代のSF映画と変わりありません。あまりにも安っぽい人工冬眠装置には、唖然とします。

環境の激変による食糧不足や健康障害が描かれますが、旧態依然とした農村の暮らしを続けていることに違和感を覚えました。砂嵐が強調されているのは、アメリカで1930年代に凄まじい砂嵐が相次いで怒り、終末感が漂ったという歴史的な背景があります。


「土星の近くにワームホールが発見された。我々はそこに行く」。突然太陽系の中にワームホールが誕生します。そこには知的生命体の関与が感じられ、実際少しだけ5次元生命体との遭遇が描かれますが、その後の進展は全くありません。この種のSFの定番である浦島効果による悲劇も、ひねりがありませんでした。

 ノーラン監督が1968年制作の歴史的な傑作「2001年宇宙の旅」を引き合いに出していたので、点が辛くなっているかもしれません。しかし、これまでのノーラン作品のような映画的な躍動感が乏しかったことは、否定できないと思います。

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