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2014.11.22

■「リヴァイアサン」

ハーバード大学の感覚民族誌学研究所に在籍する映像作家、ルーシァン・キャステーヌ=テイラーとヴェレナ・パラヴェルが共同監督したドキュメンタリー作品です。アメリカ合衆国・フランス・イギリス合作。2012年ロカルノ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞しています。

アメリカのマサチューセッツ州ニューベッドフォード港から海に出た、巨大底びき網漁船アテーナ号の作業を、これまであり得なかったアングルの映像で記録しています。
GoProという耐久性のある防水機能付きの超小型カメラ11台を、船のあらゆるところに固定し撮影しました。GoProはサーフィン好きの創業者ニック・ウッドマンが、2004年にサーフィンで迫力のある写真が撮れるファッショナブルで丈夫なカメラとして登場しました。今では、幅6センチの小さなボディで超広角4K撮影が可能です。

水揚げされ解体される魚たち、水面に飛び込んで魚を採る鳥たちの群れ、荒れ狂う海、巨大なクレーンモーターなどが、圧倒的な迫力で映像化されています。人間の視点ではない映像に、言葉を失います。これまでのドキュメンタリーは、人間の視点からのドキュメンタリーであったことに、あらためて気づかされます。

じつは、このドキュメンリーは、最初は普通のカメラで撮影していました。しかしカメラを海に落としてしまい、仕方なくGoProで撮影を始めたのが、全編GoProで撮影するきっかけでした。ドキュメンタリー映画の歴史は、機材の変化とともに変化して来たことを思い出します。

テイラー監督は「『リヴァイアサン』は、GoProと呼ばれる小型カメラで撮影されているが、このカメラのおかげで、観客が人が魚や船になるような作品を撮ることができた。人間が自然の中でいかに小さな存在か思い知ることのできる作品になった」と話しています。意味を与えられる前の生々しい映像を浴び続けます。

この作品と、リュミエール兄弟の120年前の映画「汽車の到着」を比較する評論家が目立ちます。「汽車の到着」は、列車が向かってくる映像ですが、驚いた観客が逃げたという話しが伝わっています。初めての映像体験のすごさを示す話しとして有名です。『リヴァイアサン』の映像の新しさは、「汽車の到着」に匹敵すると言えるかもしれません。それほどの迫力です。

映像だけではなく、怒濤のような音も極めて大切です。新千歳空港国際アニメーション映画祭2014での「AKIRA」の爆音上映でも視覚と聴覚のつながりについて痛感しましたが、この作品も音が映像を引き立たせます。敬愛するスタン・ブラッケージの作品は無音なのに音楽を感じさせる「目で見る音楽」でした。『リヴァイアサン』は「耳で聴く映像」です。

監督たちは、「観客が「見たことのないものを見た」、「あることは知っていたけれど、感じたことがなかった」という感覚をもつこと、そうしたことをわたしたちはめざしています。世界の新たな側面を開示したい」と話しています。「リヴァイアサン」は、まさにそのような体験をもたらす作品です。

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