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2014.11.24

■全天球アート

Facebookページ「全天球アート」をオープンしました。「全天球アート」とは、上下左右360度の全天球静止画、動画をOculusRiftなどで観ることを想定したアートを意味しています。
https://www.facebook.com/oculus360arts

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2014.11.22

■「リヴァイアサン」

ハーバード大学の感覚民族誌学研究所に在籍する映像作家、ルーシァン・キャステーヌ=テイラーとヴェレナ・パラヴェルが共同監督したドキュメンタリー作品です。アメリカ合衆国・フランス・イギリス合作。2012年ロカルノ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞しています。

アメリカのマサチューセッツ州ニューベッドフォード港から海に出た、巨大底びき網漁船アテーナ号の作業を、これまであり得なかったアングルの映像で記録しています。
GoProという耐久性のある防水機能付きの超小型カメラ11台を、船のあらゆるところに固定し撮影しました。GoProはサーフィン好きの創業者ニック・ウッドマンが、2004年にサーフィンで迫力のある写真が撮れるファッショナブルで丈夫なカメラとして登場しました。今では、幅6センチの小さなボディで超広角4K撮影が可能です。

水揚げされ解体される魚たち、水面に飛び込んで魚を採る鳥たちの群れ、荒れ狂う海、巨大なクレーンモーターなどが、圧倒的な迫力で映像化されています。人間の視点ではない映像に、言葉を失います。これまでのドキュメンタリーは、人間の視点からのドキュメンタリーであったことに、あらためて気づかされます。

じつは、このドキュメンリーは、最初は普通のカメラで撮影していました。しかしカメラを海に落としてしまい、仕方なくGoProで撮影を始めたのが、全編GoProで撮影するきっかけでした。ドキュメンタリー映画の歴史は、機材の変化とともに変化して来たことを思い出します。

テイラー監督は「『リヴァイアサン』は、GoProと呼ばれる小型カメラで撮影されているが、このカメラのおかげで、観客が人が魚や船になるような作品を撮ることができた。人間が自然の中でいかに小さな存在か思い知ることのできる作品になった」と話しています。意味を与えられる前の生々しい映像を浴び続けます。

この作品と、リュミエール兄弟の120年前の映画「汽車の到着」を比較する評論家が目立ちます。「汽車の到着」は、列車が向かってくる映像ですが、驚いた観客が逃げたという話しが伝わっています。初めての映像体験のすごさを示す話しとして有名です。『リヴァイアサン』の映像の新しさは、「汽車の到着」に匹敵すると言えるかもしれません。それほどの迫力です。

映像だけではなく、怒濤のような音も極めて大切です。新千歳空港国際アニメーション映画祭2014での「AKIRA」の爆音上映でも視覚と聴覚のつながりについて痛感しましたが、この作品も音が映像を引き立たせます。敬愛するスタン・ブラッケージの作品は無音なのに音楽を感じさせる「目で見る音楽」でした。『リヴァイアサン』は「耳で聴く映像」です。

監督たちは、「観客が「見たことのないものを見た」、「あることは知っていたけれど、感じたことがなかった」という感覚をもつこと、そうしたことをわたしたちはめざしています。世界の新たな側面を開示したい」と話しています。「リヴァイアサン」は、まさにそのような体験をもたらす作品です。

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■「NO」


パブロ・ラライン監督による2012年のチリの映画です。1988年のチリを舞台に、ピノチェト独裁政権の是非を問う国民投票のキャンペーン活動を描いています。

15年間、軍事政権を続けていたピノチェト将軍は、独裁を非難する国際的な批判を受けて政権の信任を問う国民投票を実施することにします。政権賛成派と反対派は、深夜に1日15分間だけテレビCMを放送することが認められます。左派連合のウルティアは、広告マンで長年の友人であるレネに「No」のためのCMを作ってほしいと依頼します。

レネはチリの未来を描いた明るいCMを制作しますが、「独裁に苦しむ人々の心情を無視している」と左派連合の人たちから批判されます。左派連合の人たちは勝つはずがないと考え、独裁を批判するCMを作ろうとします。しかし、レネは国民投票に勝つため、「独裁後の未来」を描くCMを作り続けます。明るいCMは、チリの人々の心をつかみます。

国民投票当日は、陸軍と警察が動き緊迫しますが、国営放送が「No」の優勢を伝え、軍事政権の幹部が「国民投票は『No』の勝利」と断言して、ピノチェト政権の敗北が確実となります。

レネをガエル・ガルシア・ベルナルがひょうひょうと演じています。あいかわらず魅力的です。

当時の記録映像との違和感をなくすため、撮影には1980年代のカメラやテープを使用しています。「Yes」「No」両陣営のCMや、レネが制作したテレビドラマ『美女と勇者たち』のCMなど、全体の30%が記録映像で構成されています。ドキュメンタリーのような印象を受けます。

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■「ニンフォマニアック」


トリアー監督の新作です。思い出したくないほど、深い傷を受けました。久しぶりです。なぜ、こんなに苦しく憂鬱なのでしょう。私が男であることによって、打ちのめされた作品はたくさんありましたが、今回は別格です。
前半がコメディタッチなので、すっかり油断してしまいましたが、トリアー監督の「鬱三部作」の最終作なのでした。

ある冬の夕暮れどき、年配の独身男であるセリグマンは、怪我をして倒れていた中年女性ジョーを見つけ、自宅に連れて介抱します。何があったのか質問したセリグマンに、ジョーは幼い頃から抱いている性への強い関心と、多くの男たちとの物語を語り始めます。読書家のセリグマンは、ジョーの物語を、本で読んだことと関連付けます。哲学、宗教、釣り、音楽などに詳しいです。セリグマンとジョーの掛け合いで、物語は転がります。

初体験の場面が、フィボナッチ数列という数学と関連づけられる意外性からして、笑わずには入られません。

「ニンフォマニアック」という題名通り、強い性的欲求を抱えた女性の半生を、2部作4時間で描いています。若いジョーをステイシー・マーティンが、中年期をシャルロット・ゲンズブールが演じています。二人は細身であるほかは全然似ていませんが、トリアー監督らしい配役ですね。ステイシー・マーティンは、この作品で一躍注目されました。セリグマンを演じたステラン・スカルスガルドは長年のキャリアを感じさせます。

有名俳優が、意外な役で登場します。シャイア・ラブーフは、ジョーの初恋の人。ユマ・サーマンが奥さん役で登場し強烈な修羅場を演じます。驚きの配役です。いつもながら音楽も独特のセンスを感じさせます。最初からヘビメタですからね。ステッペンウルフの懐かしい「ワイルドで行こう」も良かったな。
トリアー監督の作品は、憂鬱な展開が多いのですが、「ニンフォマニアック」は、知的なコメディのように、ウイットに富み、含蓄があり、驚くほど面白いです。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」をはじめ、トリアー監督は見事なストーリーテラーです。

最後に、驚くべきどんでん返しがあります。トリアー監督は、精緻に創り上げた作品を最後に粉々に砕きました。第1部のコメディも、第2部のシリアスさも、全て計算づくだったのです。私の心も砕かれました。傷は一生残るかもしれません。トリアー監督は悪くありません。私が弱いだけです。

新たなミュージカル仕立てで既存のミュージカルを批判し、絶望と希望を融合した「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の時も、ラストシーンに凍り付きました。それは悲劇であるとともに、救済でもある奇跡的なラストでした。「ニンフォマニアック」のラストは、それとは全く違う衝撃でした。性的な表現の過激さなど比較になりません。本当に心の奥底に届く鋭い刃物のようでした。

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