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2013.04.29

■「藁の楯」

三池崇史監督の新作「藁の楯(わらのたて)」は、スケールが大きく熱量の高いアクション映画です。娯楽作ですが、心の深いところに刺さってくる迫力があります。5月開催の 第66回カンヌ映画祭のコンペティション部門に選出されました。カンヌ映画祭というところがすごいですね。

木内一裕氏の同名小説を映画化。政財界の大物・蜷川は、自分の愛する孫娘を殺した犯人・清丸の殺害に10億円の懸賞金をかけます。その清丸の命を守り、福岡から東京の警視庁まで移送する5人の警察官の苦悩と葛藤、命懸けの闘いを描いています。

設定自体は、荒唐無稽とも言えるものです。ともすると大味になりますが、巧みな構成で緊迫感を盛り上げていきます。殺害未遂者にも1億円を贈るという巧妙な仕組みで、警察を含め1億2000万人がすべて敵になり得る状況がつくり出されていきます。

5人の警察官と清丸。演技のぶつかり合いが見物です。伊武雅刀(いぶ・まさとう)が飄々とした味のある演技を見せます。SP役の松嶋菜々子は凛々しさの中に母親の側面を表現します。清丸役の藤原竜也
の無邪気でつかみ所のない底なしの怖さも見事です。

しかし、SP役大沢たかおの熱演にはかないません。過去の悲劇を乗り越え、苦悩の中でSPの仕事を続けている葛藤を演じ切ります。脱帽です。後半、清丸と向き合う激しい演技は、本当にすごいシーンです。間違いなく今年の主演男優賞の価値があります。

「デビュー当時の初日に現場に立ったときの緊張感」を大切にしている大沢たかお。「トライし続けることが僕らの仕事。僕らが守りに入ると終わり。お客さんは面白くもなんともない。高いお金を払って見に来てくれるわけですから。だから僕は、全エネルギーを使って挑戦するんです」。かっこいい。


2006年2月26日、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2006で、「子ぎつねヘレン」上映後に行った大沢たかおさんたちのトーク・ショーの記録です。その後、俳優としてブレイクします。
http://cybar.cocolog-nifty.com/ginga/files/yuba06kitune.mp4

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2013.04.26

■「舟を編む」


29歳の石井裕也監督が、2012年本屋大賞で第1位を獲得した三浦しをんの小説「舟を編む」を映画化しました。15年掛けて新しい辞書づくりに取り組む辞書編集部の人々の姿を描いています。あえて35ミリフィルムを使用し、古いアパートのたたずまいなどで、味わいのある映像が広がります。
 
 主人公の名前が「馬締(まじめ)」、つくる辞書の名前が「大渡海(だいとかい)」と、ギャグタッチの展開かと思いましたが、コミカルな場面はあるものの、辞書づくりの大変さ、辞書編集に人生をかける人たちの熱い思いが伝わってきます。しっとりとした感動のドラマです。

 効率性とスピードが優先される現代。その中で、じっくりと言葉を選び、丁寧に意味を説明するという辞書編集の仕事は、新鮮な驚きに満ちています。馬締役の松田龍平、ヒロイン香具矢役の宮崎あおいが、昭和な香りを漂わせます。先輩役のオダギリジョーも良い味を出しています。

 映画の中で、意味が変わった言葉として「憮然」「やばい」が登場します。私は京都と東京で意味が反対になる「ほっこり」を思いました。味わい表現の「まったり」が時間の過ごし方に広がったのも、語感の影響でしょう。時の流れや地域性、世代で変化していく言葉の豊かさをかみしめました。

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2013.04.18

「ショートフィルム入門の入門」の開講は24日です

講座「ショートフィルム入門の入門」の開講は24日です。最初にプロジェクションマッピングを取り上げますが、それには訳があります。まず、わくわくする体験が得られます。ソーシャルメディアと相性が良く、なんとモバイル機器でも作成、投影可能なのです。まさに次世代のショートフィルムの象徴です。
http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=342

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2013.04.17

連続講座「ショートフィルム入門の入門」を開講します

24日開講の連続講座「ショートフィルム入門の入門」で、最初にプロジェクションマッピングを取り上げるのは、新しい映像表現の在り方の象徴だと考えたからです。プロジェクションマッピングは、これからの映像と街と人の関係を示唆しています。デジタルとリアルの融合、拡張現実であり、アートとエンターテインメントの接点に位置しています。
http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=342

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■「コズモポリス」


 金融パニックや反格差社会デモを予見したと言われるドン・デリーロの小説「コズモポリス」を、デイヴィッド・クローネンバーグがわずか6日間で脚本化しました。いくら気に入ったからと言って6日間はあまりにも短すぎます。

リムジンの中での会話シーンが多過ぎ、ストーリーにも捻りが少なくて物足りません。ことしの睡眠薬映画大賞に躍り出そうなほど、単調な会話劇が延々と続きます。しかし最後は、ゆがんだ前立腺という、いかにもクローネンバーグらしい落としどころでした。

デモに荒れる外と、精密で衛生的な空間であるリムジンの中。その対比が十分に生きていません。ジュリエット・ビノシュ、ポール・ジアマッティ、マチュー・アマルリックなど実力派の俳優をそろえています。存在感抜群ですが、皆そそくさと退場してしまうので緊張が持続しません。

構成に問題がある作品ですが、特筆すべきは、サントラの良さです。そして、ジャクソン・ポロック風のオープニングとマーク・ロスコで終わるエンディング映像のセンスも抜群です。もう一捻りしていればと、残念に思います。

この春に劇場公開予定のデヴィッド・クローネンバーグ監督の息子、ブランドン・クローネンバーグの長編監督デビュー作「アンチヴァイラル」に注目しています。往年のデヴィッド・クローネンバーグの粘着質の世界を、やや漂白したような美意識で描くサイバーパンク・ミステリー。予告編を見ると、わくわくしてしまいます。

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■「君と歩く世界」

犯罪に生きる男たちを描くオーディアール監督が、困難に立ち向い、それを乗り越えるラブストーリーを生み出しました。題名のイメージとは真逆の独創的な作品でした。原題は「錆びと骨」。パンチを受けて歯で唇が切れた時の血の味を表しています。暴力的な恋愛映画にぴったりの題です。

ステファニーはシャチの調教師。ショーで起きた事故によって彼女は両足を切断されてしまいます。元ボクサーのアリは粗野で野性的な男性ですが、心に深い傷を負ったステファニーを救おうとします。事故がなければ付き合うことがなかった異質な二人の関係が、骨太な表現で描かれていきます。

マリオン・コティヤールがステファニーの絶望と復活を生々しく演じます。挑戦的な役者魂が伝わってきます。アリ役のマティアス・スーナールツも好演しています。コティヤールの両足を消し去る最新のCG技術によって、これまでにない大胆な映像表現が可能になった点も大きいです。

ごつごつした感触の作品ですが、フランスのコート・ダジュールの光り輝く海が印象的です。シャチのショーなどの映像の美しさも忘れられません。逆境にある男女の魂のドラマを、ときに激しい、ときに繊細に描く、新しい質感のラブストーリー。ある意味で画期的な映画です。

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2013.04.16

ショートフィルムの魅力

ショートフィルムの魅力をJ・K・ ローリングの小説『ハリー・ポッター』シリーズに登場するお菓子・百味ビーンズに例えたことがあります。わくわくするほど、多彩な表現が楽しめます。そして、今ではモバイルで、どこでも観ることができます。どこでも動画を楽しめる。一昔前なら、考えられなかったことです。24日からの講座で、ショートフィルムの魅力を熱く語ります。素晴らしい作品を紹介します。
http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=342

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2013.04.06

■TVアニメ「惡の華」が始まりました。


TVアニメ「惡の華」が始まりました。押見修造による同名漫画のアニメ化。「蟲師」の長濱博史監督が担当。実写映像をアニメに描き起こしていくロトスコープという手法を採用しています。実際の人物をトレースしているのでコミックとはまったく違った作画です。思い切った冒険をしたものです。

1-3月にはアニメ「琴浦さん」の第1話が衝撃的でした。今期は「惡の華」の第1話が話題になりましたが、ほとんど肯定的な評価はありません。ぺったりしてぎこちないロトスコープは、どこかで鮮やかにコミック風の作画に切り替わると思っていました。

ストーリーも中学生のだらだらした学校生活や家庭の様子が描かれていくだけ。監督は、視聴者に喧嘩を売っているとしか思えない作品づくりをしています。しかし、最後に身震いする場面に出会います。最初はエンディング曲と分かりません。鳥肌ものです。

エンディングテーマは、 ASA-CHANG&巡礼の「花 -a last flower-」です。よこしまな欲望の花が咲こうとする瞬間、不気味な「華が、華が、華が咲いたよ・・・」というささやきが聞こえてきます。繰り返し繰り返しつぶやきが耳にこだまします。この曲に出会えたことだけが救いです。

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2013.04.05

■「野蛮なやつら/SAVAGES」


オリヴァー・ストーン監督の「野蛮なやつら/SAVAGES」は、ドン・ウィンズロウ原作のベストセラー小説の映画化です。圧倒的な力に立ち向かう若者たち。国際化時代の「ナチュラル・ボーン・キラーズ」と呼べそうな作品ですが、監督が楽しそうに製作している雰囲気が伝わってきます。

平和主義者のベンと元傭兵のチョンは、高品質の大麻栽培のベンチャー起業で大成功し2人の共通の恋人オフィーリアと3人で暮らしています。しかし、高品質の大麻に目を付けたメキシコの巨大麻薬組織バハ・カルテルがオフィーリアを拉致し、血みどろの闘いが始まります。

主人公の3人よりも、麻薬組織の殺し屋を演じたベニチオ・デル・トロの存在感が圧倒的です。狂暴で残忍。憎たらしさ百倍です。悪徳麻薬捜査官役のジョン・トラボルタも良い味を出していました。麻薬組織のボスを演じたサルマ・ハエックも貫禄十分でした。

基本テーマはかなり重たいもので、グロテスクな場面もありますが、巧みな編集で全体的に軽妙さが印象的でした。音楽の使い方もうまいです。原作と違ったラストシーンは賛否が分かれると思いますが、ストーン監督の前向きな遊び心の表れだと思います。

ストーン監督は「我々の人生には、明るい面と暗い面が必ずあり、映画では、明るい面と暗い面、その両面を描きたいと、常に考えている。今回の作品では、その両面をとてもクリアに描くことができた」と話しています。

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2013.04.01

■「ドラゴンボールZ 神と神」

劇場版「ドラゴンボール」の第18作目「ドラゴンボールZ 神と神」。「ドラゴンボール 最強への道」から17年ぶり。「ドラゴンボールZ」としては「ドラゴンボールZ 龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる」以来18年ぶりの劇場作品。初めての併映無しの単独上映です。

10歳以下のたくさんの子供たちとともに、「ドラゴンボールZ 神と神」を観てきました。初期のころの「ドラゴンボール」の雰囲気があふれていました。原作の鳥山明が初めて脚本の段階から参加。オリジナルの雰囲気を残しつつ現代風にアレンジしています。

破壊神ビルスらオリジナルキャラのデザインのほか、メインキャラの服装も新たにデザイン、連載の続きがあったらと想定して完全オリジナルストーリーが考えられています。 アクションシーンは現代的なCGですが、キャラクターは作画で描き直しています。

鳥山明は、ハリウッドの実写版「ドラゴンボール」があまりにも酷かったので、「積極的にかかわりつつ新作作ろうと思った」とリベンジを果たしたかたち。実写版の失敗が、今回の素晴らしい作品を生み出したともいえます。ハリウッド版「ドラゴンボール」に感謝。

孫悟空が最強の敵を倒して終わるという単純なパターンではありません。多くの力を結集した闘い方など、いかにも現代的な味付けです。なによりも破壊神ビルスの、ヘタレな登場の仕方が意表をついていました。自然体で憎めません。なかなか新鮮な設定です。

ベジータのプライドを捨てた踊り、破壊神ビルスに出会っておどおどする神龍(シェンロン)など、笑える場面がたくさんありました。これまでで最強の敵が登場しますが、全体的にコメディタッチ。わいわいがやがやの楽しい鳥山ワールド全開です。

孫悟空、孫悟飯、孫悟天の3人の声優を務めた野沢雅子の並々ならぬ気迫が全編にあふれています。
熱量の高い作品になった大きな要素です。単発で終わるにはもったいない新しい世界観であり、続編を期待してしまいます。子供も大人も楽しめる傑作でした。

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