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2013.01.21

■「東京家族」

小津安二郎監督の名作映画「東京物語」にオマージュをささげる「東京家族」。山田洋次監督生活50周年を記念して入念に準備され、2011年4月1日のクランクインを予定していましたが、3月11日の東日本大震災、福島原発事故を契機に製作を延期しました。

舞台は、2012年春の東京に変えられました。東日本大震災による脚本の変更は、「東京家族」の内容そのものを大きく変えることになったと思います。東日本大震災によって「東京」そのものの意味が、完全に変わってしまったからです。
山田監督の決断の深さを感じます。

前半は、登場人物の誰にも感情移入できず、その姿が、よそよそしく、わざとらしく感じられます。親子間の気まずさを通り越して、生きることの空虚ささえ漂います。しかし、それが後半の全身にしみるような感動を生み出します。山田監督の映画的なマジックです。

瀬戸内海の小島で暮らし、子供たちに会うために上京する老夫婦を橋爪功(はしづめ いさお)と吉行和子(よしゆきかずこ)が演じています。ベテランらしい演技ですが、驚きはしません。むしろ次女役の中嶋朋子、次男役の妻夫木聡のうまさを再確認しました。

山田監督が小津安二郎監督を敬愛していることがよく分かる半面、ふたりの資質の違いを感じる作品になっています。ラストの「妻に先立たれた周吉がひとりで爪を切る」は、「東京物語」と重なるものの、ほかのオマージュ・シーンは微妙に違う場面になっています。

過疎を生み出す東京一極集中や先の見えない格差社会への批判も、さりげなく盛り込んでいます。しかし決して老境映画ではありません。諦念よりも、未来へのほのかな希望が示されます。親から子へとバトンを渡す山田監督らしい作品です。

2時間半の長さの意味が理解できる展開でした。エンドロールでの出演者の名前の出方がユニークです。映画の余韻とともに楽しめます。

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