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2013.01.27

■ローランド・エメリッヒ監督「もうひとりのシェイクスピア」

「もうひとりのシェイクスピア」は、「インデペンデンス・デイ」「2012」などパニック映画で名高いのローランド・エメリッヒ監督が、シェイクスピア別人説と16世紀エリザベス王朝時代の恋愛劇、政治劇を絡ませた大作です。その絡み具合は、タブーに挑戦というくらい大胆です。

映画は、ニューヨークの現代から始まります。そして、シェイクスピア劇の俳優でもある名優デレク・ジャコビが登場します。物語は舞台公演の演目として劇中劇のスタイルで始まります。この辺は、ちょっと凝り過ぎな感じもしますが、たぶん劇中劇をやってみたかったんでしょう。

16世紀末ロンドンを再現する壮大なSFXは、さすがエメリッヒという感じですが、エリザベス王朝の衣装や美術、オックスフォード伯の乱雑な書斎の様子など、細かな部分にも力が入っていました。ただ、時間軸が頻繁に入れ替わり、構成が複雑すぎて分かりにくくなってしまいました。

ケネス・ブラナー監督のシェイクスピア映画のような型にはまった作品ではなく、「シェイクスピアは誰か」と想像を膨らませる試みは評価しますが、「ヘンリー五世」をデビュー作にするなど不必要な改変が目立ちます。シェイクスピアを庶民から切り離す方向性は、ちょっと違和感があります。

私は、優秀な貴族が書いたというシェイクスピア別人説よりも、伝承されてきた物語を含め、いろいろな人によって改変され磨き上げられたという協働説の方が共感できます。16世紀は、個人の作家性という発想が乏しかったのですから。だから作家の資料もあまり残りません。

人間ドラマを前面に打ち出した歴史作品ということで、これまでのエメリッヒ映画とは大きく違います。ネットの映画感想に「もうひとりのエメリッヒがいたりして」という表現があって、「うまい」と思いましたが、大げさで、いかがわしいところは今回も変わらず、やはりエメリッヒ映画なのでした。

脚本家のジョン・オーロフ氏は、長年本作の企画を温めていたが、アカデミー賞受賞作「恋におちたシェイクスピア」(1998年)が製作されたことで一度は断念しますが、「私は常に論争の的になるような題材に興味がある」というエメリッヒ監督によって映画化が実現しました。

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2013.01.21

■「東京家族」

小津安二郎監督の名作映画「東京物語」にオマージュをささげる「東京家族」。山田洋次監督生活50周年を記念して入念に準備され、2011年4月1日のクランクインを予定していましたが、3月11日の東日本大震災、福島原発事故を契機に製作を延期しました。

舞台は、2012年春の東京に変えられました。東日本大震災による脚本の変更は、「東京家族」の内容そのものを大きく変えることになったと思います。東日本大震災によって「東京」そのものの意味が、完全に変わってしまったからです。
山田監督の決断の深さを感じます。

前半は、登場人物の誰にも感情移入できず、その姿が、よそよそしく、わざとらしく感じられます。親子間の気まずさを通り越して、生きることの空虚ささえ漂います。しかし、それが後半の全身にしみるような感動を生み出します。山田監督の映画的なマジックです。

瀬戸内海の小島で暮らし、子供たちに会うために上京する老夫婦を橋爪功(はしづめ いさお)と吉行和子(よしゆきかずこ)が演じています。ベテランらしい演技ですが、驚きはしません。むしろ次女役の中嶋朋子、次男役の妻夫木聡のうまさを再確認しました。

山田監督が小津安二郎監督を敬愛していることがよく分かる半面、ふたりの資質の違いを感じる作品になっています。ラストの「妻に先立たれた周吉がひとりで爪を切る」は、「東京物語」と重なるものの、ほかのオマージュ・シーンは微妙に違う場面になっています。

過疎を生み出す東京一極集中や先の見えない格差社会への批判も、さりげなく盛り込んでいます。しかし決して老境映画ではありません。諦念よりも、未来へのほのかな希望が示されます。親から子へとバトンを渡す山田監督らしい作品です。

2時間半の長さの意味が理解できる展開でした。エンドロールでの出演者の名前の出方がユニークです。映画の余韻とともに楽しめます。

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2013.01.14

■「シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ」

ダニエル・コーエン(Daniel Cohen)監督のフランス映画「シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ」を観てきました。まず、フランスで活躍しているGERONIMOの製作したオープニング・タイトルにやられました。懐古調でありながら、先端的なCG技術をさりげなく盛り込み、それが映画のテーマに見事に重なっています。

パリの超高級三ツ星フレンチレストランのベテランシェフ・アレクサンドルがスランプに陥り、天才的な料理好きのジャッキー・ボノがピンチを救うというコメディタッチの作品です。ウイットに富んだ会話が楽しめます。

ジャン・レノが三ツ星レストランの頑固者のベテランシェフを演じています。どこかとぼけたところがあるジャン・レノにはお似合いの役。若手シェフ役は、フランスで人気のコメディ俳優のミカエル・ユーン。さすがに笑いのつぼを心得ています。ジャン・レノもたじたじでした。

伝統的な料理と現代的な「分子料理」の対決が登場します。映画の中の「分子料理」は極端に誇張されいかがわしい料理になっていますが、本来は調理を物理的、化学的に分析し技術的、芸術的なアプローチをするという方法で、有名なシェフ達が取り入れています。

斬新な盛りつけの料理を見かけますが、あれも「分子料理」のようです。“厨房のピカソ”ピエール・ガニェール氏は、「分子料理の先駆者」と呼ばれています。
http://premium.gnavi.co.jp/premium/img/cb/a238705/slide_4.jpg
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100317/1031252/?SS=expand-life&FD=-1054880766
http://opinionatedaboutdining.com/2012/rest_images_2012/668.jpg

この作品は有名レストランの中だけの物語ではありません。ボノを助け、励ますのは元タイル職人など、老人ホームの厨房で働いていた素人シェフたちです。彼らが、普通の食材を使い、伝統的な料理と前衛的な料理を融合させ、審査員をうならせます。

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2013.01.12

■トム・フーパー監督の「レ・ミゼラブル」

トム・フーパー監督の「レ・ミゼラブル」。前評判どおり、劇場で観るべき傑作ですが、すぐには映画評を書けませんでした。158分の大作に、文字通り圧倒されました。なぜ、これほど心を揺さぶられたのか、ずっと考えていました。

誰もが知っている「ああ無情」のストーリー。しかもフルミュージカル。名作ミュージカルの映画化。普通は、ちょっと敬遠してしまいますよね。でも観終わると、初めて小説「ああ無情」を読んだときのような、全身を貫くような深い感動が訪れました。

ラストで登場人物全員がバリケードの上で旗を振り、町並みを背景に「民衆の歌」が流れます。舞台劇の感動と映画の感動が重なる見事なシーン。この作品全体が、舞台劇と映画の絶妙な融合によって感動を盛り上げていることが分かります。

トム・フーパー監督は、ミュージカル映画としては異例の撮影現場でピアノ伴奏に合わせて歌うライブレコーディング方式を採用しました。舞台のキャリアがある俳優を集めとは言え、すさまじい迫力でした。クローズアップの多様も効果的でした。

なかでもファンティーヌ役のアン・ハサウェイは、異様なまでの熱演を見せます。「ダークナイト ライジング」でのキャットウーマンの魅力とはまったく別の存在感。「夢
やぶれて」の熱唱には言葉を失いました。その女優魂に頭が下がります。

ハサウェイは「着飾ってレッドカーペットに立つよりも、スクリーンでみじめな姿を見せている方がよぽど興奮する。これからも女優として、やったことがないテリトリーのものに挑戦したい。とにかく、いちばん厳しく難しい役柄にチャレンジしたい」と話しています。

ジャン・バルジャン役ヒュー・ジャックマンの切実さに対し、ジャベールを演じたラッセル・クロウは感情の起伏、苦悩が浅いと感じました。だからラストがやや唐突です。ただ、バリケードで死んだ少年の胸にジャベールがメダルを置くシーンは印象的でした。

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2013.01.07

★12日に2013年最初のソーシャルメディア講座

1月12日に、2013年最初のソーシャルメディア講座を開きます。テーマは、私が一番好きなTwitter。
仕組みを説明しながら面白いエピソード、事件を紹介していきます。フォロワーの増やし方も解説します。
http://www.sapporoyu.org/modules/sy_myevent/index.php?id_event=314

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■「ホビット 思いがけない冒険」

ピーター・ジャクソン監督が「ロード・オブ・ザ・リング」の60年前を舞台にした小説「ホビットの冒険」の実写化に挑みました。当初予定していたギレルモ・デル・トロ監督が降板し、製作のジャクソンが監督することになりました。ただトロ監督のテイストも残っていると感じました。

原作の「ホビット」は、ドラゴンに占拠されたドワーフの王国を奪還する物語。「ロード・オブ・ザ・リング」の壮大なストーリーではなく、子供向けの小説です。映画では大幅にシーンを追加し、「ロード・オブ・ザ・リング」を上回る映像世界を構築しています。ユーモラスな場面のほか、結構グロテスクな場面もあります。

3時間の大作ですが、飽きさせません。前半は、ややゆっくりしたペースですが、後半は怒濤の展開で、クライマックスのような目を見張るシーンの連続。縦横無尽に動くカメラワークが、とても気持ちよかったです。さすが、ピーター・ジャクソンと思いました。

「ホビット」3部作は「ロード・オブ・ザ・リング」3部作と対になる構想だと思います。ただ「ロード・オブ・ザ・リング」第1部「旅の仲間」は、唐突な終り方をしていますが、今回の「思いがけない冒険」はラストでビルボの成長とドワーフとの信頼関係を描き、十分にまとまっていました。

ピーター・ジャクソン監督は「この作品をやることにして、本当に良かったと思っている。同窓会みたいだ。スタッフはほとんど前作と同じ。最初はちょっと怖かったけど、撮影はとても楽しいし、一緒に映画作りをした信頼できる昔の仲間に囲まれて作業できるのは本当に最高」と話しています。

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■「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」


「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」は、自伝的コミック「ペルセポリス」がベストセラーになった女性アーティスト、マルジャン・サトラピが、コミック「チキンのプラム煮」を初めて実写化した作品です。なぜ邦題を同じ「チキンのプラム煮」にしなかったのかは謎。

舞台は、1950年代のテヘラン。イラン・イスラム革命以前の話なので、女性はチャドルやスカーフで顔を隠していません。ファンタジックなストーリーと色彩が印象的ですが、いかがわしい雰囲気も漂っています。前半は、もたつき感もありますが、真相が明らかになるラストのキレは見事です。

恋人イラーヌ役のゴルシフテ・ファラハニが、とにかく美しい。イラーヌはイランの象徴でしょうか。死の天使の名前が「アズラエル」とイスラエルに似ているなど、登場人物の名前にはいろいろな意味を込めているようです。ただ、中東の歴史に詳しくないと、すぐには分かりません。

天才的なバイオリニストの師匠から譲り受けたバイオリンを、逆上したとはいえ妻がバラバラに壊すというシーンに違和感を覚えました。バイオリニストは絶望して絶食して死にます。あまりにも身勝手なバイオリニストよりも、夫を愛していた妻の不自然な行動がひっかかりました。

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