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2012.12.22

■2007年-2011年の独断ベストです

■2007年-2011年の独断ベストです。
★2011年・劇場映画独断ベスト10
http://cybar.cocolog-nifty.com/ginga/2011/12/201110-08a0.html
★2010年・劇場映画独断ベスト10
http://cybar.cocolog-nifty.com/ginga/2010/12/201010-eab6.html
★2009年・劇場映画独断ベスト10
http://cybar.cocolog-nifty.com/ginga/2009/12/200910-750b.html
★2008年映画・独断ベスト20
http://cybar.cocolog-nifty.com/ginga/2008/12/200820-5bd7.html
★2007年映画・独断ベスト20
http://www.asahi-net.or.jp/~md5s-kzo/best2007.html

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■2012年映画独断ベスト10「ニーチェの馬」劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」

★「2012年映画独断ベスト10」
私が、ことし劇場で観た作品の中から選びました。ご了承ください。

【洋画】

★1位「ニーチェの馬」
1位はこの作品以外あり得ませんでした。ハンガリーのタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。映画の持つ強い力を実感させられます。劇場でフイルムで観なければ伝わらない作品です。映画の原点に連れて行かれ、打ちのめされる、モノクローム作品です。

ムチに打たれ疲れ果てた馬の首を抱きしめた後に精神が崩壊したという哲学者ニーチェの話は有名です。しかし、そこから馬のその後を描くという「ニーチェの馬」の発想は、驚くほど斬新な発想です。人生の困難さをとらえかえすというテーマに直結していきます。

馬は、初老の男とその娘とともに淡々と生きています。ある日、馬は食事をしなくなり、働かなくなります。日常が次第に崩壊していきます。起床、着替え、食事、馬の世話、就寝。単純な繰り返しに見える生活を長回しで映し続けますが、それがとてつもなく新鮮に写ります。

6日間が過ぎ、世界は静かに破局を迎えます。闇に包まれる中、初老の男は絶望した娘にじゃがいもを食べるように促します。タル・ベーラ監督は従来の映画の派手な終末に対して「本当の終末というのはもっと静かな物であると思う」と話しています。日本の現状を思い、ぞっとしました。

★2位「灼熱の魂」
中東からカナダ・ケベック州に亡命していたナワルは、プールサイドで意識もうろうとなり死んでしまいます。公証人に呼ばれた双子の姉弟は、死んだとされていた父と、存在すら知らなかった兄に、それぞれ手紙を届けてほしいという内容の遺書を渡されます。ミステリーの始まりです。

姉娘は手がかりを求め中東へ。母ナワルの激烈な過去を知ることになります。異教徒の男を愛して子を孕み、男を殺されて村から追放されます。息子を殺されたと思いテロに身を投じて監獄に入り、15年間拷問を受け続け、レイプされて子供を産んでいたのです。

原題「Incendies」は、戦乱、激情の意味。「灼熱の魂」という邦題は、見終わると納得できます。燃え尽きた魂でもあります。凄まじい戦乱を激情を持って生き抜いた人間の凄みがあります。

「灼熱の魂」の原作は、2009年にはアカデミー・フランセーズ演劇大賞を受賞したワジディ・ムアワッドの同名戯曲です。四部作「約束の血」の第二部にあたります。ムアワッドはベイルート生まれで、8才でレバノン内戦を逃れフランスに亡命、カナダに移住しました。

脚本の完成度は、比類がありません。究極の悲劇でありながら、究極の救いでもある結末。ギリシャ悲劇に匹敵する、驚くべき真相が明らかになります。言葉を失う衝撃とは、この映画のためにある表現です。

★3位「別離」
2011年のイラン映画「別離」。物語の巧みさと映像センスの良さが光りました。第61回ベルリン国際映画祭の金熊賞と、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞を受賞。史上初の快挙でした。第84回アカデミー賞ではイラン代表作品として外国語映画賞を受賞しています。

テヘランで暮らしている中産階級の家族と周囲の人たちが描かれます。母親のシミンは夫と娘とともに出国を希望。父親ナデルはアルツハイマー型認知症を患う父のを心配し、国に留まります。11歳の娘テルメーは、両親の思いに引き裂かれます。

アスガル・ファルハーディー監督は、脚本を個人的な体験をもとに書いていますが、イランの格差、価値観の多様さ、誠実さの問題など、普遍的なテーマをあぶり出していきます。激変するイランだからこそ生まれた緊張感あふれる傑作です。

★4位「最強のふたり」
2011年の第24回東京国際映画祭で東京サクラグランプリ(最優秀作品賞)と最優秀男優賞をダブル受賞した作品です。フランスでも、記録的なロングランで、大ヒットしたそうです。

原題「レ・ザントゥシャーブル」は、「触れ合えない人々」。大富豪の身体障害者フィリップは、刑務所を出たばかりの黒人青年ドリスを介護ヘルパーとして雇い、ふたりは人間的な絆を深めていきます。共通点のないふたりの深い友情。奇麗事のようですが、実話をもとにしています。
最初は噛み合なかったふたりの会話が、やがて噛み合っていきます。ウィットに富んでいて、笑えます。ラスト近くになると、笑いと感動の波状攻撃があります。そして最後の最後に、大きな感動がやってきます。映画的な満足感を味わうことが出来ます。

★5位「裏切りのサーカス」
スパイ小説の作家ジョン・ル・カレの代表作を、トーマス・アルフレッドソンが監督、ゲイリー・オールドマンが主演しています。ほかの俳優たちも、渋くて良かったですが、オールドマンの格好良さは突出していました。
スタイリッシュに見えながら、一筋縄ではいかない、なかなか意地悪な作品です。というか、その意地の悪さも含めて楽しむタイプの作品です。人がたくさん死にます。しかし、その見せ方は、ハリウッド映画とは全く違います。派手な演出はありませんが、かなり「えぐい」です。冷え冷えとして、リアルです。長く脳裏に張り付いて消えません。

※次点=「007 スカイフォール」「ピナ・バウシュ 夢の教室」「ダーク シャドウ」


【邦画】

★1位劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」
 ことしの邦画ベストは、この作品です。

 このアニメの魅力は、虚淵玄(うろぶち げん)の独創的なストーリーだけではありません。制作のシャフトの、並外れた力量がなければ、ここまでの傑作にはなりませんでした。蒼樹(あおき)うめが担当した少女たちの愛らしくてかわいいキャラクター作画、梶浦由記のシンフォニックな広がりのある音楽、そして劇団イヌカレーが担当した魔女や異空間のシュールなデザイン。それら異質な表現が、絶妙なバランスで融合し、これまで観たことのないアニメになっています。

  小学生以下には難しいですが、中学生なら、この作品の切実さ、奥深さを感じることができると思います。私は、中学2年生の時に手塚治虫の「火の鳥」未来編を読んで驚き、それ以来影響されています。「まどか」も観た人たちに長く影響する作品となるでしょう。

★2位「エンディングノート」
 砂田麻美監督。2012年最初に観た劇場公開作品でしたが、いきなり最高水準の作品に出会いました。新しいドキュメンタリー映画の地平を切り開いた感じです。いや、計算だけではできなかった、奇跡的な作品だと思います。

 2009年、東京。熱血営業マンとして高度経済成長期に会社を支え駆け抜けた「段取り」が得意なサラリーマンは、67歳で40年以上勤めた会社を退職、第二の人生を歩み始めた矢先、毎年受けていた健康診断でガンが発見されます。すでに末期で、彼が最後のプロジェクトとしたのは「自分の死の段取り」エンディングノートの作成でした。

 「エンディングノート」は、膨大な映像記録から“家族の生と死”という深刻なテーマを軽快なタッチで描きます。その編集力は、初監督作品とは思えません。もうすぐ死が迫っていることが分かっていても、家族のユーモアあふれる会話に、思わず笑ってしまう不思議な映画です。何か、驚くような真実が明らかになるわけではありません。普通の人が、家族に見守られて普通に死んでいく記録。それが絶妙な距離感を持った的確な映像によって、心揺さぶられる傑作になりました。


★3位「希望の国」
 園子温監督の最新作「希望の国」。舞台は東日本大震災から数年後、架空の都市・長島県でマグニチュード8.3の地震が起き、それに続く原発事故によって、人生が一変させられる家族の姿を描いています。国内では出資者が集まらず、イギリス、台湾など外国から資金を得て完成にこぎ着けました。

 福島原発事故から1年半。映画化は急ぎ過ぎではと思っていましたが、それは間違いでした。心の深いところに刺ってくる作品です。原発事故にほんろうされる人々に焦点を当て、低い視点から描いています。そして映画化を急いだ監督の危機感も伝わってきます。「希望の国」という題名は、皮肉ではなく絶望に満ちた祈りです。

★4位「のぼうの城」
 犬童一心監督と樋口真嗣(ひぐち・しんじ)監督の共同監督のスタイルをとっています。極めて現代的な娯楽時代劇でした。
 苫小牧市勇払原野で、2010年8、9月に、約40日間ロケが行われ、苫小牧市民を中心に約4000人がエキストラやボランティアとして参加。東京ドーム約20個分の巨大なオープンセットを組み、城を丸ごと水に沈める、“水攻め”戦術などのシーンを再現。迫力あるCGとともにスケール感あふれる作品に仕上がりました。

 主人公「のぼう様」成田長親(なりた・ ながちか)役の野村萬斎は、最初から最後までおバカぶりを発揮。それでいて、本当に大切な事を理解している優しい名武将を演じています。登場人物を魅力的に造形しながら、重苦しいリアリティーよりも大げさな演出、コメディータッチを打ち出す方針が、成功しています。

★5位「ゾンビアス」
 井口昇監督の歴史的な作品であるだけでなく、世界のゾンビ映画にとっても、記念碑的な作品でしょう。監督特有の原体験と、奔放きわまりないアイデアの連続が、前人未到の傑作を生み出しました。弾けに弾け、ぶっ飛びにぶっ飛んだ展開です。ここまでくると、お下劣も、清々しいです。

 ゾンビ映画であるとともに、オナラ映画です。オナラが印象的な映画は、「カンタベリー物語」「アマデウス」「クレヨンしんちゃん」などが思い浮かびますが、この作品のように、オナラが主人公と言えるほどオナラが活躍する映画はありませんでした。

※次点=「テルマエ ロマエ」「ヘルタースケルター」

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2012.12.16

■「007 スカイフォール」

007シリーズ製作50周年記念の最新作「007 スカイフォール」。非常に評価が高いです。なにしろ、最初からこれまでのボンド映画の面白さを凝縮したようなアクションシーンがこれでもかと続きます。この手に汗握る場面を観るだけで、入場料の元が取れます。

衝撃のシーンに続いて、アデルが歌う主題歌「スカイフォール」が流れます。この曲が、往年の007を思わせる曲調で、しかも凝った映像美が楽しめます。たくさんの趣向を凝らしたオープニングタイトルを観てきましたが、私のベスト30に入るでしょう。

ストーリーは大胆です。イギリスの諜報機関MI6(MIはmilitary intelligence(軍事情報)の略)の存在意義に切り込むほか、ジェームス・ボンドの生い立ち、そのトラウマにまで迫ります。そして、敵は元MI6エージェントです。愛憎渦巻く人間ドラマとなっています。この辺が高く評価されているようです。

ただ、007シリーズでまで、ハリウッド映画のお約束である主人公のトラウマ劇など、観たくないという人もいるでしょう。元MI6エージェントの憎しみの表現が方向違いではないかと首をひねる人もいるでしょう。なんでも人間臭くすればいいという訳ではありませんから。賛否は分かれるかもしれません。

エンドロールの最後の最後にロケ地として「長崎県軍艦島」と漢字で登場するので、お見逃しなく。

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■「人生の特等席」

「人生の特等席」。最初は、クリント・イーストウッド監督、主演で企画された作品。それをプロデューサーなどでイーストウッドを支えてきたロバート・ロレンツが初監督することになったもの。2008年の監督・主演作「グラン・トリノ」で俳優引退宣言したクリント・イーストウッドが4年ぶりに銀幕復帰。俳優に徹した主演作は19年ぶりです。

俳優としてのイーストウッドの魅力は失われていません。伝説的なスカウトマン・ガス役で、今回も頑固おやじを渋く演じています。彼のひとり娘ミッキー役のエイミー・アダムスも、父親譲りの頑固さを見せ、存在感抜群でした。

ストーリーは、アンチ「マネー・ボール」的。ガスはデータに頼らず、自分自身の経験を信じてスカウトします。データ主義との対立はいかにも単純化されていて、底が浅いです。ガスとミッキーのこじれた関係が、修復されていく過程もひねりがないですね。

ガスにスカウトされた元選手でスカウトマンのジョニーとミッキーの恋愛劇がやや唐突。ラストのどんでん返しも、いかにもご都合主義。こんな都合の良い展開では、さわやかさと痛快さが生まれないと思いますが。ただエンディングのイーストウッドの後ろ姿は、かっこ良かったです。

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2012.12.15

■「恋のロンドン狂騒曲」

ウッディ・アレン監督の「恋のロンドン狂騒曲」は、ヒット作「ミッドナイト・イン・パリ」の後に公開されましたが、製作は「ミッドナイト・イン・パリ」の前、2010年です。ロンドンを舞台に2組の夫婦を中心とした恋を描いた、辛辣なラブコメディ。ウッディ・アレン節、健在です。

映画の冒頭と最後で「人生は騒がしいが意味はない」というシェイクスピアの「マクベス」のセリフが引用されます。登場する、様々な恋愛劇は、なさそうでありそうなパターン。燃え上がりながら、皮肉な展開を遂げていきます。ウッディ・アレンは神のように意地悪です。

アンソニー・ホプキンス、アントニオ・バンデラスら、いずれも芸達者ぞろいのキャスティングですが、売れない作家ロイとの夫婦関係につかれ、生活費のために美術ギャラリーで働きはじめ、オーナーに心ときめくサリー役のナオミ・ワッツのドタバタぶりが、一番印象に残りました。

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2012.12.13

■「声をかくす人」

「声をかくす人」は、ロバート・レッドフォードが、「大いなる陰謀」以来5年ぶりに監督した歴史ドラマです。南北戦争終結直後の1865年4月14日。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが暗殺されます。国中が動揺する中、共謀者として8人が逮捕され、軍事法廷が開かれます。

 リンカーン大統領暗殺の罪でアメリカ合衆国政府によって処刑された初めての女性メアリー・ラサットの隠された真実を描きます。無実を主張する下宿屋の女主人・メアリーの弁護を、北軍の英雄であるフレデリックが引き受け、彼女の無実を信じて、公正とはいえない軍法会議で真相に迫ります。

最初から「全員死刑」が決まっていた裁判。犯人達の早期処刑で北部市民の報復感情を満たし、南軍残党抵抗の機運を削ぐ狙いがありました。「国の団結のため」にメアリーは、殉教者のように死んでいきます。その姿を、感情を押し殺し、ドキュメンタリーのようにとらえています。

アメリカの史実をもとに歴史的に正確な映画作りをモットーとするアメリカン・フィルム・カンパニー(TAFC)によって製作されました。光源もガス灯、灯油、ろうそくの光など、当時使っていたものにしぼっています。絞首刑のシーンも当時と全く同じにしたといいます。

ロバート・レッドフォードは「歴史は素晴らしい物語の情報源であり、しばしば現代と関係している。歴史の中に入ると、一般的に認められ語られてことが、必ずしも"本当"の物語ではないことに気づく。知っていると思っている物語の下に、別の物語がある」と話しています。

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2012.12.09

■「その夜の侍」は、荒削りな独特の質感が魅力

「その夜の侍」は、2007年に劇団THE SHAMPOO HATが上演した舞台劇を原作とした 作品。監督・脚本は原作者の赤堀雅秋(あかほり ・まさあき)が務め、映画監督デビューです。舞台での豊富な経験が生かしながら、荒削りな独特の質感を持っていました。

復讐劇と思わせて、希望を描いています。小さな鉄工所を経営する中年男は、5年前に最愛の妻をひき逃げ事件で失い、刑期を終えて出所したひき逃げ犯への復讐を計画し、カウントダウンを告げる脅迫状を送り続けています。そして、対決の時がやってきます。

豪華キャストに驚きます。妻をひき逃げで殺された中村健一役の堺雅人よりも、ひき逃げ犯・木島宏役の山田孝之の得体の知れなさが、衝撃的でした。ほんの一瞬登場した三谷昇の異様な存在感にもうたれました。女性たちが、描けていないのが残念でした。

協同組合日本映画製作者協会がもっとも将来性のある新人監督に与える『新藤兼人賞』の2012年金賞を受賞しました。将来を期待してでしょう。自己満足に陥りそうな表現を、ぎりきりでシアルさに置き換えている危うさが魅力です。

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