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2012.11.24

■「のぼうの城」

「のぼうの城」は、犬童一心監督と樋口真嗣(ひぐち・しんじ)監督の共同監督のスタイルをとっています。極めて現代的な娯楽時代劇でした。戦国末期に豊臣軍の武将・石田三成が率いる2万人の軍勢に500人で立ち向った武将たちを描いた和田竜(わだ・りょう)の歴史小説を映画化。

苫小牧市勇払原野で、2010年8、9月に、約40日間ロケが行われ、苫小牧市民を中心に約4000人がエキストラやボランティアとして参加。東京ドーム約20個分の巨大なオープンセットを組み、城を丸ごと水に沈める、“水攻め”戦術などのシーンを再現。迫力あるCGとともにスケール感あふれる作品に仕上がりました。

 主人公「のぼう様」成田長親(なりた・ ながちか)役の野村萬斎は、最初から最後までおバカぶりを発揮。それでいて、本当に大切な事を理解している優しい名武将を演じています。2012年は成田長親の四百回忌になります。

クライマックスの田楽シーンは、野村萬斎でなければ演じることができなかったでしょう。劇場が一つになって楽しんだと思います。登場人物を魅力的に造形しながら、重苦しいリアリティーよりも大げさな演出、コメディータッチを打ち出す方針が、成功しています。
犬童一心監督との出会いは、2000年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭。ヤング・ファンタスティック・クランプリ部門でグランプリに輝いた『金髪の草原』で新しい才能に出会いました。大島弓子のコミックの映画化です。
80歳の老人がある日目覚めると20歳の青年になっているというファンタジー。心温まるアイデアで、登場人物もみなユニーク。本人は20歳のつもりだが、周りは80歳と思っています。そしてマドンナとして憧れていた女性に似ていたお手伝いさんに恋をします。夢のあるボケを描いているのかと思って見ていると、そうでもないようにも思えてくるような不思議な仕掛けが用意されていました。

「ジョゼと虎と魚たち」を観たときの感激も忘れられません。柔らかく繊細な映像で、抜群の映画的なセンス。田辺聖子の原作を渡辺あやが見事な脚本に膨らませています。大学生・恒夫の物語が、やがてジョゼの自立の物語へと変わっていきます。その語り口の巧みさに舌を巻きました。わずか1か月で撮影されたとは、とても思えませんでした。

「メゾン・ド・ヒミコ」にも触れない訳にはいきません。ゲイのための老人ホームが舞台。末期癌のゲイの父親・卑弥呼、その恋人、家族を捨てた父を嫌悪している娘を中心に、ホームにいるゲイたちが魅力的に描かれています。だれもが屈折した思いを抱えた複雑な人物として登場します。なかでも卑弥呼役・田中泯の存在感は圧倒的。登場すると空気が緊張します。「ジョゼと虎と魚たち」とは別のベクトルで、これまでの人間ドラマの地平を一歩超えた傑作です。
そして、今回の新たなコメディ時代劇の誕生。変化していく犬童一心監督からも目が離せません。

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