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2012.10.21

園子温監督の最新作「希望の国」心の深いところに刺ってくる作品です

園子温監督の最新作「希望の国」。舞台は東日本大震災から数年後、架空の都市・長島県でマグニチュード8.3の地震が起き、それに続く原発事故によって、人生が一変させられる家族の姿を描いています。国内では出資者が集まらず、イギリス、台湾など外国から資金を得て完成にこぎ着けました。

9月に開催された第37回トロント国際映画祭では最優秀アジア映画賞を受賞しました。気仙沼市の被災した建物を劇場として使用し、10月5日から7日まで行われた無料上映の映画祭「三陸映画祭 in 気仙沼」ではクロージング作品に選ばれました。

福島原発事故から1年半。映画化は急ぎ過ぎではと思っていましたが、それは間違いでした。心の深いところに刺ってくる作品です。原発事故にほんろうされる人々に焦点を当て、低い視点から描いています。そして映画化を急いだ監督の危機感も伝わってきます。「希望の国」という題名は、皮肉ではなく絶望に満ちた祈りです。

夏八木勲(なつやぎ・いさお)、大谷直子が演じる老夫婦が、この作品に深みを与えています。夏八木勲の存在感あふれる演技も見応えがありますが、認知症の妻を演じた大谷直子がとにかく素晴らしいです。「家に帰りましょう」という言葉の響きにしびれました。

園監督らしい過激な描写はありませんが、原発事故が、突き抜けるような過激さを持っているので、冷静な表現によって、かえってそのことが際立ちます。「原発の問題にもだんだん慣れてしまう。この映画を、慣れを揺さぶるような存在にしたかった」と監督は、映画化の意味を語っています。

園子監督は、「今、絶対に知っておいてほしいことだけを映画にしました。ぜひ本作を映画館で観ていただきたい。『原発映画ヒット!』となれば、今進行中の社会問題を批判する映画を撮ってもいいんだ、となる。そうすると、日本映画の改革もできるんです」と話しています。

園監督は、10月17日に亡くなった若松孝二監督と親交がありました。「惜しい人を亡くした。最後の闘う映画監督。社会にたてついて批判して、一生懸命闘った監督というのは、日本では若松さんひとりだった。若松監督は、次回作は東電を題材にした原発の映画を作る予定だった。僕の映画を観て、『おまえこんなんじゃ甘いぞ。オレは東電を叩きのめす』と言うんじゃないかな」と早すぎる死を惜しみました。

園監督の次回作『地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?』は、初のアクション映画。15年以上前に監督自身が書いた脚本を発掘して加筆し、実現しました。アクションのほか、コメディーの要素、バイオレンス描写も含まれているらしいです。2013年3月公開予定。

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