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2012.10.28

■2012年10月映画評

■劇場版アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」

テレビ放送中から、すごいすごいと言い続けてきたアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」。放送終了から1年半経ちました。そして待望の劇場版が公開され、前編、後編とも、公開初日に観ることができました。感無量でした。
 TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」は、2011年を代表するアニメと評されていますが、私にとっては、10年に1度出会うか出会えないかの傑作です。心の琴線に触れました。2011年12月に第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞しています。

TVアニメは、原作ものが大半ですが、この作品はオリジナルです。だから、テレビ放送のとき、先が分かりません。予想を超える展開に毎回驚かされ続け、最後に大きな感動がやってきました。Twitterなどで次回の内容を予想しあうという新しい楽しさも体験しました。

 主人公のかなめまどかは、平凡な中学2年の女の子です。かわいい小動物きゅぅべえから「「願い事をなんでもかなえるから、僕と契約して、魔法少女になってよ」と頼まれます。魔法少女は、悪い魔女と闘う正義の存在。普通なら、すぐに主人公は魔法少女になりますが、物語は予想をくつがえして進みます。明るかったストーリーは、絶望的な展開をしていきます。そして、人類史、宇宙史が解き明かされていきます。

 このアニメの魅力は、虚淵玄(うろぶち げん)の独創的なストーリーだけではありません。制作のシャフトの、並外れた力量がなければ、ここまでの傑作にはなりませんでした。蒼樹(あおき)うめが担当した少女たちの愛らしくてかわいいキャラクター作画、梶浦由記のシンフォニックな広がりのある音楽、そして劇団イヌカレーが担当した魔女や異空間のシュールなデザイン。それら異質な表現が、絶妙なバランスで融合し、これまで観たことのないアニメになっています。新房昭之(しんぼう・あきゆき)監督の力技です。監督は、スタッフに詳しい内容を教えずに作業をさせたといいます。

劇場版の監督は、テレビ版のディレクター(みやもと ゆきひろ)。新房昭之は総監督です。

前編「始まりの物語」は、約130分。 カットされたシーンもありますが、TVシリーズの1-8回です。期待を裏切らないクオリティーでした。女性の観客が多くて驚きました。3割以上は女性だったと思います。

テレビで「魔法少女まどか☆マギカ」を観て、大きなスクリーンで観たいと、劇場版公開を夢見ました。それが実現して、本当に夢のようです。たんなる総集編ではありません。大画面にあわせて映像のクオリティが上がり、こまかな修正が行われています。音楽も迫力を増しました。

TV放送の時は、翌週にどのような展開になるのかを想像していました。6日に劇場版「魔法少女まどか☆マギカ」前編を観た後、13日に公開される後編「永遠の物語」の内容を想像することは、TV放送時以上に楽しいことでした。後編はTVシリーズの9-12話部分が中心にるので、かなり厚みが増すと予想していました。

劇場版の後編を観た後、数日間感動に包まれていました。結末は変わっていません。全体を再編集するとともに、印象的なシーンやカットが付け加えられて、奥行きが増しました。あらためて、この作品のすごさを実感しました。

新作は2013年公開予定。タイトルは「叛逆の物語」です。エンドロールの後の、新作の予告編がうま過ぎます。後編の後の物語になると推測できます。切れ切れの謎めいた会話に、妄想が膨らみます。

「魔法少女まどか☆マギカ」は、小学生以下には難しいですが、中学生なら、この作品の切実さ、奥深さを感じることができると思います。私は、中学2年生の時に手塚治虫の「火の鳥」未来編を読んで驚き、それ以来影響されています。「まどか」も観た人たちに長く影響する作品となるでしょう。

■「マルドゥック・スクランブル 排気」

「マルドゥック・スクランブル 排気」は、SF作家・冲方丁(うぶかた・とう)の第24回日本SF大賞受賞作品「マルドゥック・スクランブル」を劇場用長編アニメーション化したシリーズ3部作の完結編です。

主人公の少女の名前はバロット( Balot)は、孵化直前のアヒルの卵を加熱したゆで卵の意味。万能ネズミの名前ウフコックは「半熟卵」の意味。題名からして「スクランブル」。卵づくしですが、なかなかのハードボイルド、大人のアニメです。

2010年秋公開の第1部『マルドゥック・スクランブル 圧縮』には、衝撃を受けました。1時間あまりの作品ですが、映像の色調と世界観がすごい。サイバーパンクアニメの快楽です。人体改造の描写も妥協していません。畳み掛けるような激しい銃撃シーンの頂点で唐突に終わります。そして本田美奈子.の清明な歌声「アメイジング・グレイス」が天上から静かに降りてきます。映像と音楽の異なる色が混ざり合い、15歳の少女バロットの屈折した心を表現していました。アニメの公開初日は、本田美奈子の命日・11月6日でした。

2011年9月公開の第2部、「マルドゥック・スクランブル 燃焼」。大胆な色彩設計を取り入れて魅力的な映像を魅せてくれましたが、アクションシーンが少なく物足りなさが残りました。「圧縮」には面白さが凝縮されていましたが、「燃焼」は十分に燃え上がりませんでした。カジノのシーンが多かったからでしょう。ただ、エンドロールで流れた本田美奈子の「アヴェ・マリア for Balot」は、まさに天上の歌声でした。「圧縮」の「アメイジング・グレイス 」以上に、心にしみました。

そして、2012年9月29日公開の「マルドゥック・スクランブル 排気」。
 バロットは、猟奇的な殺人を繰り返しているシェルの移し替えられた記憶が、彼が経営するカジノの百万ドルチップの中に隠されていることを知り、チップを手に入れるためにカジノに乗り込みます。そして、
ウフコックとの連携でチップの中の情報を手に入れます。前半は、カジノの頭脳戦です。
 そして、後半はボイルドとバロットとの目もくらむような激しいバトルが繰り広げられます。その鋭く尖った表現に魅せられます。交わされる会話は含蓄に満ち、映像表現は高い水準でまとめあげられています。
 エンドロールで流れたのは、バロット役林原めぐみの「つばさ」。熱唱していますが、残念ながら、本田美奈子の「つばさ」には及びませんでした。

■「希望の国」

園子温監督の最新作「希望の国」。舞台は東日本大震災から数年後、架空の都市・長島県でマグニチュード8.3の地震が起き、それに続く原発事故によって、人生が一変させられる家族の姿を描いています。国内では出資者が集まらず、イギリス、台湾など外国から資金を得て完成にこぎ着けました。

9月に開催された第37回トロント国際映画祭では最優秀アジア映画賞を受賞しました。気仙沼市の被災した建物を劇場として使用し、10月5日から7日まで行われた無料上映の映画祭「三陸映画祭 in 気仙沼」ではクロージング作品に選ばれました。

福島原発事故から1年半。映画化は急ぎ過ぎではと思っていましたが、それは間違いでした。心の深いところに刺ってくる作品です。原発事故にほんろうされる人々に焦点を当て、低い視点から描いています。そして映画化を急いだ監督の危機感も伝わってきます。「希望の国」という題名は、皮肉ではなく絶望に満ちた祈りです。

夏八木勲(なつやぎ・いさお)、大谷直子が演じる老夫婦が、この作品に深みを与えています。夏八木勲の存在感あふれる演技も見応えがありますが、認知症の妻を演じた大谷直子がとにかく素晴らしいです。「家に帰りましょう」という言葉の響きにしびれました。

園監督らしい過激な描写はありませんが、原発事故が、突き抜けるような過激さを持っているので、冷静な表現によって、かえってそのことが際立ちます。「原発の問題にもだんだん慣れてしまう。この映画を、慣れを揺さぶるような存在にしたかった」と監督は、映画化の意味を語っています。

園子監督は、「今、絶対に知っておいてほしいことだけを映画にしました。ぜひ本作を映画館で観ていただきたい。『原発映画ヒット!』となれば、今進行中の社会問題を批判する映画を撮ってもいいんだ、となる。そうすると、日本映画の改革もできるんです」と話しています。

園監督は、10月17日に亡くなった若松孝二監督と親交がありました。「惜しい人を亡くした。最後の闘う映画監督。社会にたてついて批判して、一生懸命闘った監督というのは、日本では若松さんひとりだった。若松監督は、次回作は東電を題材にした原発の映画を作る予定だった。僕の映画を観て、『おまえこんなんじゃ甘いぞ。オレは東電を叩きのめす』と言うんじゃないかな」と早すぎる死を惜しみました。

園監督の次回作『地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?』は、初のアクション映画。15年以上前に監督自身が書いた脚本を発掘して加筆し、実現しました。アクションのほか、コメディーの要素、バイオレンス描写も含まれているらしいです。2013年3月公開予定。

■『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は、「踊る大捜査線」シリーズの4作目。完結編です。このシリーズのオープニングはかっこいいですが、今回はFINALということで、とくに力が入っています。
ただし、本編は、納得いきませんでした。事件の展開に比べ動機が弱過ぎます。最後のすみれの行動も、ギャグになっています。3よりは面白かったですが、FINAL的な盛り上がりに欠けた結末でした。1には、つながっていましたけれど。

本広克行(もとひろ かつゆき)監督の「踊る大捜査線」シリーズは、笑いとシリアスさのバランス感覚の良かったです。日本の刑事ものにありがちな重たさがなく、エリートと現場の警官との対立という構図はアメリカの警察ものに近い感じがしていました。

1998年公開の「1」では、サイコパス役で小泉今日子が登場したのが嬉しかったです。『羊たちの沈黙』をまねた展開は面白いのですが、『羊たちの沈黙」』ではFBI訓練生の深層心理がレクター博士によって暴かれていくというスリルがありました。『踊る大捜査線』は犯罪者と刑事が明確に区別され、関係が固定化している点が不満でした。

 5年後に公開された「2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」は、面白い作品にするために、強引に物語を転がしていく手法が、やや気になりました。肝心の犯人たちの計画自体が弱すぎて、本当の面白さには手が届いていません。

2010年公開の「3 ヤツらを解放せよ!」は、駄作でした。物語に日本の時代背景を盛り込んでいますが、官僚と現場の対立、愚直な刑事魂、インターネットのマイナスイメージなど基本姿勢はとても古風です。ギャグも空回りしていました。小泉今日子だけが、凄みを放っていました。

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