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2012.07.08

■アニメ「グスコーブドリの伝記」。とても丁寧につくられていますが、心にしみてきません

7月7日に劇場公開されたアニメ「グスコーブドリの伝記」は、2008年3月開催の東京国際アニメフェアで制作が公表。名作「銀河鉄道の夜」の制作チーム、杉井ギサブロー監督ということで、期待しました。
私は、「銀河鉄道の夜」が大好きです。映画評サイト「千夜千幕」で、最初に紹介しています。
■千夜千幕0001「銀河鉄道の夜」
http://cybar.cocolog-nifty.com/senmaku/2004/09/0001.html

アニメ「グスコーブドリの伝記」は、当初2009年春完成予定でしたが、完成が延び延びになり、2010年9月に制作会社グループ・タックが破産手続きを開始。完成は不可能になりました。しかし、文化庁の支援を受け、手塚プロダクションが制作する形で制作が再スタートしました。

手塚プロダクションということで嫌な予感がしましたが、杉井ギサブロー監督なので、「銀河鉄道の夜」のような見事な宮沢賢治の世界を見せてくれるだろうと公開を心待ちにしていました。見終わって、とても残念な気持ちになりました。過大な期待をしていたからではありません。

作画も音楽も、とても丁寧です。しかし、映像に起伏が乏しく、各場面の作画がちくはぐで、ストーリーも空回りしています。心にしみ込んできません。最初は原作通りに進めながら、不可解な異界を導入し、宮沢賢治の透明感を損ねてしまいました。

原作の時代そのままに原作を映像化するか、現代的に大胆に改編するか。アニメ「グスコーブドリの伝記」は、とても中途半端な形でまとめられています。とても大切なラストシーンを変えてしまったことも理解に苦しみます。犠牲死という重要なテーマをあいまいにすべきではありません。

宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」は、実体験が色濃く反映した多面的な作品です。イーハトーブ火山局の描写の先駆性は驚くべきものがありますが、犠牲死の美化という批判も受けています。一見アニメ化に向いているようですが、実はアニメで表現することが難しい作品だと思います。

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