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2012.05.11

■映画「別離」、激変するイランだからこそ生まれた緊張感あふれる傑作です

2011年のイラン映画「別離」。物語の巧みさと映像センスの良さが光りました。第61回ベルリン国際映画祭の金熊賞と、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞を受賞。史上初の快挙でした。第84回アカデミー賞ではイラン代表作品として外国語映画賞を受賞しています。

イラン映画界の多くの著名人が、「別離」の第69回ゴールデングローブ賞の外国語映画賞受賞を評価する一方、保守系各紙はこのニュースを完全に黙殺しました。ファルハーディ監督は、製作途中でイスラム文化指導省から一時撮影許可が取り消されました。

イラン映画「別離」は、テヘランで暮らしている中産階級の家族と周囲の人たちが描かれます。母親のシミンは夫と娘とともに出国を希望。父親ナデルはアルツハイマー型認知症を患う父のを心配し、国に留まります。11歳の娘テルメーは、両親の思いに引き裂かれます。

イラン映画「別離」は、ナデルは父の世話のために妊娠していたラジエーを家政婦として雇ったことで、思わぬ事態に発展していきます。介護の難しさと、さまざまな価値観の違いが浮き彫りになります。ストーリーは、謎をはらみながらスリリングに進みます。

イランでも介護問題は深刻です。イランでは老人介護の施設が非常に少なく、介護は家族の役割で、施設に入れられる老人は不幸という社会通念が強いと言われています。イスラムの教えで男女隔離が厳格な点も介護をさらに難しくしています。映画は鋭く問題を指摘しています。

アスガル・ファルハーディー監督は、脚本を個人的な体験をもとに書いていますが、イランの格差、価値観の多様さ、誠実さの問題など、普遍的なテーマをあぶり出していきます。激変するイランだからこそ生まれた緊張感あふれる傑作です。とても重要な作品です。

母親シミン役のレイラ・ハタミ、父親ナデル役のペイマン・モアディの熱演は認めますが、さらに素晴らしかったのが11歳の娘テルメーを演じたサリナ・ファルハーディーの繊細さです。思春期の少女のもろさと強さを見事に表現していました。ラストシーンは胸に迫ります。

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