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2012.03.04

★2012年2月映画評シネマキックス版

■「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」
 劇場版「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」は、三浦建太郎原作の漫画『ベルセルク』すべてを映像化する“ベルセルク・サーガプロジェクト“第1弾です。コミックの4巻から6巻の途中までを、とても丁寧に描いています。重厚にして軽やか、大胆にして繊細。作画的な統一性に難がある場面もありますが、全体的には作品の雰囲気を良く表現しています。

 ガッツのバズーソ戦から始め、グリフィスとの出会いにつなげる導入は正解です。ただ、細かな原作改変については、意見が分かれるでしょう。戦場での一騎打ち、有名なバズーソ戦の後、平沢進の主題曲 「Aria」とともにオープニングタイトルが流れます。これが、なかなかのセンス。一気に「ベルセルク」の世界に引き込みます。 鷺巣詩郎のサントラも壮大でスケール感を増しています。

 映像表現の妥協のなさは、予想以上でした。戦争シーンでは、血なまぐさい表現が続きます。不死のゾッドとの戦闘シーンは、一番見応えがありました。容赦ない残酷な場面と、自然の穏やかな描写は、対照的です。作画の丁寧さが印象的です。グリフィスの美しさ、優雅さ、聡明さ、無邪気さが、とてもよく描かれていました。キャスカも好印象。ガッツの作画は、少し不安定な気がしました。
6月23日公開の『 ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』が待ちどおしいです。

■「ALWAYS 三丁目の夕日'64」
「ALWAYS 三丁目の夕日'64」を2Dで観ました。いかにも3D向きの構図が時折ありましたが、2Dで十分楽しめました。とても良くできた脚本で、非常にバランスの良い展開。泣かせる場面を効果的に散りばめています。ただ、私は1、2作ほどは大泣きしませんでした。

第1作「ALWAYS 三丁目の夕日」が公開された2005年は、まだ市場原理主義がもてはやされていましたが、それを見事に相対化していました。 かといって1958年当時を過度に美化するわけでもなく、貧しさなど負の側面も描いていました。ベテラン俳優たちの熱演のほか子役たちに泣かされました。

第2作「ALWAYS 続・三丁目の夕日」は、2007年公開。冒頭で突然CGのゴジラが登場し、ゴジラファンの私はそれだけでノックアウトされました。完成後の東京タワー、東京駅、羽田空港、日本橋、DC-6B、特急こだまが、CGで再現されていました。何度か涙が出ました。

第3作「ALWAYS 三丁目の夕日'64」は、東日本大震災後、人と人のつながりが見直すされている現在に、みごとにマッチした時期に公開されました。大泣きすると周りに言われていたので、身構えていたのかもしれませんが、先の読める展開で、大泣きせず、ウルウルするくらいでした。

当時の負の側面が描かれず、前向きな雰囲気、温かな思いやりが強調されていたので、気持ちは良かったものの、少し物足りなさが残りました。2Dでも感動するような当時を再現したCGが観たかったです。そして1、2作で弾けていた子役たちが、活躍しなかったのも、残念でした。

原作コミック「夕焼けの詩」は、一貫したストーリーは無い、時間を自由に行き来する一話完結型の作品です。実写映画化では、一貫したストーリー展開になっています。私は、原作の自在さを生かしたオムニバス形式の映画化を希望します。そして毎年劇場公開してほしいです。

■「ミラノ、愛に生きる」
 プロデュースも担ったティルダ・スウィントンがルカ・グァダニーノ監督と11年にわたって企画を練り続け、全編イタリア語で主演しています。一見古めかしく見えるこの作品、すごいくせ者なんです。その魅力は、一筋縄では味わいきれません。舞台も物語も古くさいです。雪のミラノで開かれる晩餐会から、静かに始まります。繊維業で成功を収めたレッキ一族の後継者タンクレディと結婚したロシア人のエンマは、息子の友人でシェフのアントニオと出会い、激しい恋に落ちます。この確信犯的な唐突感。
 フィルムの質感、ストーリー展開のテンポ、おおげさなBGMの使い方、まさに1970年代のイタリア映画のパロディです。イタリア・ミラノといえば、ルキノ・ヴィスコンティ。ビスコンティを彷彿とさせる風格のある映像を撮るかと思えば、わざと稚拙に見える演出を選んだりします。

 ティルダ・スウィントンが、見事に着こなす様々な衣装が眼を引きます。主人公の内面を鮮明に映し出します。ファッションブランド「ジル・サンダー」のラフ・シモンズと組ました。そして、アカデミー賞衣装デザイン賞候補にもなりました。

 ティルダ・スウィントンとは、デレク・ジャーマン監督の映像詩「ラスト・オブ・イングランド」(1987年)で出会いました。大英帝国の終焉をテーマに暗く破壊的なイメージが幾重にも交錯します。映画というよりは映像アート。そこに登場するティルダ・スウィントンの硬質な美しさに驚きました。
 そして、スウィントンはサリー・ポッター監督「オルランド」(1992年)に主演します。オルランドの肉体は、深い眠りの後に男性から女性に代わります。スウィントンは、その中性的な魅力を開花させていました。「ミラノ、愛に生きる」は、「オルランド」以来のスウィントン主演作品です。

 「ミラノ、愛に生きる」に登場する料理は、美しく、そして重要な役割を果たします。主人公のエンマがエビ料理を食べて官能を取り戻すシーンは必見です。料理を手がけたのはミラノ料理界の奇才カルロ・クラッコです。

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