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2012.02.01

★「エンディングノート」、お勧めです。2012年1月の映画評です

■「エンディングノート」
砂田麻美監督。2012年最初に観た劇場公開作品でしたが、いきなり最高水準の作品に出会いました。新しいドキュメンタリー映画の地平を切り開いた感じです。いや、計算だけではできなかった、奇跡的な作品だと思います。

2009年、東京。熱血営業マンとして高度経済成長期に会社を支え駆け抜けた「段取り」が得意なサラリーマンは、67歳で40年以上勤めた会社を退職、第二の人生を歩み始めた矢先、毎年受けていた健康診断でガンが発見されます。すでに末期で、彼が最後のプロジェクトとしたのは「自分の死の段取り」エンディングノートの作成でした。

「エンディングノート」は、膨大な映像記録から“家族の生と死”という深刻なテーマを軽快なタッチで描きます。その編集力は、初監督作品とは思えません。
 もうすぐ死が迫っていることが分かっていても、家族のユーモアあふれる会話に、思わず笑ってしまう不思議な映画です。
何か、驚くような真実が明らかになるわけではありません。普通の人が、家族に見守られて普通に死んでいく記録。それが絶妙な距離感を持った的確な映像によって、心揺さぶられる傑作になりました。

■映画「ヒミズ」(園子温監督)
 古谷実(ふるや・みのる)のコミックを原作にしながら、設定を東日本大震災後に変え、結末も変更しています。その試みは成功したとは言えません。大震災のがれきのシーンが延々と続きますが、そのリアリティにストーリーが負けています。不必要な登場人物が多く、物語の展開もしっくりときません。原作は日常の閉塞感が基本ですが、今の日本は非常時が日常化しています。日本が、原作とは、逆の状況になったので、最初から無理があります。

 出演した染谷将太(そめたに・しょうた)と二階堂ふみ(にかいどう・ふみ)は、第68回ヴェネツィア国際映画祭で、新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しましたが、演技のレベルの高さへの評価よりも震災後の日本への応援的な要素が濃そうです。映画を観て、そう感じました。

園子温監督は映画「ヒミズ」の中で、繰り返し原発事故について触れていましたが、福島第一原発事故をテーマにした作品を企画中です。ただ「政治的な映画は作りたくなく、反核などのメッセージを入れたくはない。どういう風に撮るかはこれからの課題」と話しています。

このところ、矢継ぎ早に質の高い大作を制作してきた園子温監督、さすがに粗さが目立ってきたと思います。

■「マーガレットと素敵な何か」。
監督、脚本は「世界でいちばん不運で幸せな私」のヤン・サミュエルです。
久しぶりのソフィー・マルソー。45歳になりますが、なかなか素敵なキャリアウーマンを演じています。著名なる女性たちのポートレートを観て、今日は“ココ・シャネル”明日は“エリザベス・テイラー”次の日は“マリア・カラス”と、パワフルな女性たちからエネルギーをもらって頑張る姿が、とてもけなげです。
しかし、7歳の自分から届いた手紙をきっかけに、現在の自分のあり方を問い返していきます。ソフィー・マルソーのさまざまなコスプレが観られますよ。楽しかったです。

■「リアル・スチール」
スティーブン・スピルバーグとロバート・ゼメキスが製作総指揮を務めています。
普通は、この手の映画は見ないのですが、だまされたと思って、観賞しました。予告編にだまされました、とても良かったです。
 人間に代わり高性能のロボットがボクシングをする時代。元ボクサーの父チャーリーと、母を亡くした息子マックスは、旧式のロボットATOMと出会い、父子の絆を取り戻していきます。
 マックス役のダコタ・ゴヨが印象的。スピルバーグがオーディションを繰り返し粘りに粘って見いだした子役です。
 父と子がATOMを操作してロボット・ボクシングを勝ち進んでいくというお決まりのストーリーですが、クライマックスの盛り上げ方は、実に見事です。細かなユーモアも良く生かされています。
 単純に見える物語に、深みのあるファンタジックな味付けをしているのもミソ。ATOMは、もちろん鉄腕アトムへのオマージュです。そのほかにも、日本のロボットへの敬愛が感じられました。

■「宇宙人ポール」
イギリス人のSF作家クライヴとイラストレーターのグレアムは、アメリカ・サンディエゴで開かれたマニアの祭典・コミコンに参加。その後2人は長年の夢だったアメリカのUFOスポット巡りをしますが、“エリア51”付近で、宇宙人ポールに接近遭遇。ポールを乗せた珍道中が始まります。

下ネタ満載のコメディ。長い地球生活で、すっかりアメリカナイズされた宇宙人ポールのキャラクターが最高に笑えます。そして、ハートフルにまとめています。物語は、単純なようで屈折した構造です。アメリカのサブカルチャーを愛しつつ、アメリカへの厳しい批判が貫かれています。

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