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2011.12.03

■2011年11月の映画評・シネマキックス版

★「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」
ルパート・ワイアット監督。新しいシリーズの始まりと位置づけられています。薬物研究者のウィル・ロッドマンが、父のアルツハイマー型認知症を治そうと開発した新薬が、猿の知性を驚異的に発達させるというストーリーです。父と子の感動的な物語と知性を発達させた猿たちが人間を憎む過程が描かれていきます。CGの猿たちの動きや表情が、とても繊細で、CGとは思えなくなるほどです。
 知性を持ったシーザーが、自分は何者かと悩み、最初は人間の側にいようとしますが、やがて猿たちの側にまわり、人間と闘います。まだ「猿の惑星」らしさは乏しいですが、次回作に期待しましょう。父親役のジョン・リスゴーの演技が素晴らしかったです。「スラムドッグ$ミリオネア」のヒロインとして注目されたフリーダ・ピントがウィルの恋人役で登場します。

★「ミッション 8ミニッツ」
ダンカン・ジョーンズ監督。 イマイチの邦題です。「ソース・コード」という原題の方が良かったと思います。
シカゴで乗客全員が死亡する列車爆破事件が発生し、犯人捜索のためのミッションに、米軍兵士のスティーブンスが選ばれます。事故犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込み、犯人を見つけ出すという作戦で、何度も死を体験しながら犯人を見つけますが、同時に爆破自体を防がない作戦への疑問も抱き始めます。
 かなり強引な設定ですが、少し違う同じ場面の繰り返しは、映像的には面白かったです。ある意味でパラレルワールドものといえます。なかなかスリリングな展開ですが、多くの違った世界があるときに、ひとつの世界だけのハッピーエンドは意味がないというパラレルワールドの難問を克服していません。これは、すごく難しいことなのですが。

★「インモータルズ 神々の戦い」
ターセム監督の「インモータルズ 神々の戦い」は、ギリシャ神話を題材に描くアクションスペクタクル。壮大で眼もくらむような映像美の世界です。とりわけ、ラスト、神々の空中戦の美しさは比類がありません。
 ただ、前作「落下の王国」のような映像美ではなく、「300」のような残酷美がまさっていました。予告編から、想像する映画とはかなり違った印象を持つはずです。だから、すべての人にお勧めはできません。
 また、映像のキレはいいのですが、ストーリーのキレは、イマイチです。
 ここまで吹っ切れた残酷表現ができるのなら、ターセム監督には、コミック「GANTZ」のシャープな切断美を実写化してもらいたいですね。
 ここでも、予言者で主人公の恋人役としてフリーダ・ピントが出演しています。インド出身の監督としては、当然の抜擢でしょう。

★「恋の罪」
 園子温(その・しおん)監督の新作「恋の罪」は、1990年代、東京都渋谷区円山町ラブホテル街で起きた殺人事件からインスパイアされて監督が脚本を手掛けた作品です。殺人課の女刑事、大学の助教授、人気小説家の妻の生き様が交錯します。
 冒頭のショッキングな遺体の場面にはたじろぎましたが、全体としては前作「冷たい熱帯魚」ほどのグロテスクさはありません。そして、ラストにはユーモアさえ漂います。
 壮絶な女性映画です。普通なら水野美紀(みずの みき)の熱演が高く評価されるでしょうが、冨樫真(とがし まこと)の怪演の前ではかすんでしまいました。そして神楽坂恵(かぐらざか めぐみ)はあまりにも素晴らしくて園子温監督と婚約してしまいました。3人のほかに大方斐紗子(おおかた・ひさこ)の貫禄の演技にも驚かされます。
女性の苛烈な欲望を描いていますが、カフカの「城」が象徴的に使われ、詩人・田村隆一の「帰途」が繰り返し引用されます。そして、マーラーの交響曲第5番が映像を荘厳に染め上げます。女性たちの屈折、トラウマをテーマにしているので、ベルイマンの作品を思い出しました。 今年「冷たい熱帯魚」と「恋の罪」が劇場公開されました。来年1月には次回作「ヒミズ」が公開されます。なんというハイペースでしょう。
★「ステキな金縛り」
失敗続きの弁護士エミが、殺人事件の被告人のアリバイを唯一証明するため落ち武者の幽霊を法廷に引っ張り出して奮闘するドタバタコメディです。幽霊が見える人と見えない人がいるという点がミソです。
これまで観た三谷幸喜(みたに・こうき)監督作品で、一番楽しみました。三谷監督と私は、これまであまり相性が良くありませんでした。今回も旅館の主人の現れ方や検事の奇術は、作為的で好きになれませんが、その他は素直に笑いました。
ラストのギャグも好きです。エンドロールの心霊写真も笑えるので、お見逃しなく。
幽霊役の西田敏行をはじめ、芸達者ぞろいの配役で盛り上がりましたが、なかでも検事役中井貴一(なかいきいち)のとぼけた味が光りました。

★「大鹿村騒動記」
シアターキノで、追悼上映「原田芳雄アゲイン1」が、11月19日から25日までありました。
 原田芳雄自身が発案し、キャスティングをそろえた「大鹿村騒動記」が、原田芳雄の遺作として、あまりにもでき過ぎていることについては、多くを語りませんが、本当によくできた作品でした。
300年以上伝統行事の大鹿歌舞伎をまもりつづけてきた大鹿村を舞台にしています。農村の若者離れ、外国人就労者、公共事業誘致、認知症、性同一性障害、戦争の傷跡など、深刻な問題も盛り込んでいますが、映画は軽妙な喜劇に仕上がっています。名優たちの掛け合いに笑い続けました。少しひいた位置にいる父親役の三國連太郎は、素晴らしく枯れた演技をみせてくれました。
 面白くて、奥行きがあって、ラストはハッピーエンドにせず、とぼけて突き抜けています。原田芳雄の遺作というだけでなく、作品としても傑出しています。


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コメント

Do you have more great aritlces like this one?

投稿: Chacidy | 2011.12.08 19:31

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