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2011.11.19

園子温監督の「恋の罪」は壮絶な女性映画です

 園子温監督の新作「恋の罪」は、1990年代、東京都渋谷区円山町ラブホテル街で起きた殺人事件からインスパイアされて監督が脚本を手掛けた作品。殺人課の女刑事、大学の助教授、人気小説家の妻の生き様が交錯します。
 冒頭のショッキングな場面にはたじろぎましたが、前作「冷たい熱帯魚」ほどのグロテスクさ衝はありません。そして、ラストにはユーモアさえ漂います。
 壮絶な女性映画です。普通なら水野美紀の熱演が高く評価されるでしょうが、冨樫真の怪演の前ではかすんでしまいました。そして神楽坂恵はあまりにも素晴らしくて園子温監督と婚約してしまいました。3人のほかに大方斐紗子の貫禄の演技にも驚かされます。
 女性の苛烈な欲望を描いていますが、カフカの「城」が象徴的に使われ、詩人・田村隆一の「帰途」が繰り返し引用されます。そして、マーラーの交響曲第5番が映像を荘厳に染め上げます。女性たちの屈折、トラウマをテーマにしているので、ベルイマンの作品を思い出しました。
 今年「冷たい熱帯魚」「恋の罪」が公開。来年1月には次回作「ヒミズ」が公開されます。なんというハイペースでしょう。

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2011.11.09

2011年10月映画評シネマキックス版

2011年10月映画評シネマキックス版
★「人生、ここにあり!」
ジュリオ・マンフレドニア監督。イタリアで観客動員40万人を超え、54週ロングランを記録し、イタリアのゴールデングローブ賞を受賞した作品です。イタリアでは精神病院廃絶法であるパザリア法(1978年制定)により、精神病院の患者たちが一般社会で暮らせるようにしようという試みが行われました。そのときの実話をもとにした映画です。病院を出た患者たちと労働組合員が一体となって仕事を見つけ。困難を乗り越えていきます。
精神障害というデリケートなテーマを扱いながら、ユーモアあふれる人間賛歌になっています。個性的な登場人物がぶつかり合い、励まし合う。患者たちが自分たちの力で自信を取り戻していきます。
けして美化するのではなく、奇麗ごとではない人間ドラマになっています。  
 最後には、患者を薬付けにしていた医者さえも、謙虚に反省していく点が素晴らしいです。本当の意味で前向きになれる、元気にさせられる映画です。映画を観ることの幸せを実感しました。

★「ミケランジェロの暗号」
ヴォルフガング・ムルンベルガー監督。ナチス・ドイツを扱った、お腹にズシリとくる重たいコメディです。この作品も過酷な状況を描きながら、ユーモアに満ちた作品です。
 第二次世界大戦のさなかにナチスと命賭けの駆け引きをするユダヤ人の物語です。受け身のユダヤ人ではなく、ナチスを手玉にとり、機転で困難を乗り越えていくユダヤ人を描いている点がユニークです。
ユダヤ人画商・カウフマン家は、国宝級のミケランジェロの絵を密かに所有していました。しかし、そのことをナチスに密告されます。一家は絵を奪われ収容所へと送られます。しかし、本物の絵は隠されていました。ナチスは絵を取引の材料にしてイタリアと優位な条約を結ぼうとしますが、絵がにせものと分かり窮地に陥ります。そこから、とてもスリリングなサスペンスが展開されていきます。そして、最後に爽快感が残ります。見事な結末です。
 ただ、邦題は、誤解を与えます。「ダビンチ・コード」のように絵に謎があるのではなく、隠し場所に謎があります。

★「カーズ2」
擬人化された自動車たちが活躍するピクサーのフルCGアニメ。天才レーサーのマックィーンとおんぼろレッカー車のメーターが、国際的な陰謀に巻き込まれます。矢継ぎ早のアクションシーン、小気味良いギャグと、今回も飽きさせません。日本が舞台になっているのも、感激です。メーターが、わさびをアイスクリームだと思って大量に食べるシーンは笑えます。町並みなどの風景のリアルさには、CGの進歩を感じます。
ただ結末は月並みで、前作のような深い感動を運んでくれは、しませんでした。
恒例の同時上映短編で、「トイストーリー3」のその後を描いた短編に出会えるとは思いませんでした。それは嬉しかったのですが、独立した短編作品に出会えたほうが、もっと嬉しかったです。いつも、感心する出来映えだったので。


★「アンフェア the answer」
最初から最後まで佐藤嗣麻子監督の映像美に酔いました。スピーディで、きれが良くて、細部までこだわりが感じられます。監督の熱意が伝わってきます。紋別が舞台なのも嬉しいです。誰が敵か分からない展開で、どんでん返しの連続も快感です。突っ込みどころ満載ですが、それ以上にパワフルなので気になりません。
篠原涼子(しのはら・りょうこ)は、俳優としても魅力的で存在感抜群です。佐藤監督は、彼女の凛とした美しい表情を切り取っています。
謎解きを含んだエンドロールの見せ方もかっこ良くてしびれます。
パンフレットを読むと、俳優たちが「佐藤監督が一番アンフェア、佐藤監督は変態」と親しみを込めて話しているのに笑いました。続編を期待しましょう。

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札幌国際短編映画祭 SAPPOROショートフェスト2011報告

札幌国際短編映画祭 SAPPOROショートフェスト2011報告

★インターナショナル部門
★I―Aプログラム=なかなか粒ぞろいでしたが、「アー・ユー・リービング?」のスタイリッシュさが印象的でした。「ジョゼフィーヌという名前の女の子」は、「アメリ」を連想させる可愛いフランス映画です。

★I―Bプログラム=さまざまな人間模様を描いています。韓国の学生作品「ブロークン・ナイト」は、よくできた脚本で結構怖かったです。みごと、最優秀監督賞と作品部門のグランプリを獲得しました。「エッセンス」はもう少しで傑作になったのに残念でした。実写よりもアニメ「ラ・デタント」のスピード感が心地よかったです。

★I―Cプログラム=「シュガー」のスピーディでブラックなユーモアに笑って、アニメ「パス・オブ・ヘイト」のめくるめく映像表現に痺れるました。そしてSF「惑星アルファ46」の不思議なリアル感と皮肉なユーモアにニヤリとしました。映画監督の苦悩を描いた「カタルシス」は、映像は面白いのですが、結末がありきたりでした。

★I―Dプログラム=結構重い作品が多かったです。しかも、結末が予想通りの作品ばかりでした。その中でディビッド・オレイリー監督の過激な実験CGアニメ「エクスターナル・ワールド」の、突き抜けた表現が独創的でした。

★I―Eプログラム=重力以上の世界を描いたアニメ「ルビカ」の小気味良い表現が好きです。鳥たちの糞を肥料として利用するために働くペルーの男たちを描いた「グアナペ・サー島の男達」は、見事なドキュメンタリーでした。

★I―Fプログラム=「重力と僕」は、他の人たちと違う方向に重力が働く男を描いています。こちらの重力以上。細野晴臣(はるおみ)審査委員が、授賞式のスピーチで、何かの予兆かと心配していましたけれど。なかなか粋な展開です。エンドロールが右から流れてきて笑いました。「テロの時代」は、アイデアは面白いですが笑えませんでした。


★ナショナルプログラム
★N―Aプログラム=まず、アニメ「レインタウン」の端正な絵が印象に残りました。「ナリタ・フィールド・トリップ」は、三里塚問題を取り上げた作品。 三里塚映画 に出会えるとは思いませんでした。学校のいじめを鋭く描いた「フォーギブ」は、全作品の中で一番心に刺さりました。私的には、この作品がグランプリです。
「美雪の風鈴」は、不発弾が登場するストーリー展開がやや作為過ぎでした。

★N―Bプログラム=心理実験「スクリプト」は、本当に見事な脚本です。幻想的なアニメ「土踏まずは夏を知らない」は、未完成ながら将来の可能性を感じさせました。


★フイルムメーカー部門
★F―Aプログラム=ハロルド・チャップマン監督に出会えて幸せでした。センスが合いました。スタイリッシュで幅のある映像表現は、魅力的でした。

 平林勇(ひらばやし・いさむ)監督の「ヘルムート」は再会ですが、やはり面白いです。急遽上映が決まった「663114」は、福島原発事故の影響を蝉の立場で描いた佳作です。題名は「戦後 66 年の 3 月 11 日に起こった4基の原子力発電の事故」を意味しています。
 ことしも札幌に来られた岩井俊二(いわい・しゅんじ)監督も、震災と福島原発事故のドキュメンタリー作品「friends after 3.11」を公開していますね。

★F―Bプログラム=和田淳(わだ・あつし)監督の不条理アニメ。不思議な世界に引き込まれ、思わず笑ってしまいます。「そういう眼鏡」「春のしくみ」が好きです。和田監督の作品は、続けて観ると面白さが増していきますね。
 ダスティン・フェネリ監督の作品は、不思議なな味わいとふくらみを持っています。結末の分かってしまう「Snow」よりも「エスキモー・キス」が好きです。フェネリ監督が、フイルムメーカー部門のグランプリを獲得しました。

★北海道セレクション=道内作品ですが、ほかのプログラムと比べても、遜色のない力作ぞろいでした。片岡翔監督「ゆきだるまとチョコレート」の柔らかな子供目線と演出力、島田英二監督「零下15度の手紙」の編集力と映像のリリシズムは、さすがです。

★キッズアニメーション=毎回、質の高いアニメがそろっています。こどもだけでなく、大人も十分に楽しめます。フンコロガシとハエのバトルを描いた「プネェテラとペロテロ」が痛快でした。そのほか、「アレキサンダー」の糸の質感、「へザルフェン」のスピード感が、良かったです。

★アジアンタイフーンプログラム=ことしは韓国特集。ミン・ヨングン監督「a Fever」の映画的な展開のうまさに、舌をまきました。軍隊のブラスバンドをコミカルに描いた「ブラスクインテット」も力作でした。韓国映画、勢いがありますね。


★アイルランドショート=本当に多彩でした。ケン・ワードロップ監督の温かさに癒され、シリアスな戦争映画「クロッシング・サルウィン」にふるえ、インド映画のパロディ「ムーア・ストリート・マサラ」に笑いました。

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