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2011.08.21

■「未来を生きる君たちへ」暴力と赦しという普遍的なテーマをリアルに

 スサンネ・ビア監督の「未来を生きる君たちへ」は、暴力と赦しという普遍的な問題を、紋切り型でなく、具体的に、そしてリアルに描いています。ひりひり感がすごいです。「アフター・ウェディング」のストーリーや人物造形は、やや人工的な感じがしましたが、「未来を生きる君たちへ」は、とても生々しいものでした。

  アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の最優秀外国語映画賞をダブル受賞しています。この作品は、子供の諍い、夫婦の諍い、デンマークとスウェーデンの諍い、アフリカの諍いが描かれ、そのらが連鎖して人々を苦しめます。心が揺さぶられます。


   「未来を生きる君たちへ」は、デンマーク映画。1980年代後半の「バベットの晩餐会」「ペレ」のテーマの深さに驚き、ラース・フォン・トリアー監督の辛辣さに感動しました。そして、スサンネ・ビア監督が登場します。生々しい人間表現と繊細な映像美。独特の感性を持つ監督です。


  「未来を生きる君たちへ」は、抑制された演技に込められた大人たちの屈折した思いが、激しく胸をうちますが、エリアスとクリスチャンという2人の少年の演技のリアルさも、この作品を支えています。ふたりは、演技経験が全くなかったというから驚きです。


  原題は「復讐」です。とてもストレート。映画の中で「復讐は復讐を生むだけ」と大人は子供に話します。しかし子供は、いじめの経験から「やり返さなかったら、いじめられ続ける」と大人の言葉を信じません。大人も偽善かもと感じています。北欧というと、穏やかなイメージで考えてしまいますが、深刻ないじめがあり、デンマーク人とスウェーデン人の仲が悪くて「スウェーデンに帰れ」などという言葉が出てくると、昨今の日本の雰囲気を思い、どきりとします。

 スサンネ・ビア監督は「ある愛の風景」でアフガニスタンの戦乱、「アフター・ウェディング」ではインドのスラムとデンマークをつなぎました。今回はアフリカの過酷な難民キャンプとデンマークがつながっています。監督は「複雑になってきている世界の一部なんだと感じることが大切」と話しています。

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2011.08.16

■「ジュリエットからの手紙」は、本当に愛すべき映画です

 「ジュリエットからの手紙」は、本当に愛すべき映画です。さまざまなキスシーンを集めたオープニングタイトルがとても可愛らしく楽しいです。ラストへの伏線にもなっています。
 「マンマ・ミーア!」「クロエ」のアマンダ・セイフライド主演の恋愛ドラマ。婚約者役は、なんとガエル・ガルシア・ベルナルです。まず、ふたりのぎくしゃく加減が見物です。シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台となったイタリア・ベローナを訪れたソフィーは、ジュリエットにアドバイスを求める手紙への返信ボランティアのグループに出会います。そこで、ソフィーは偶然50年前に書かれた手紙を見つけ、返信します。すると手紙を書いたクレアとその孫のチャーリーが現れ、かつての恋人探しの旅が始まります。ストーリーは単純ですが、会話がウィットに富んでいます。可愛らしい作品。
 監督したゲイリー・ウィニックは、2011年2月27日に49歳の若さで死去しています。脳のがんが、全身に転移していたそうです。最初の手術のあと、この作品を撮影しました。とても希望に満ちた、チャーミングな作品を残してくれました。

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■「バビロンの陽光」貴重なイラク映画

「バビロンの陽光」は、バクダット出身のモハメド・アルダラジー監督によるイラク映画。イラクには映画館がなく、2003年以降3本しか映画が製作されていません。イランとは、大違いです。
 2003年、フセイン政権の崩壊から3週間後のイラク北部クルド人地区が舞台。戦地から戻らない父親を探して旅をする12歳の少年と祖母の姿を描きます。ふたりは、ヒッチハイクをしながらバスを乗り継ぎ、空中庭園で知られる古都バビロンを目指します。クルド語しか話せない祖母を、孫のアーメッドが片言のアラビア語で助けます。気のいいトラックの運転手、路上生活の少年、クルド人殺戮に加担して心に傷を負う元兵士らとの出会いがあり、辛い現実に直面します。
 イラクでは、過去40年間で行方不明者が150万人を超え、300もの集団墓地から数十万もの身元不明の遺体が見つかっています。祖母は疲労と絶望で死を迎え孫が一人残されます。ラストシーンでは、バビロンの「イシュタル門」が陽光に輝きます。
 映画産業がないので、出演している祖母や孫のアーメッドは、一般人です。恐ろしくリアルな演技をしています。悲惨なイラクの現状、クルド問題の難しさなどを描きつつ、ときにユーモアを交えながら巧みにまとめあげています。バビロンのシーンも、古代のシュメール文明を思い出そうというメッセージなのでしょう。

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■「ツリー・オブ・ライフ」は、大げさな自分史

「ツリー・オブ・ライフ」は、テレンス・マリック監督の大げさな自分史です。第64回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しました。ブラッド・ピット、ショーン・ペンが主演しています。難解な作品ではありません。自分を見つめ直すというシンプルな試みです。宇宙と自分。小さな家族の物語を、強引に宇宙史、生命史、人類史につなげていますが、残念ながら接ぎ木はうまくいっていません。
映像美が評価されていますが、それほど魅力的に思えませんでした。恐竜のCGも、独創的だとは思えません。よくある映像をつなぎ合わせているだけです。ネイチャードキュメンタリーの映像の方が、もっと迫力と感動があります。
スタンリーキューブリック監督の「2001年宇宙の旅」と比較する感想も多く見られますが、まったく違います。「2001年宇宙の旅」のイマジネーションは刺激的で先駆的でした。「ツリー・オブ・ライフ」の映像は、壮大ですが平凡です。

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■「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2」緊迫感があって、ハラハラしました

「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2」を、2Dで観ました。 映画は、妖精ドビーの埋葬シーンから始まります。「Part1」の最も感動的な場面を思い出し、一気に引き込まれました。この導入はうまかったです。前作が、筋を追うだけだったのに比べれば、緊迫感があって、ハラハラしました。ただ、戦闘シーンなどのスケール感は乏しかったですね。
最大の見せ場は、スネイプの驚くべき秘密です。涙なしには、見られません。そして、一番びっくりするのは、ヴォルデモートの魂を分けて収めた「分霊箱」の行方です。戦争、戦闘映画と言って良いくらいの内容ですが、人間ドラマもしっかりしています。特に、先生たちのユーモアと熱演、生徒たちのラブロマンスが印象的です。なかでも、ミネルバ・マクゴナガル先生、かっこ良かったです。ちょっとお茶目な面もみせます。
最後のハリーによる「ニワトコの杖」の処置は、原作と違いますね。あれには、かなり違和感があります。

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