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2011.07.24

■シャマラン監督原案の「デビル」は無駄はないが古くさい

「デビル」(2010年)は、M・ナイト・シャマランが書きためたアイデアを若手の監督が映画化する「ザ・ナイト・クロニクルズ」プロジェクトの第1弾です。監督はジョン・エリック・ドゥードル、兄弟のドリュー・ドゥードルが制作総指揮に当たり、脚本はブライアン・ネルソンが担当しています。

シャマラン監督は、ドラゴンボールのノリの「エアベンダー」が酷評され、第31回ゴールデンラズベリー賞で5部門を制覇、最低監督賞、最低脚本賞も受賞しました。「デビル」は、原案・制作だけ。14ページの原案を、起伏のある脚本に仕上げたブライアン・ネルソンが見事です。

上下反転した映像から始まるオープニングは、なかなかインパクトがあります。そして、5人の男女がエレベーターに閉じ込められて起こる惨劇。ドゥードル監督は、キレの良い編集と無駄のない映像で、80分の作品にまとめました。これくらいの長さの方が、緊張が持続します。

凝縮された展開で、観ている分には飽きさせません。ただ、緊密な展開かと言えば、いろいろと疑問が残ります。訳ありの人が犠牲になるのは分かりますが、無関係な人たちも犠牲になります。最後は、古くさい教訓めいたオチ。作品自体を小さくしてしまいました。

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2011.07.14

■「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」

映画「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」を観ました。。ナンネルは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの実姉マリア・アンナ・モーツァルトの愛称。彼女も、すばらしい才能を持っていましたが、女性であったためアマデウスの脇役にされました。作曲もしていましたが、楽譜は残っていません。

ルネ・フェレ監督は、大胆にも娘のマリー・フェレをナンネル役に起用、マリーの実の妹リザが親友ルイーズを演じています。監督・脚本・製作はルネ・フェレ、製作・編集は妻のファビエンヌ、助監督は息子のジュリアン。監督は「独立配給を目指せば、必然的に家族経営的になってしまう」と話しています。

家族経営的な製作ながら、「ナンネル・モーツァルト」は、実際に絢爛豪華なヴェルサイユ宮殿を使ってロケを行っています。本物の迫力は、やはり違います。18世紀の宮廷の雰囲気が、自然に広がっていきます。当時の衣装も、見事に再現されていました。大作に負けない出来です。

10歳のヴォルフガングを演じたダヴィッド・モローは、パリの国立地方音楽学院に在籍するバイオリニスト。テクニックを惜しみなく披露しています。普通は、いたずら好きの子どもですが、演奏し始めると、その才能が爆発します。この辺のキャスティングも評価したいです。

ナンネルは、自分の作曲した楽譜を焼却処分してしまいました。映画では、当時の様式、残された記録などを手がかりにオリジナル曲が作曲。音楽を担当したのは、マリー=ジャンヌ・セレロという女性作曲家です。ヴァイオリンコンチェルトなどが流れます。実に、見事な仕事です。

モーツァルトの姉ナンネルを描くという斬新なアイデアは評価したいです。しかし、資料が少なかったので、架空の物語を加え、言葉で説明しなければならない場面が多かったのが残念でした。傑作ではありませんし、うまい作品でもありませんが、私にとっては、とても嬉しい作品です。

天才モーツアルトでさえ、一時忘れられた存在だったことを思い出しました。ケッヘルがモーツアルトの作品目録をつくらなければ、モーツアルトはこれほど知られなかったでしょう。埋もれた、今も埋もれている才能について考えさせられます。

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2011.07.10

■「戦火のナージャ」戦争の複雑な実相が描かれています

 アカデミー賞外国語映画賞とカンヌ国際映画祭グランプリに輝いたニキータ・ミハルコフ監督の「太陽に灼かれて」の続編「戦火のナージャ」が、16年の月日をかけて完成しました。ロシア映画史上最大の製作費を投入した戦争大作。スターリン粛清の下、第2次大戦下での父と娘の生き様が描かれます。

「戦火のナージャ」を観て、感想を書こうとしましたが、さまざまな思いが交錯して、なかなか筆が進みませんでした。圧倒的な迫力に打ちのめされつつも、宗教的な描写には違和感が残りました。ただ、戦争の残酷さを正面から描きながら、その頂点に現れる不思議な滑稽さの表現に、震えるようなリアルさを感じました。

 目を背けたくなるような残酷さと、それを生み出す原因の愚かさ。そして、人間の醜さと滑稽さ。突き放したようでいて、いとおしくもあるカメラワークによって、ハリウッド映画では表現できない、戦争の複雑な実相が描かれていると思います。ロシア文学につながる質感を味わいました。

 父コトフをニキータ・ミハルコフ監督自身が演じ、娘ナージャを監督の実の娘ナージャ・ミハルコフが演じています。水辺で遊ぶシーンが印象的な「太陽に灼かれて」の可愛らしい女の子は、16年の月日で、たくましい女性になりました。3部作を締めくくる「要塞」の完成を待ちましょう。

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2011.07.03

■「クロエ」新しい表現に挑戦したアトム・エゴヤン監督

 「クロエ」は、アトム・エゴヤン監督の初のハリウッド映画。「アララトの聖母」「スウィート ヒアアフター」「秘密のかけら」など、極めて作家性の強い監督が、ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソンという名優を得て、新しい表現に挑戦しています。
 産婦人科医で、家庭にも恵まれた女性が夫の浮気を疑い、偶然知り合った若い娼婦クロエに夫を誘わせて、その反応を報告させる計画を思いきます。ドロドロの三角関係になるかと思いきや、予想を超えたストーリー展開。見事さに監督の術中にはまりました。
 言葉の魔術。老いに対する不安。妄想の広がり。さまざまな要素が絡み合いながら、複雑化していく人間関係を硬質なタッチで描きます。ちょっとした表情が、大きな意味を持ちます。さりげない、ラストシーンもお見逃しなく。
 「マンマ・ミーア!」でメリル・ストリープの娘役を演じたアマンダ・セイフライド。歌のうまさに驚きました。「マンマ・ミーア!」では、若さがはじけていましたが、クロエ役では、小悪魔的な魅力にあふれていて、驚きました。屈折した演技も魅せました。注目の女優です。

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