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2011.02.23

ゆうばり国際映画祭、いよいよ明日開幕です

ゆうばり国際映画祭に行くと、「おかえりなさい」と出迎えられます。幸せな気分になります。夕張は、映画を愛する人たちの故郷になっています。温かな人のつながりこそ、映画祭の最大の財産です。ソーシャルメディアを通じて、夕張の魅力がさらに広がっていくでしょう。

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2011.02.22

■「人生万歳!」、1970年代を思わせる軽妙なアレン映画の傑作

 ほとんど毎年作品を発表し続けてきたウディ・アレン監督・脚本の「人生万歳!」(2009年)は、アレン監督40作目の記念すべき新作。脚本は、アレンが1970年代半ばに書き下ろしたもの。30年の時を経て「アニー・ホール」時代の幻の脚本がよみがえった。こまかい設定や多くのリライトはあったが、基本は変わらず、1970年代を思わせるニューヨークを舞台にした都会的で軽妙な味わいのアレン映画が誕生した。声を出して何度も笑ったのは、久しぶり。懐かしいけれど、新鮮。
 毒舌家の主人公ボリス役は、人気コメディアンのラリー・デヴィッド。アレンとは似て非なる魅力を放つ。ヒロインの天真爛漫な家出娘メロディを演じているのは、マリリン・マンソンとの交際でも話題となったエヴァン・レイチェル・ウッド。彼女も魅力に溢れている。そのほかの登場人物も、みなキャラが立っていて魅力的。常識にしばられることなく、自分なりの生き方、自分なりのパートナーを見つけてハッピーエンドを迎える。立ち上がって、拍手を送りたくなるタイプの作品だ。

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2011.02.19

■映画「ヒア アフター」、不思議にしっとりとした結末

 映画「ヒア アフター」を観ました。クリント・イーストウッド監督とスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮。脚本は「クイーン」「フロスト×ニクソン」のピーター・モーガン。主演は「インビクタス/負けざる者たち」に続いてマット・デイモン。そして死後の世界をテーマした作品。かなり重たい作品になるのではと思っていました。しかし、想像していた質感とは、かなり違っていました。
 最初に、スケールの大きな津波のシーンが登場します。CGの見事さだけではなく、津波の恐ろしさが伝わってくる巧みなカメラワークでした。この場面は秀抜です。ストーリーは、その後は一転して落ち着いた展開になります。
 共演は、ベルギー出身の女優セシル・ドゥ・フランス。津波に巻き込まれる女性を熱演しています。どこかで見たなと思っていたら、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2004で上映した「スパニッシュ・アパートメント」に出演していました。この作品で、2003年セザール賞の新人女優賞を受賞しています。
 イーストウッド監督は、見終わって、ずしりとした映画的感動が残るような手の込んだ作品を得意としてきました。「インビクタス/負けざる者たち」のストレートなラストも意外でしたが、映画「ヒア アフター」の、つつましく、不思議にしっとりとした結末は、何でしょうか。イーストウッド監督には、驚かされ、続けています。

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2011.02.14

■2011年1月の映画評

■「ソーシャル・ネットワーク」
今話題の「Facebook」の始まりを描いた作品です。ゴールデン・グローブ賞で最多の4冠を受賞しています。成功美談でも、生々しい人間ドラマでもなく、情熱に満ちた不器用な青年たちの姿を描いています。さまざまな人たちがぶつかり合いながら、歴史を作っていく感触が伝わってきます。きれいごとではない野心や感情のぶつかり合い、人間関係がハイスピードで描かれています。

世界最大のソーシャルネットワーク「Facebook」の創設者マーク・ザッカーバーグの半生をドラマチックに描くデビッド・フィンチャー監督の作品と聞けば、派手なぶつかり合いを想像しますが、関係者たちの対立は多面的な視点から抑制的に描かれます。そして小さな謎を残したまま終わります。

映画は、マークに対するかつての仲間や関係者たちの訴訟と証言を中心にしています。成功報酬をめぐる薄汚い対立のように見えますが、その証言を通じて、ひたむきな青年たちの生き様が浮かび上がってきます。欠点を持ちながらも、前向きな姿が印象に残ります。

音楽ファイル共有サイト「ナップスター」創設者のショーン・パーカーが、野望に満ちた悪役として登場します。しかし、彼のグローバルな長期的な視点がなければ、「Facebook」を今の世界的な規模にすることはできなかったと思います。この点は重要です。

別れた彼女にFacebookで「友達申請」して返事を待つラストシーン。孤独感がひしひしと伝わってきます。世界中の人たちをつなぐソーシャルメディアを作り上げた人が、孤独であるという皮肉。でも、そのエネルギー、情熱が確実に歴史を切り開いていきます。Facebookをどう活かしていくか。その先を進めるのは、私たち一人一人だと思います。

映画の後半、「Facebook」の登録者が100万人を超えて盛大なパーティが開かれます。喜び合うスタッフ。映画では5億人の登録者がいると説明していますが、今では世界で6億人以上の登録者がいます。驚くべきことです。日本でも、無視できない存在になるでしょう。

■「キック・アス」
従来のアメコミ映画のぬるさをぬぐい去った、軽快なコメディと容赦のないバイオレンス表現が混ざりあった傑作です。全米で大ヒットしたにもかかわらず、過激な表現に腰が引けて日本公開がなかなか決まりませんでした。日本公開されて嬉しいです。日本でもヒットしました。
 マシュー・ヴォーン監督は、まずソニーと契約して製作費を捻出しようとしましたが、バイオレンス描写を弱めるよう要求をされたため断念。他のスタジオも興味を示しましたが、キャラクター設定の変更を求められたため、結局ヴォーン監督が自分で製作費を調達して完成しました。つまり自主映画。じつに天晴です!!。

題名の「キック・アス」は、コミックのスーパーヒーローに憧れるギークがネットで買ったコスプレ・スーツを着て活動し、見物人から撮影されたときに名乗った名前です。その動画はYouTubeにアップされて話題になります。でも、普通の青年です。この映画の本当の主人公は、別にいます。

「キック・アス」の本当の主人公は、ヒット・ガールです。素晴らしい戦闘能力を持つ11歳の美少女。クロエ・モレッツが、放送禁止用語を連発しながら、キュートに熱演しています。彼女を訓練した父親ビッグ・ダディとともに、喜々として悪人たちを殺し回ります。善悪は別にして、痛快です。

クロエ・モレッツは、ヒット・ガールを原則スタントなしでこなすために、約7カ月間トレーニングを続けました。アンジェリーナ・ジョリーのアクションを研究にしたそうです。あらゆる武器を駆使して戦うシーンの9割は、彼女自身が演じています。

ビッグ・ダディ役は、ニコラス・ケイジ。彼は、自分の子にスーパーマンの本名の名前をつけているほどのアメコミ好きです。そのコスチュームは、バットマンへのオマージュたっぷり。演技も締っていてなかなか好感が持てました。

「キック・アス」は、続編の制作が決まっています。マシュー・ヴォーン監督は、現在「X-MEN: First Class」の監督を務めていますが、2011年後半に続編に取りかかり、2012年の公開を目指しています。ただ、少女クロエ・モレッツが、どんどん女性になっていくのが心配です。

■「スプライス」
 SF映画です。「スプライス」は、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督が「キューブ」(1997年)の次回作として予定されていましたが、予算が集まらず、10年間プロジェクトは停滞していました。何となく、古さを感じるのは、そのためでしょうか。何を書いてもネタバレになりそうです。ある意味、題名の意味「結合」もネタバレです。初期のクローネンバーグ監督を思い出すテイストでした。

「スプライス」が古くさく感じるのは、人間と動物のキメラなのに、結果的に人間的な枠の中に納めようとする科学者たちの姿勢にあるような気がします。新生物の新しさは、造形だけではないはずでしょう。

新生物ドレンが驚異的なスピードで成長し、少女から魅力的な成人女性へと変身していきます。この辺は、「スピーシーズ」も連想しました。製作総指揮は「パンズ・ラビリンス」「ヘルボーイ」のギレルモ・デル・トロ監督。成長したドレンの造形に類似性を感じます。

科学者のエルザとクライブを演じるのは、サラ・ポーリーとエイドリアン・ブロディ。この2人の性格俳優の巧みな演技がなければ、荒唐無稽なストーリーが浮いてしまったと思います。さすがですね。

新生物ドレンを演じているのは、特殊メイクとCGで全く分からなくなっていますが、デルフィーヌ・シャネアックという美形の女優さんです。全面CGにしなかったところがいいですね。

■「最後の忠臣蔵」
杉田成道(すぎた・しげみち)監督の「最後の忠臣蔵」は、池宮彰一郎の同名小説を映画化したものです。これまで、忠臣蔵の四十七士は繰り返し描かれてきました。しかし、生き残った者、参加しなかった者の生き様を中心に描いた作品は少なかったと思います。その点が、いかにも現代的です。

赤穂浪士の中に、二人の生き残りがいました。討入り後、切腹の列に加わることを許されず、大石内蔵助から「真実を後世に伝え、赤穂浪士の遺族を援助せよ」との密命を受けた寺坂吉右衛門(てらさか・きちえもん)。もう一人は、討入り前夜に姿を消した瀬尾孫左衛門(せお・まござえもん)。孫左衛門は、内蔵助の隠し子を守るいう使命を内蔵助から受けます。

孫左衛門と内蔵助の忘れ形見・可音(かね)と周囲の人たちを中心に物語が進みます。可音役の桜庭ななみは、孫左衛門役のベテラン役所広司の存在感に負けない輝きを見せます。女性としても、俳優としても、映画の中で見事に成長を遂げていきます。

可音が名家に嫁ぐ日、最初は孫左衛門一人だったお供に、吉右衛門が加わります。続いて元赤穂の家臣たちが続々と現れ、やがて忠義の炎を掲げる男たちの大行列に変わっていきます。生き残った者、敗残者たちの行進へと変化します。これまでの「忠臣蔵」を打ち破る圧巻の場面です。

「最後の忠臣蔵」には、日本映画界の大ベテランたちが参加しています。竹林の美しさなど、何度もはっとする映像に出会います。私が古いようで新しい傑作と高く評価したのは、ベテランたちの映画への熱いこだわり感じたからです。緊張するシーンは無音でみせ、音楽の使い方も控えめで、好感が持てました。

■「ばかもの」
「ばかもの」は、金子修介監督作品ですが、驚くべき深みへと連れていかれます。人間のもろさと過酷な不幸が描かれます。アルコール依存症になる成宮寛貴(なりみや・ひろき)の熱演は見事でした。結婚式の場面では「おとうと」の鶴瓶(つるべ)を思い出しました。

女性たちの生き様が多彩です。「ばかもの」は、女優たちの競演でもあります。内田有紀の高ピーな存在感は、いつもながら健在。私は、聡明そうに見えながら人間的なもろさを抱えている山根ゆき役の中村ゆりの演技がが新鮮でした。
ただ、ずっと気になったのが月並みな音楽の使い方です。むしろ、無音の方が引き込まれると思えたシーンがかなりありました。「最後の忠臣蔵」と対照的です。

■「海炭市叙景」
「海炭市叙景」は、41歳で自殺した作家・佐藤泰志(さとう・やすし)の遺作を映画化した作品です。函館をモデルにした架空の地方都市・海炭市を舞台に、必死に生きる人々を描いています。オール函館ロケです。 監督は、帯広市出身の熊切和嘉(くまきり・ かずよし)。フィリピンの第12回シネマニラ国際映画祭で、グランプリと最優秀俳優賞をダブル受賞しています。

 原作の18の物語から5話を選んで映画化しています。そのため、重層性がやや弱く感じます。ドックの合理化と組合による闘いも紋切り型過ぎます。函館版「ショートカッツ」にまでは、なりませんでした。しかし、最後のトキ婆さんと猫のシーンはすばらしいです。最後に魅せてくれました。

行政や企業に依存しない自立した製作実行委員会を設立して映画化しました。そして、加瀬亮(かせ・りょう)、南果歩、小林薫(かわる)らベテラン俳優たちとともに、函館市民のキャストの方が強烈なインパクトを残します。立ち退きを拒み続けるトキ婆さん、とても存在感がありました。彼女が地元市民だと知って、とても驚きました。キャスティングのみごとさ。新しい映画の可能性を感じました。


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