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2010.11.03

■札幌国際短編映画祭2010(10月6-11日)報告

 ノミネート82作品を含め、98作品を観ることができました。今年も、短編映画の魅力に溺れました。
 ことしのSAPPOROショートフェストは、メイン会場を大通公園にホワイトロックシアターを特設して行いました。閉鎖空間の劇場とは環境が違います。最初は、戸惑った参加者も多かったと思います。野外コンサートのように楽しめるようになると魅力に気をつきました。シアターは、白いテントで覆った空間です。お昼に日が射せば暑くなり、夜は寒くなります。救急車のサイレンなども聞こえます。半野外だから仕方ありません。そういう開放的な空間で、映画の別な楽しみ方を試みたのが、今年のSAPPOROショートフェストでした。まさに冒険でした。シアターの中には、樹々があります。そして、白いテントは風に揺れ、周りの樹々の姿を映します。ときおり鳥たちの影が横切ります。そういう環境の中で、映像を楽しむ。それが、映画祭というイベントでの新しい提案だったと思います。私は、慣れると楽しくなりました。

 映画祭初の特別招待作品の「A bed 二十歳の恋」は、題名から想像するような甘酸っぱい内容ではありません。結構重いです。しっかりとした脚本、計算された映像が印象的。初の招待作品だけのことはあります。出演した真野恵里菜さんは、少し緊張した表情で「皆さんの心の中に残れば」と挨拶していました。

 ことしも楽しいアニメがたくさんありましたが、 16分の映画に6年間の月日を費やしたフランスの作品「ロゴラマ」が傑出していました。おびただしいロゴで埋め尽くされた作品です。最優秀アニメーション賞を受賞しました。 人形のブルース・リーが活躍する「燃えよ!プチドラゴン」も痛快でした。最優秀ミニショート賞でした。映像的には、奇抜なアイデアに満ちた粘着質なチェコのCGアニメ「マーダーチェーン」の圧倒的な不気味さが、他の作品を吹き飛ばしました。あまりにも衝撃的な映像。本当に不気味で、一生夢に出て来そうです。
 初の大人向けのミッドナイトプログラムの濃厚な世界を堪能しました。女性の方が多かったかもしれません。フィンランドの作品「KINBAKU」は勉強になりました。一方、キッズアニメーションでは、子供たちと一緒にアニメを楽しみました。普段観ているアニメとは違うので最初戸惑っていましたが、面白さが分かって来ると、拍手も大きくなりました。こういう多彩なアニメを見る機会は、とても大切ですね。
 ことし一番の収穫は岩井俊二監督の特別プログラムでした。作品もトークも、素晴らしく面白かったです。大満足です。あんなに気さくな人だとは思いませんでした。岩井監督の「夏至物語」「マリア」。どちらも20代のテレビ用の低予算作品ですが、切れのある映像が大画面に映えていました。若い時から、しっかりと独自の世界を築いていました。

★作品部門グランプリ
 作品部門のグランプリは、ディーン・ヤマダ監督の日本作品「自転車」でした。 自転車のパーツが次々に盗まれることから始まる物語。 NーBプログラムを見ていて、すごい掘り出し物だとは思いましたが、まさかグランプリを獲得するとは思いませんでした。しかし、不思議な面白さに満ちた、気持ちのよい作品です。最優秀撮影賞 、 最優秀男優賞、最優秀作曲賞も受賞しています。
 私がグランプリだと思ったのは、IーBプログラムのフランス作品「ある脚本家の災難」です。見終わって、力一杯拍手しました。映画の中で、映画の脚本をテーマにするという、とても難しいストーリーを、見事に描き、深い感動を与えます。エリック・レイノー監督の力量は、相当なものです。最優秀監督賞 、最優秀脚本賞の受賞は当然だと思います。
 落合賢 監督の「井の中の蛙」は、最初はもたついていたものの、後半にかけて見事なテンポを見せます。そして、母の遺言を守るため日本縦断の旅をしている主人公の行動の意味が解き明かされていきます。最優秀編集賞を受賞しました。また、「ゲルニカ 」「Mr.バブルガム」と、ともに死をテーマにしながら、対照的な、まったく異なるテイストの作品に仕上げた片岡翔監督の多彩な才能に期待します。

★フイルムメーカー部門グランプリ
 7人の監督がノミネートされました。3つのプログラムで紹介。
 F-Aプログラム。フランスのフランソワ・ボゲル監督の独創性に驚きました。上映作品「天井仕事」は観た覚えがありました。onedotzero2003札幌で上映されていました。今見ても、ハイセンスで新しい。「Stretching」もすごい映像体験です。ロイストン・タン監督、メンゼン監督も多くの表現の引き出しを持っています。
 F-Bプログラム。カナダのカジック・ラドワンスキ監督はドキュメントの一場面のよう。レヴァンドフスキ監督は、独自の色調が強烈でした。

 F-Cプログラム。ベルギーのトム・ギーンズ監督は全く救いのない展開。不条理ですが、デビッド・リンチとは違う感性です。石川慶監督は、ポーランド国立映画大学で学んだだけに、日本映画とはちょっと違う湿度です。「ディア・ワールド」は、タルコフスキー思い出しました。
 フイルムメーカー部門グランプリのカジック・ラドワンスキ監督は、確かに力のある映像でした。ドキュメンタリーのように登場人物と向き合い、観客が自分で考えることを促します。しかし、あの映像では、思考は紋切り型に流されるのではないかと思いました。個人的にはフランソワ・ボゲル監督を推薦します。映像表現の可能性の空間を押し拡げ、確実に豊かにしてくれています。「ストレッチング」は、最優秀コンテンポラリー 、エクスぺリメンタルショート賞を受賞しましたが、他の作品も、とても刺激的でした。

 会場で配布していたフリーペーパー「マグネット」のインタビューで岩井監督が「札幌が一年中ショートフィルムが上映されてる街になればいいね」と話していました。私もそう思います。

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■札幌国際短編映画祭2010(10月6-11日)報告

 ノミネート82作品を含め、98作品を観ることができました。今年も、短編映画の魅力に溺れました。
 ことしのSAPPOROショートフェストは、メイン会場を大通公園にホワイトロックシアターを特設して行いました。閉鎖空間の劇場とは環境が違います。最初は、戸惑った参加者も多かったと思います。野外コンサートのように楽しめるようになると魅力に気をつきました。シアターは、白いテントで覆った空間です。お昼に日が射せば暑くなり、夜は寒くなります。救急車のサイレンなども聞こえます。半野外だから仕方ありません。そういう開放的な空間で、映画の別な楽しみ方を試みたのが、今年のSAPPOROショートフェストでした。まさに冒険でした。シアターの中には、樹々があります。そして、白いテントは風に揺れ、周りの樹々の姿を映します。ときおり鳥たちの影が横切ります。そういう環境の中で、映像を楽しむ。それが、映画祭というイベントでの新しい提案だったと思います。私は、慣れると楽しくなりました。

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■2010年10月の映画評

★「ミックマック」
 ジャン=ピエール・ジュネ監督の新作。「アメリ」に似たところもありますが、ずっと物騒な話です。いたずら好きのジュネ・ワールド健在です。主人公バジルが廃品回収の仲間たちと協力して武器商人に復讐する物語。スパイ大作戦のような頭脳プレーです。随所にジュネらしい奇抜なアイデアが散りばめられています。
 奇抜な映像で独自の世界に強引に連れ込むジュネ監督の力技は「ミックマック」でも健在。バジルが、もう少し魅力的だったら、さらに作品が光ったでしょうが、おとぼけ者にしたところが、シャイなジュネ監督らしさです。ファンタジックでコミカルなタッチですが、ジュネ監督がフランスの武器製造企業を本気で告発しているのが分かります。映画の構図は古典的ですが、Youtubeが効果的に使われています。

★「十三人の刺客」 
 1963年に公開された工藤栄一監督の時代劇『十三人の刺客』を、三池崇史監督がリメイクしました。これ程までに堂々とした時代劇は久しぶりです。骨太な大作の風格。三池崇史監督お得意の悪ふざけも少なく、最後まで緊張が続きます。ずっと、後ひく映画です。役所広司のうまさは、予想通りですが、松方弘樹の軽妙なかっこよさが、印象的でした。武士たちの壮絶な死闘よりも、両手両足を切られ、舌をぬかれた茂手木桜子演じる娘さんが、口にくわえた筆を使って「みなごろし」と書くシーンが強い衝撃を残します。映画としては、マイナスだったと思うほど強烈です。見終わって、何日間も、 ずっと、後ひく映画です。たぶん、時間が経つにつれて高く評価されていく作品でしょう。
★「大奥」
 金子文紀(かねこ ふみのり)監督 。男子だけがかかる疫病で男子が突然減少したため、男女の立場が入れ替わった、日本の男女逆転世界を描いているコミックの実写映画化です。期待以上でした。セットは、やや安っぽく、サントラもうるさ過ぎでしたが、二宮和也のキレのある演技が、作品を輝かせていました。柴咲コウの眼力も圧倒的です。
 「大奥」で一番驚いたのは阿部サダヲ。シリアスなままの演技を通しました。阿部サダヲは、これまで、登場しただけで笑いを誘っていただけに、びっくり。サプライズでした。
 コミック『大奥』について、原作者よしながふみさんは「沼正三の『家畜人ヤプー』ほど立場逆転の思考実験を突き詰めたいわけではない」と言っていますが、それでもかなりのインパクトがあります。男女逆転によって、見えなかったことが見えてきます。
 よしながふみは、画力もありますが、なんと言ってもストーリーテラーとしての才能が傑出しています。コミック『大奥』は、15代将軍慶喜(よしのぶ)まで描く予定。14巻くらいになりそうです。映画も、ぜひシリーズ化してほしいです。 金子監督も続編に意欲をみせていますし。
 
★「七瀬ふたたび」
筒井康隆作家生活50周年記念映画です。 筒井康隆の原作に忠実なようでいて、ちぐはぐで全体に統一感がなく、作品としては残念でした。小中和哉(こなか かずや)監督らしくないです。ただ、どこか1970年代的な雰囲気があって、その点は懐かしかったです。七瀬役の芦名星(あしな・せい)は、やや力不足。友人役の前田愛が好演していました。

 七瀬たち超能力者たちが繰り返し問いかける言葉があります。「私たちは、どうして生まれてきたのか」。それは、超能力者たちが抱く、無念さの裏返しですが、それは人類すべてが心に抱いている疑問だとも言えます。
 本編の前に上映された「七瀬ふたたび プロローグ」は、注目すべき作品です。初監督した中川翔子は、10分間にしっかりおたく的感性と作家性を込めていて、驚きます。エロチシズム溢れる濃厚な世界です。七瀬の母親役として多岐川裕美が好演しています。多岐川裕美は、かつてテレビドラマで七瀬役を演じていました。



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