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2004.03.11

■銀河・映画対談2000.08

■銀河・映画対談2000.08


 「『ロゼッタ』(リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督)。なんという力技だろう。逆境をものともせず仕事を得るために闘うロゼッタから、カメラは片時も離れない。執拗に追い続ける。ロゼッタの苦しみ、ロゼッタの怒りに共鳴しながらも、ぎりぎりの距離を保ち続ける」「無駄な説明を一切省き、ロゼッタの身ぶりにすべてを語らせたリュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督の潔さ。映画への確信が眩しい」「クローネンバークが委員長を務めた1999年カンヌ国際映画祭でのパルムドール大賞獲得は、本当に意義深い」

 「暴力的なまでのエネルギーを内に秘めながら、アルコール中毒の母親を抱えながら、時折襲う腹痛に耐えて、仕事を求めて行動するロゼッタ。母親に裏切られ、職を奪われても彼女は弱音を吐かない。観る者の同情を拒絶する強さに満ちている」「そんなロゼッタが追い詰められ、優しく接してくれているリケの職を奪うために密告する」「ここで緊張の糸が切れたように、ロゼッタはガス自殺を試みる。しかし、ガスボンベが空になり、新しいボンベを買いに行く。重いボンベを運ぶロゼッタ。底抜けに辛いシーンだ」「つまずいて転び、リケに助け起こされることで、救済が訪れる」「ロゼッタ役のエミリー・デュケンヌの熱演が作品を支えていた」

 「子供たちの愛くるしい表情が忘れがたい『運動靴と赤い金魚』に続くマジッド・マジディ監督の新作『太陽は、ぼくの瞳』。1999年のモントリオール映画祭グランプリを受賞した」「テヘランにある盲学校に通う8歳の少年モハマドが主人公。妻を亡くした父は、祖母の反対を押し切り、再婚のためにモハマドを大工の修業に出そうとしていた。夏休みで故郷の村に戻ったモハマドは、家族の優しさに触れ、大自然の美しさに包まれる。しかし、幸せは長く続かなかった」「マジッド・マジディ監督は、過酷な現実を、神話的な結末で癒す」

 「盲目のモハマドの優しさ、感受性の豊かさにうたれる。風に光を感じ、石や植物の凹凸を点字に託して指で解読していく姿に、呆然とした。知らない世界を垣間見た感動。変化に富む自然が少年の内面と響きあう奇跡が、映像に焼き付いている」「『宝石』と絶賛されたのもうなずける。迷い苦しむ父親を演じたホセイン・マージゥーブのせつなさも胸にしみた。ラストの濁流でのぎりぎりの演技は、そのカメラワークの巧みさとともに高く評価されるだろう」

 「『サウスパーク 無修正映画版』(トレイ・パーカー監督)の過激なギャグに、最初は空いた口がふさがらなかった」「下ネタの連続、天国と地獄を往復しサダム・フセインまで登場するとんでもない展開のアニメ。しかし基本にある主張は『戦争反対』『検閲反対』と、いたって良識的だ」「あまりの下品さで社会問題化したTVのアニメ作品を、映画を武器に擁護するという不敵な作戦は成功した」「切り絵みたいに簡略化した作風だが、どういうわけか炎渦巻く地獄のCGだけが異様にリアル。ほとんどの人が落ちる地獄。『スポーン』(マーク・デッペ監督)以上に迫力がある。ぺらぺらでちょっとエロチックな天国との対比が素晴らしい」

 「ロッキー山脈に囲まれた、常冬の小さな町コロラド州サウスパークが舞台。カナダのコメディアン、テレンス&フィリップ主演のオナラ映画『燃えよコウモン』を見た小学生たちが、超下品なののしり言葉を連発、ギャグをマネた子供が火傷し病院が手術に失敗して死んだため、PTAが怒り狂った。カナダが悪いと主張し、ついには宣戦布告、子供たちの脳には汚い言葉に反応して電気ショックを起こすVチップを埋め込もうとする。コメディアンの処刑に乗じて世界を支配しようとするサタン。そのサタンを利用しようとするサダム・フセイン。子供たちがサタンを救い、世界を平和に戻す。毒のある笑いに染めあげられた荒唐無稽の極みで、うまくまとめた手腕は認めよう「本当は、もっと突き抜けてほしかったけれど」

 「『アシッドハウス』(ポール・マクギガン監督)は、『トレインスポッティング』(ダニー・ボイル監督)の原作者アーヴィン・ウェルシュが書いたオムニバス短編三部作。スコットランドのどうしようもない日常生活がコミカルにシュールに変ぼうしていく」「第一章『ザ・グラントン・スターの利益』の毒にぶっ飛んだ。不幸の連続にうちひしがれているボブが、いじわるで無責任な神によってハエに変えられながらも、ハエの特性を生かして個人的な復讐をとげる。その悪意にしびれた」「神をも恐れぬブラックなユーモアこそウェルシュの真骨頂だ。両親の屈折したセックス・プレーに驚き、母親にたたき殺される結末が底なしに悲しい」

 「第二章『カモ』。人の良いジョニーは誰の子か分らない子を身籠ったカトリオーナと結婚、妻に代わって子育てに熱を入れている。カトリオーナは上の階に引っ越してきた男に夢中となり、ことあるごとにジョニーを罵倒する。やがて妊娠し男に捨てられたカトリオーナが、よりを戻そうと帰ってくる。ジョニーは、静かに受け入れる。切実だが傷口は浅い」「第三章『アシッドハウス』は麻薬でトリップしていたココ・ブライスが雷に打たれ、出産した赤ちゃんと身体が入れ代わってしまうコメディ。つくりものの赤ん坊が、なんとも不気味。あのまま進んだら『チャイルド・プレイ』になったかも。面白いが、毒にしては甘過ぎる」

 「『マトリックス』のジョエル・シルバーと『コンタクト』のロバート・ゼメキスが共同設立したホラー映画専門プロダクション『ダークキャッスル・エンタテインメント』の第一弾作品『TATARI』(ウィリアム・マローン監督)。かつておぞましい生体実験を行っていた廃虚のバナカット精神病院で、大富豪が妻の誕生パーティを開き、肝試しの仕掛けを行う。しかし呪われた屋敷自体が目覚め人々は血祭りにあげられていく」「最初のタイトルからして、恐がらせようという意欲がありあり。カイル・クーパー的な手法を取り入れながら、恐怖の舞台へと誘う」

 「妻エブリン役のファムケ・ヤンセンをはじめ、派手めの女優たちをそろえ、個性的な男優たちが恐怖をもり立てる。ホラーの王道だ。観客を弄ぶように、ストーリーも捻ってある。そして何といっても挿入される幻想シーンのインパクトがすごい。夢に出てきそう」「『ジェイコブズ・ラダー』(エイドリアン・ライン監督)からのパクリも見られるけれど、許してあげよう」「似た設定の作品に『ホーンティング』(ヤン・デ・ボン監督)があるが、『ホーンティング』の空騒ぎに比べ10倍怖い」

 「ルネ・クレマン監督の傑作『太陽がいっぱい』を、『イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ監督がリメイクした『リプリー』。画家志望のディッキーをジャズ愛好家に変えて張りのある自由闊達な展開にしたほか、オペラや合唱を生かし、堂々たる作品にまとめた」「音楽が、あまりにも場面に合い過ぎていて窮屈な点はやぼったいが」「貧富の問題よりも同性愛の色合いを強くしたのはお国柄と時代の差だろう。リプリーがディッキーを殺して成り変わるお馴染みのストーリーを、憑依のようにみせれば、さらに重層的な味わいが出たと思う。傑作のリメイクは、どうしても点が辛くなる」

 「演技派のマット・デイモンだが、リプリーはうなるほどの出来ではない。むしろ、奔放なディッキー役のジュード・ロウが、美しく輝いていた。『恋におちたシェークスピア』では清楚な魅力を放っていたグウィネス・パルトロウに、信じられないほど華がない。『エリザベス』のケイト・ブランシェットさえ、存在感が乏しい」「豪華スターの競演としては、盛り上がりに欠けていた」

 「札幌の屋台劇場まるバ会館で、山崎幹夫氏の長編8ミリ三部作『極星』『猫夜』『虚港』が上映された。いずれも一筋縄では語れない。体験への好奇心とともに、そこに安住しない強靱な自己批判力が傑出している。個人映画の狭い枠を超えようともがきつづける、リアルと嘘を往復する自虐的な楽しみが、さまざまなバリエーションで展開されていた」

 「『極星』(1987年、75分)は、問題意識に沿って無理に物語を紡ぎ出すことを断念した後の、解き放たれた映像の力に支えられている。偶然に身をゆだねることで、記憶に深く浸ることで映画的な輝きが増してくる不思議。マイクを燃やすシーンに、山崎幹夫の暴力的な破壊衝動が集約されている」「ぎこちなさは感じるものの、自己に閉じこもらない個人映画の新たな可能性が開かれていく」

 「『猫夜』(1992年、80分)は、『極星』との連続性を意識して始まりながら、すぐに方向を転換し、カメラさえ友人たちにゆだねてしまう。それは、勇気に満ちた爽快な選択だ」「作家的な意図を持たない映像の心地よさ。物語的な収まりを断念した静けさに満ちている。突き放しているようで温かい。そうすることで、観る者の中にひそやかな物語を誕生させるという試みは成功している」

 「『虚港』(1996年、80分)は、捨て身の援助交際の盗撮フイルムまで駆使しながら、物語の創造と破壊を繰り返し、繰り返し見せつける。その虚構の重層の中から、私たちが置かれているリアルな気分が漂い出す」「ハリウッド的世界を象徴するミッキーとミニーの楽園からの脱出をモチーフに、インド映画の天真爛漫な世界へと唐突に突き抜けていく展開。シリアスをまとったギャグのセンスに痺れる」「そして、『グータリプトラ』(1999年)の自在な美しさへとつながっていく」

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